第3話 流れる雨と涙
少し走ったら再び歩き始める。学校のから少し離れた中学校、シャッターで閉まっているお店、知らない住宅街、大きな建物、信号機、車、コンビニ、流れが速い下水道、広い道路……僕はどれだけ見てきて歩いたのだろうか。歩けば歩くほど知らない場所へ向かっている。この道は右に曲がればいいか、いや左に曲がればいいか……そのうち方角までもわからなくなってしまった。今向いている方向の後ろに振り返って戻ろうとしても、どこを見渡しても全く知らない場所だった。
「ここはどこ?」
誰も答えてくれる人はいない。
「この道であっているの?」
聞こえるのは雨音だけだった。
「帰りたいよ……母ちゃん……父ちゃん……。」
出発する前の自信はどこへいったのだろうか。この場にいるだけでも恐怖しか出てこなくなってしまった。進もうとしても止まっていてもどうしようもできない状態だった。完全に迷子になってしまったのだ。助けを呼ぼうとしても誰もいない、近くの民家に行ってみようとしてもそんな勇気がない。時間が経つにつれて走っている車の数も減ってきて、建物や街灯の灯りも消えていく。暗闇の世界に閉じ込められてしまった感覚だった。しかも雨が段々強くなってきた。雨粒が落ちる音も大きくなってきて視界も悪くなった。もし雨雲がなかったら星空が見えていたのに、小さな輝きさえも見えないという最悪な状況だった。そして僕の心が限界まできてしまったのだ。
「帰りたい……帰りたいよぉ!母ちゃん!父ちゃん!どこにいるの?!」
誰もいない雨が降っている夜道で僕は泣き叫びだした。
「怖いよぉ!寒いよう!もう嫌だよう!誰かあ!」
顔を空に向けて大声で泣き叫んだ。顔に雨粒がかかる。どれが僕の涙か降ってきた雨粒かわからなくなっていた。
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