第5話「輪廻の花、ふたり咲く」(輪廻転生百合)約1,700字
### **第一章:最初の出会い――原始の森で**
世界がまだ若く、人間たちが狩りをし、炎の使い方を覚え始めた頃。広大な森の中で、一人の少女が焚き火のそばに座っていた。
アルナと呼ばれるその少女は、部族の中で「狩人の花」と称されるほど美しく、弓を引く姿は誰もが見惚れるほどだった。だが、彼女にはひとつの秘密があった。
森の奥深く、誰も近づいてはならない禁忌の地。そこに住むと言われる「神の使い」と出会い、密かに通い続けていたのだ。
その「神の使い」とは、リタという名の少女だった。白い肌、透き通るような声――リタはまるで人ではないような美しさを持ち、初めて出会った日からアルナの心を奪った。
「アルナ、今日はなぜこんなに遅かったの?」
リタは森の泉のほとりに立ち、笑顔を浮かべながら言った。その姿は月の光に照らされ、神秘的な光を放っていた。
「狩りが長引いたんだ。それに、部族の目を誤魔化すのが……難しくなってきた」
アルナは息を整えながら答えた。リタのそばに座り、その小さな手をそっと握る。
「ねえ、リタ。もし私がここに通えなくなったら、どうする?」
その問いに、リタは寂しげに微笑む。
「大丈夫よ、アルナ。私たちはきっとまた出会える。たとえこの命が尽きても、きっとどこかで……何度でも」
それが二人の始まりだった。二人の魂は、その誓いを胸に抱き、最初の死を迎えた。そして――。
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### **第二章:中世――騎士と修道女**
目を覚ました時、リタは石造りの修道院にいた。小さな窓からは淡い光が差し込み、聖歌がかすかに響いている。
自分がなぜここにいるのかはわからない。ただ、胸の奥底に奇妙な感覚があった。「何か、大切なものを探している」――そんな気持ちに突き動かされていた。
そして、その出会いは運命だった。
修道院を訪れた一人の女性騎士――アルノー。この国では稀な女性の騎士として知られ、鎧をまとい馬を駆るその姿は、リタが見たこともないほど凛々しかった。
「あなたは……?」
「アルノーです。修道院の守護を任されている騎士です。あなたの名前は?」
その瞬間、二人の間に静かに流れるものがあった。言葉にはならない記憶。何か懐かしい感覚。
やがてリタは、アルノーの不器用な優しさに惹かれ始めた。そして、アルノーもまた、リタが持つ純粋な輝きに心を奪われていく。だが、二人が共に生きることを許される時代ではなかった。
「アルノー、私はここを出ることはできない。修道院の掟を破れば、神の怒りに触れるわ」
「なら、私が神を敵に回そう。私は……あなたのそばにいたい」
その夜、二人は修道院を抜け出し、暗い森を駆け抜けた。そして、夜明け前の空の下で、そっと唇を重ねた。その瞬間、二人の魂は再び繋がり、確信した。
「何度生まれ変わっても、私は必ずあなたを見つける」
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### **第三章:近未来――宇宙の果てで**
目覚めた時、アルナは宇宙船の中にいた。
巨大な窓の外には、無数の星々が広がっている。彼女は「探索者」として、新たな星を探す任務に就いていた。だが、いつも心にある虚無感がつきまとっていた。
――誰か、大切な人を探している気がする。
その「誰か」が誰なのかはわからない。ただ、いつかその人に会えるという確信だけが、彼女を支えていた。
そして、その日がやってきた。ある未踏の惑星に降り立ったアルナが見たのは、青く輝く湖のほとりに佇む一人の女性だった。
リタだった。
「あなたは……誰?」
アルナが震える声で問うと、リタはそっと笑った。その微笑みは、幾千の星々よりも輝いていた。
「……待っていたわ、アルナ。ずっと、ここで」
その瞬間、アルナの記憶が一気に蘇った。原始の森、中世の修道院――そして今、ここ。何度も生まれ変わり、何度も出会い、そして再び巡り合った瞬間だった。
「リタ……ようやく、見つけた」
二人は抱きしめ合い、時空の果てにいることさえ忘れてキスを交わした。その瞬間、宇宙のどこかで新たな星が生まれた――それは、彼女たちの愛の光だった。
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