目の前に見える街を目指して、私とアレクは二人で歩き続け、ついに街の入り口までたどり着きました。私は少し疲れた足を止め、遠くから響く鐘の音に耳を傾けました。その低く響く音は、森の移動で疲れた体にほんの少しだけ安らぎを与えてくれるようでした。私はスカイブルーのローブを軽く整え、門の前で立ち止まります。門番の男性がこちらを見つけると、疲れたような、それでいて温かい笑顔を浮かべて声をかけてきました。私はその笑顔を見ながら、少し首を傾げました。

「ようこそ、旅人さん」

「はい……あの、この街って帝都に行く馬車とか出てますかね？」

「ああ、出ているぞ。でも……今はちょっと難しいかもしれないな……」

　男性の声が少し曇り、困ったような表情が顔に広がりました。私はその表情を見ながら、少し考えました。何か問題でも起きたのでしょうか。私は門の向こうから聞こえてくる喧騒に耳を澄ませ、少し胸の奥がざわつきました。街の活気とともに何か不穏な空気が漂っている気がして、少し落ち着かない気持ちになりますね。

「何か問題があるんですか？」

「いや……その……実は最近、この街に帝国兵がよく訪れるようになったんだが……」

「帝国兵が？　詳しく聞かせてくれ」

　アレクが男性の言葉に鋭く反応し、詳しい話を聞き出そうとしました。私は少しびっくりしました。私は彼の横顔を見ながら、少し興味を引かれます。実は、私には帝国でお尋ね者として追われている可能性がゼロではないのです。私は少し目を細めました。もしそうなら、彼らの動向を知っておくに越したことはありません。戦場の天使である私ですが、こういう人間の厄介事にはできるだけ関わりたくないのが本音です。私は少し苦笑しましたね。

「それがな……その帝国兵たちは毎日のように宿屋や酒場に入り浸って、好き勝手に暴れているらしいんだ」

「……なるほど、それで辻馬車は？」

「帝国兵どもが占領して、自分たちやお偉いさんを優先して乗せてしまって、市民や旅人が乗る枠がないんだよ」

　どうやら、ここでも権力者の横暴がまかり通っているようです。私は少し首を振りました。アレクも同じことを考えたのか、顎に手を当てて少し考え込むような仕草を見せました。私は彼の鋭い目を見ながら、少し考えました。彼の目が鋭くなり、王国兵としての警戒心が顔を覗かせます。私にはその表情が、彼の職業を思い出させるものでした。私は少し微笑みました。彼は私の監視役でありながら、時折こうして頼もしく見える瞬間があるのです。

「ふむ……メ、いや、マリー」

「……なんですか？」

　アレクが私の名前を呼びかけました。私は少し首を傾げました。本名メアリーは目立つので、愛称の「マリー」で呼ぶことを許していますが、彼はどうも慣れないようですね。私は彼の少し戸惑った顔を見ながら、少し考えました。人間って、名前を呼び合うだけで妙な親近感を抱くものなのでしょうか。私には少し理解しがたい感覚です。私は少し目を細めました。

「ひとまず街に入って情報収集しよう。何も辻馬車だけが帝都に行く方法とは限らないしな。なんなら、また別の街まで歩くか？」

　確かに急ぎたい気持ちはあります。私は少し息を吐きました。でも、ここで街の問題に首を突っ込んで解決しようものなら、帝国に追われるリスクが跳ね上がるだけです。私は少し首を振りました。そんな危険を冒すつもりはありません。私の使命は手紙を届けること。それ以外は、正直どうでもいいのです。私は少し決意を固めましたね。

「そうですね……そうしましょう」

　私はアレクの提案に同意し、私たちは門をくぐって街の中へと足を踏み入れました。私は街の空気を感じ、少し目を細めました。そこは活気あふれる場所でした。大通りには人が行き交い、露天商の声が響き合い、焼き魚やスパイスの匂いが風に乗って鼻をくすぐります。私はその匂いをかぎながら、少し気分が紛れました。色とりどりの看板が軒を連ね、子供たちが笑いながら走り回っている姿も見えました。でも、その賑わいの合間に、帝国兵の姿がちらほらと混じっているのが目につきます。私は彼らの姿を見ながら、少し身構えました。彼らは酒に酔った様子で、一般人に絡んだり、大声で笑ったりしています。私のスカイブルーのローブが彼らの視線を引きつけるのが気になりましたが、アレクのそばを離れず、慎重に周囲を観察しました。

「おい、姉ちゃん！　俺たちと一緒に飲もうぜぇ」

「いえ、遠慮しておきます……」

「そんなこと言わずにさぁ！」

　一人の帝国兵が、私たちを引き止めようと近づいてきました。私は少しびっくりしました。酒臭い息が顔に当たり、思わず眉をひそめてしまいます。私は少し顔を背けました。でも、アレクはそんな男を完全に無視して歩き続けました。私は彼の背中を見ながら、少し安心しました。私は彼の後に続き、その場をそそくさと離れます。アレクの背中が、こういう時だけは少し頼もしく見えるものです。私は少し微笑みましたね。

「おい、待て！　……ちっ」

　男は舌打ちを残して立ち去りました。私はその音を聞きながら、少し首を振りました。その後も、私たちは帝国兵を避けながら街中で情報収集を試みましたが、成果はほとんど上がらないままです。私は街の人々の様子を見ながら、少し考えました。街の人々は帝国兵の横暴に怯えているようで、口を閉ざして詳しい話を避けている様子でした。私は少し残念に思いましたね。結局、その日は宿を取って翌日に備えることに決めました。私は宿の古びた建物を見ながら、少し息を吐きました。部屋は狭く、木の床が足を踏むたびに軋む音を立てます。私はその音を聞きながら、少し落ち着きました。それでも、旅の疲れを癒すには十分です。

　その日の夜、宿の中で私は薄着に着替えました。私はキャミソール一枚だけの姿で、少し肌寒い夜風を感じました。窓から吹き込む風が肌を優しく撫でます。私はその感覚に少し目を細めました。アレクがこちらをじっと見つめてくるのがわかりました。私はその視線を感じ、少し居心地が悪くなりました。彼の視線が肌に突き刺さるようで、少しだけ落ち着かない気持ちになります。でも、私はそれを顔に出さないように努めます。私は少し首を傾げました。

「……なんですか？」

「いや……その、綺麗だなって……」

「……まあ、天使と呼ばれた私が綺麗なのはわかりますけど、そんなに不躾では将来本当に恋人ができた時に嫌われますよ」

　私は溜息混じりにそう答えました。私は彼の顔を見ながら、少し考えました。人って、こういう時どう反応するのが普通なのでしょうか。私は少し首を振りました。すると、アレクは急に真剣な表情になり、私の手を掴んできました。私は少しびっくりしました。彼の少し汗ばんだ手が、私の冷たい手を包み込みます。私はその温かさを感じ、少し戸惑いましたね。

「いや、いっそこのまま……」

「馬鹿言わないでください。ほら、寝ますよ」

　私は彼の手を振り払い、布団に潜り込んで目を閉じました。私は布団の感触を感じ、少し安心しました。すると、アレクも同じベッドに滑り込んできたのです。私は少し目を丸くしました。……そういえば、この宿も夫婦として泊まっているんでしたね。私は少し苦笑しました。狭いベッドの中で彼の体が私に触れ、熱い体温がすぐ近くに感じられます。私はその熱さを感じ、少し複雑な気持ちになりました。人間って、本当に不思議ですね。