第3章『犠牲の輪』1

「課題11の開始は8時間後だ。」

「その間、各自が個室で休息を取れ。」

無機質な声が低く響くと同時に、部屋の壁が静かにスライドし、新たな空間が現れた。個室には簡素なベッドと食事が用意され、どこか冷たい静けさが漂っている。


アキラ(1): リーダーの孤独

アキラは個室に入るなり椅子に腰を下し、顔を覆うように手を広げた。

「…俺にできるのか…?」

仲間たちへの責任感が重くのしかかり、目の前に置かれた食事に手をつける気力も湧かない。


窓から差し込む淡い光を見つめながら、ふと呟いた。

「俺を信じてくれる仲間は、まだいるのか…。」


サクラ(2): 無邪気な狂気

サクラは個室の中央で足を止めると、壁を撫でながら独り言を繰り返す。

「これが真実。そう、全部分かる…。」

その目はどこか虚ろで、まるで別の世界を見ているかのようだった。


突然、彼女は笑顔を浮かべ、ベッドの上でくるくると回り始める。

「ねえ、明日みんなに教えてあげるね。私だけが知ってる“秘密”を。」


ショウ(7): 崩れゆく限界

ショウはベッドにも横にならず、壁に寄りかかって目を閉じた。

「もう十分だ…。」

その声には完全に諦めたような響きがあった。


廊下から微かに響く物音に反応し、一瞬だけ目を開けるが、すぐに視線を虚空に戻した。

「何も変わらないさ…。」


レンジ(9): 冷静な監視者

レンジは部屋に備え付けられたモニターを操作し、施設内の映像をじっと見つめていた。

「動いている…誰かが何かをしている。」


モニターを閉じた後も、その目には緊張が滲んでいる。ベッドに横になりながらも、決して眠りにつくことはなかった。


『モニタリングルーム』

スクリーンにはそれぞれの部屋で過ごす参加者たちの様子が映し出されている。権力者たちは楽しげに笑いながら談笑を続ける。


「ショウはほとんど壊れかけているな。」

「サクラの狂気は見ものだ。次の課題で彼女が何をしでかすか、楽しみだな。」


一方で、関係者Aは主催者に詰め寄る。

「もう十分だ。彼女を止めさせろ! サクラは限界を超えている!」


主催者は冷ややかな笑みを浮かべたまま、軽く肩をすくめる。

「ゲームのルールは絶対だ。感傷は不要だよ。」


関係者Aはスクリーンに映るアキラの姿を見つめ、拳を握りしめた。

「アキラ…どうか持ちこたえてくれ…。」


深夜の異常な動き


サクラの奇妙な行動

サクラ(2)は何に導かれるでもなく、個室をそっと抜け出した。

「ここだ…ここにあるのね。」


廊下を歩きながら壁を指で撫で、まるで道案内されているように進んでいく。たどり着いた先には、密かに開かれた小部屋と謎の箱が置かれていた。


「これは…何?」

サクラは興味深そうに箱を開け、その中身を見て目を輝かせる。

「これが私の力…これでみんなを救える…。」


権力者の接触

深夜、ショウ(7)の個室の扉が静かに開いた。権力者の一人が部屋に入り、彼に近づく。


「お前にこれを渡しておく。」

眠りかけていたショウは目を覚まし、男の姿を睨む。

「何のつもりだ?」


男は冷静に微笑むだけだった。

「お前が生き延びるための選択肢だ。」


机の上に置かれた小さなカプセルを見つめるショウ。

「これを飲めば、どうなる?」


「それはお前次第だ。ただし、選ばれる者と選ばれない者の運命が変わる。」


サクラとレンジの鉢合わせ

サクラが廊下を歩く音に気づき、レンジ(9)は個室を抜け出してその後を追った。

「サクラ、こんな時間に何をしている?」


振り返ったサクラは、満面の笑みを浮かべる。

「ねえ、レンジさん。私、すごい秘密を見つけちゃった。」


「秘密だと?」

レンジは彼女の挙動に明らかな異常を感じたが、その場で問い詰めることはしなかった。


「これは私だけのものだから、誰にも言わないでね。」

サクラは唇に指を当て、くすくすと笑いながら再び自室へ戻っていった。


深夜の騒動は表面上収束したように見えたが、その余韻は参加者たちの心にくすぶり続けていた。翌朝、無機質な声が個室中に響き、全員を中央ホールへと集めた。


朝の集合と不協和音

ホールに集まった参加者たちは、誰もが疲労の色を濃く浮かべていた。記憶喪失の影響に苦しむ者、不信感に苛まれる者、それぞれの様子が一目で分かる。


レンジ(9)の冷たい視線がサクラ(2)に向けられる。

「昨夜、サクラが何かを見つけたはずだ。」


その一言に、場の空気が凍りついた。他の参加者たちの視線も自然とサクラに集まる。


「何もしてないよ?」

サクラは無邪気な笑みを浮かべながら、何事もないように答えた。


レンジの声は冷ややかだった。

「そういう態度が一番怪しいんだ。」


その場の緊張をアキラ(1)が遮る。

「待て、確証もないのに追及するのは無意味だ。まずは冷静になろう。」


しかしサクラは挑発するような目つきで笑いながら言い放つ。

「レンジさん、もしかして嫉妬してるの? 私が何かを見つけたって思うなら、あなたも探せばいいじゃない。」


彼女の挑発的な態度に、レンジは眉間に皺を寄せたが、ぐっと拳を握り締めて黙り込んだ。


ショウの異変

ショウ(7)は遠巻きにそのやり取りを見つめていた。昨夜、権力者から手渡されたカプセルが机の上に置かれたままだ。


「ショウ、お前…大丈夫か?」

アキラが近づいて声をかける。


ショウは力なく笑った。

「もう何が正しいのか分からないだけだ。」


「そんなこと言うな。俺たちはまだここで生き残る方法を探せる。」

アキラの声には強い意志が込められていたが、ショウはそれに答えず、視線を逸らした。


アヤコの震えとアイリの観察

一方、アヤコ(11)は目に見えて怯えていた。震える手を握り締めながら呟く。

「こんな状況で犠牲なんて…誰が決められるの?」


それに気づいたユウスケ(4)が彼女の肩にそっと手を置く。

「落ち着け。今は判断を急ぐべきじゃない。」


一方、アイリ(8)は周囲を観察していた。彼女の目には冷静さが宿っている。

「これ以上、感情的になったら負けよ。」

彼女はそう呟き、全体の様子をじっと見つめ続けた。


◇◇◇◇◇


無機質な声が突然部屋中に響き渡る。

「課題11『犠牲の輪』を開始する。」


ホログラムスクリーンには、課題の詳細が映し出されていた。


課題11のルール

犠牲の選択


チーム全体で「1人の犠牲者」を決定する。

選ばれた者は即座に退場するが、残った全員に記憶が2つ返還される。

選択に失敗した場合


全員が記憶を-3喪失し、さらにランダムで1名が退場となる。

制限時間: 60分


参加者たちの動揺

ユウスケの怒り

「またこんな課題か!」

ユウスケは拳を握りしめて叫んだ。「誰かを犠牲にしてまで進む価値があるのか!?」


レンジの冷静な指摘

「進まなければ、全員が終わる。」

冷たい声で返すレンジ。

「ここは感情論では解決しない。合理的に決めるしかない。」


ショウの覚悟

「俺を選べ。」

突然、ショウが低い声で呟いた。その場に静寂が訪れる。


「ショウ…!」

アキラが声を上げるが、ショウは首を振る。

「俺にはもう何もない。記憶も、理由も、目標もな。」


彼は薄く笑った。

「誰かがやらなければならないなら、それが俺でいい。」


サクラの不気味な笑顔

「ショウさんがそう言うなら、それも一つの方法かもね。」

サクラが無邪気な笑顔を浮かべながら言った。


「おい、冗談で言っているのか?」

ユウスケが彼女を睨むが、サクラは楽しげに首を振る。

「冗談じゃないよ。だって、私たちのために犠牲になるって言ってるんだから、感謝しなきゃ。」


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