新しい朝が来た(意味深)
「うっ、ううーん……。やめて、鈴ちゃん! 御堂にならないでお願いだから……辞めてー! ハッ!」
アレ、知らない天井だ……。ここはいったい、どこなんだろう?
どうやら私はベッドに寝かされていたらしい。周囲を見渡しても見覚えのあるものは一つもない。
それにしても、ひどい夢を見ていた気がする。鈴ちゃんとデートしてたら、この前ナンパしてきた男に追われて劔先輩に助けられた。
中でも一番あり得ないのは私の目の前で鈴ちゃんが、兄であるはずの御堂涼太に姿を変えたところだ。
アレだけは無い……。なにが有れば突然、目の前で女の子が男の子に変わるというのだろうか。
アニメや漫画じゃないんだから、そんな展開あり得ない。こんな夢を見てしまうなんて、知らず知らずのうちに疲労が溜まっていたのかな?
ああ……。夢でもよかったよかーー
ーーコンコン。
夢であったことに安心していた私は、不意に聞こえたノック音に注意を向ける。
そういえば、まだココがどこなのかという問題が解決してなかった……。とりあえず、ノックをしてるわけだし、入室を促しましょう。
「どうぞ、入っても構いませんよ」
ここに私を寝かせたのが誰かは分からないけど、拘束されたり乱暴されたりした形跡はない。私に対する害意はないと判断できる。
さて、どのような人が私をここに寝かせていたの……か……な…………!
「おっ、お邪魔しまーす……」
扉を開けて、ノックをした人物が現れる。しかし、私にはその人物に見覚えがあった。
その人物とは、私のクラスメートであり、友達の御堂鈴ちゃんの兄である男、御堂涼太であった。
なっ、なんでコイツが……!
ついさっきまで夢に出てきていた人物の登場に、動揺を隠せない。
待って、ということはココは御堂涼太の家?
私は今、クラスメートの御堂の家にいる?
「おはよう、神崎……。えーっと、具合が悪かったり、頭が痛かったりしないか?」
「えっ、ええ……」
私の返答に御堂はホッと息をついて、安心する。
「それは良かった……。昨日、気絶した時に頭を打ってたから少し心配だったんだ」
「昨日……気絶したとき……!」
御堂の発言には聞き捨てならない部分があった。
「ちょっと待って! 昨日、気絶したときってことはアレは私の夢じゃなかったの!」
「かっ、神崎……なにを言ってーー」
「鈴ちゃんと一緒にデートしたことも男たちに追いかけられたのも、そのあと鈴ちゃんが御堂に……!」
もはや、自分で自分を抑えきれない。体が勝手に御堂を問い詰めようと首根っこを掴ませる。
「えーっと……はい。今言ったことは間違いなく昨日あった出来事です……」
「……!」
アレは夢なんかじゃなかった……? 全部、実際にあったこと?
ということは、鈴ちゃんが御堂涼太になったのも本当にあったこと?
ああ……。もうダメだ。頭の理解が追いつかない。
「アハハハハ……。アハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「ちょっ……! 神崎が壊れたーーーッ! おいっ、神崎ッ! しっかりしろーーーッ!!!」
ああ……。御堂がなんか言ってる……。でも……別にどうでもいっか。
ああ、今日もいい天気だなー。こんな日は鈴ちゃんと買い物に行って、2人で思い出にツーショットでも撮りたいなぁ……。
「おおーい! 目が遠くなってるぞーーッ! 起きろーー、神崎乃亜ッ!!!」
ハッキリしない意識の中で、視界の端で必死に肩を揺らす御堂の姿が妙に印象的だった。
ーーーーーーーーーー
神崎が気絶したあと、迎えの車が程なくしてやってきた。俺は何度も揺り動かして神崎を起こそうとしたのだが、神崎は一向に目を覚ます素振りがなかった。
神崎に聞かないことには神崎の住所が分からないという事で、どこに送っていいか分からず俺は途方に暮れていた。
しかし、母の「それなら、ウチに泊めてあげればいいじゃない。部屋は余ってるんだし」という一言で、神崎を御堂家に一時的に泊めることになったのだが……。
どうしよう、母さん……。
神崎が壊れちゃいました……!
違うんだ。俺は母さんに「アンタ、神崎さんを起こしてあげなさい。ここから学校まで距離あるんだから、早く起こさないと遅刻しちゃうわよ」という言葉に従って、神崎を起こしにいっただけなんだ。
そこから、神崎が昨日あったことをものすごい勢いで尋ねてきたから「本当にあったことだよ」と肯定しただけなんだ。
それだけなのに……まさか、俺の言葉を聞くなり、神崎が壊れてしまうなんて予測して無かったんです!
壊れた神崎は俺が何を言っても、「ウンウン、ソウネ。ワタシモソウオモウワー」という言葉しか発しなくなってしまった。
神崎さんが全肯定マシーンと化してしまった……!
このままでは、知らない間に怪しい契約を交わされたり、怪しいセールスに多額の商品を買わされてもおかしくない。
今の神崎を外に出しても、なにも良い事態は起こらないだろう。
「とりあえず、神崎さんはアタシが見とくから、アンタは早く学校へ行きな!」
「あっ、ああ……。わかったよ母さん」
とにかく、神崎のことはお言葉に甘えて母さんに任せるとしよう。母さんなら、俺よりはよっぽど上手くやってくれることだろう。
少なくとも俺みたいに神崎を壊したりすることは無いだろう。最初から、神崎への応対は母さんに任せるべきだったのかもしれない。
すっかり様変わりしてしまった神崎に後ろ髪を引かれながら、俺は玄関の扉を開けるのだった。
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