その計画を雄二から聞いたのは秋が深まる頃だった。


 奥様は「八津槍岳中腹にある新田本家所有のロッジで旦那様と替え玉の奥様わたしに強い睡眠薬を飲ませ昏倒させ、納屋に生き埋めにして雪山での遭難に見せかけ、後で自分が助けられて新田本家を我が物にしようとする」恐ろしい計画を雄二に命じたのだった。


「いくらなんでも愛するお前をそんな目には合わせられないからな」


 旦那様との“はぐくみ”をずっと避けているせいで……あまり暴力的にはならないで居てくれる雄二が私の胸を弄びながら発したこの言葉に私の背筋は凍った。


 アイツの筋書きはこうだ。


「昏倒させるのは旦那様と奥様。ワタシ替え玉をオレが助け出し、オレとお前で新田本家をよろしくやっていこうぜ!」


 旦那様には勿論こんな事を言えやしない!!


 信頼している奥様と執事が結託し、自分を殺そうとしてるなんて!!

 あの優しい旦那様はどんなにか心を痛める事だろう!!


 だから私は雄二の口車に乗ったフリをし、ひと月掛けてロッジの納屋に人間二人を埋める為の大きな大きな穴を掘った。


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