第46話 鬼ヶ島②
猿たちは狂暴な動物たちと会わないように、岩影に身を潜めながら慎重に進みました。 足音を殺し、風の音に紛れながら、一歩一歩と島の頂へ向かっていきました。 途中、獰猛な獣の咆哮が聞こえるたびに息を潜めたが、彼らの決意は揺るぎませんでした。
ついに、猿たちは島のてっぺんにたどり着きました。そして、そこには——動物の神がいました。
その姿を目にした瞬間、猿たちは言葉を失いました。 動物の神は、鬼に似てはいましたが、鬼よりもさらに恐ろしい姿をしていました。
筋骨隆々の身体は炎のように赤く、その顔には深く刻まれた彫りがありました。 頭頂からは2本の太い角が生え、眼は血走り、まるで燃え盛る火のような光を宿しているようでした。 口元からは2本の長く鋭い牙が突き出し、獣のような唸り声が喉の奥から漏れていました。
動物の神は、金の台座にどっしりと腰を下ろしていました。 その周囲には金銀財宝が溢れ、山のように積まれていました。 その姿は圧倒的な威厳に満ち、ただ座っているだけでも2メートルはある巨躯でした。
そして——動物の神の玉座の周りには、5匹の鬼が立っていました。 彼らはこれまで猿たちが見てきた緑の鬼に似てはいましたが、その肌は動物の神と同じく赤く染まっていました。 その巨体は、立っている状態で2メートルほどあり、全身の筋肉が岩のように盛り上がっていました。 彼らはまるで動物の神を守るかのように、猿たちの行く手を遮るように佇んでいました。
猿たちは、目の前の動物の神の威圧感に恐れおののき、岩影に身を潜めたまま動けなくなってしまいました。 その存在はあまりにも圧倒的で、ただそこに座しているだけで猿たちの心を支配するほどの威厳がありました。
「どうする……?」
猿たちは震えながら互いに目を合わせましたが、誰一人として声を発することができませんでした。 しかし——猿たちに考える猶予は与えられませんでした。
突如として、動物の神が低く、しかし島全体に響き渡るかのような声で言いました。
「そこにいるのは誰だ。」
その一言が発せられた瞬間、猿たちはまるで全身を鎖で縛られたかのように身動きが取れなくなりました。 その声には威圧感が満ちており、心の奥底まで響き渡るようでした。 誰もが恐怖に囚われ、息をするのも忘れるほどでした。
しかし——その中でただ一人、猿の王だけが違いました。
猿の王はゆっくりと立ち上がり、静かに岩影から姿を現しました。 そして、動物の神の前に進み出ると、片膝を地につけ、深々と頭を下げました。
「私はこの島の外から来た猿の部族の長であります。」
その声には恐怖はなく、 まっすぐに響き、王としての誇りと決意を感じさせるものでした。 そして、猿の王はさらに続けました。
「私たちの島では、植物の神が暴れまわっており、私たちの部族は滅びかけています。 私はあなた様に植物の神を倒し、助けていただきたいと思い、ここに参上した次第です。」
猿たちは息を飲みました。 この島の支配者とも思われる動物の神に対し、王は怯むことなく、猿たちの作戦通り、桃太郎たちを裏切り、堂々と助けを求めたのでした。
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