【できるだけ毎日更新百合ショートストーリー III 】
藍埜佑(あいのたすく)
第1話「究極のキスバトル ~唇で語る愛の勝者~」(対決百合)約1,500字
「悪いけど、ミナ。キスの技術に関しては私の方が完全に上よ。」
ソファの上で片膝を立てながら、長い黒髪をかき上げるようにして言ったのはリサだった。その瞳には余裕たっぷりの笑みが浮かんでいる。
「はぁ?リサ、それ本気で言ってるの?」
目を細めて抗議の視線を返したのは、ショートカットの快活な雰囲気を持つミナだ。彼女の唇には、挑発的な笑みが浮かんでいた。
「リサ、覚えておきなさい。この唇で私は何人もの心を溶かしてきたのよ。」
「ふふ、残念だったわね、ミナ。この勝負、負けるのはあなたよ。」
二人は恋人同士――ただし、最近はやたらと「どちらがキスが上手いか」という妙な議論で盛り上がっている。元はといえば、ミナが友人たちとの飲み会でうっかり言った一言が原因だった。
「いや、リサのキスって、まあ普通だよね。」
これを聞いたリサが黙っているわけもなく、その場で「普通以下のキスをしているあなたに言われたくないわ」と言い返し、以降、二人の間では「究極のキスバトル」が勃発することになった。
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◆第一ラウンド:「ソフトキス対決」
その夜、ミナは真剣な顔でリサに向かい合った。
「いい?最初はシンプルにソフトなキスで勝負よ。」
リサは腕を組み、余裕たっぷりに頷く。
「いいわよ。シンプルだからこそ、実力が分かるものね。」
ミナが先手を取った。リサの頬にそっと手を添え、唇を近づける。柔らかく、しかし確かな熱を帯びたキスがリサの唇を捕らえる。リサは思わず体を震わせるほどの感覚に襲われたが、ここで動揺を見せるわけにはいかない。
ミナが唇を離すと、満足げに微笑んだ。
「どう?これが私の実力よ。」
しかし、リサも負けてはいない。ミナの顔を引き寄せ、今度は自分から唇を重ねる。彼女のキスはソフトながら、まるで甘い波が押し寄せるように、徐々に相手の心を溶かしていく力があった。
ミナの瞳がわずかに潤んだのを見て、リサは勝ち誇った笑みを浮かべる。
「どう?これが本物のソフトキスよ。」
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◆第二ラウンド:「不意打ちキス対決」
翌日、二人は不意打ちでいかに相手をドキッとさせるかを競うことにした。
リサが仕掛けたのは、ミナが読書に集中している時だった。リサはそっと近づき、突然ミナの耳元に唇を落とす。柔らかく囁くようなキスに、ミナは本を取り落としかけた。
「ちょっ、油断してた……っ!」
「ふふ、これが勝負よ。油断したあなたが悪いわ。」
しかし、ミナも負けていない。その数時間後、リサが洗い物をしている時に、彼女の背後からそっと近づいた。そして、何の前触れもなく、リサの首筋にキスを落とす。
「きゃっ!」
リサは完全に不意を突かれ、泡だらけの手を止めた。ミナは得意げに笑う。
「これが不意打ちキスの真髄よ。」
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◆最終ラウンド:「愛の究極キス」
幾度となく競い合った後、二人はベッドの上で向かい合っていた。もう言い訳はできない。ここで決着をつける時だ。
「どっちが勝っても、最後にはちゃんとハッピーエンドにするわよね?」
ミナが笑いながら言うと、リサも微笑みを返した。
「もちろんよ。でも……勝つのは私。」
そして、二人は同時に唇を重ねた。そこにはもう競争ではなく、ただお互いを慈しむ純粋な気持ちだけがあった。そのキスは、これまでのどれとも違い、深く、長く、そして甘かった。
唇を離した時、二人はお互いの目を見つめて笑い合った。
「結局、どっちが上手いとかどうでもいいのかもね。」
「そうね。あなたのキスが好き。それだけで十分だわ。」
こうして、二人の「究極のキスバトル」は、勝敗をつけることなく終わりを迎えた。しかし、その先に待っていたのは、さらに深まった愛だった。
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