05話 キラキラカワイイ魔法少女♡ シャルティ・ピンク、キラッと登場☆

その①

「クソがァッ!!」


 ゲンレス帝国の会所にて。突如として次元の裂け目からゲイルが帰還するや否や、彼は八つ当たりとばかりに近くの椅子を怒声混じりに蹴り飛ばして破壊した。


「ゲイルさん。四人目のシャルティエイルが現れたというイレギュラーが発生したのです。貴方に落ち度は何らありませんよ」

「るせェッ!! ンなこたぁ言われなくても分かってんだよ!!」


 自身のゲンレスターを容易く撃破された事に相当御冠の様である。そんな様子を見兼ねた仲間の一人が宥めてみるも、却って逆効果となった。


「――レコリ。丁度新型のゲンレスターが完成した。使ってみるか?」


 男とも女とも捉える事が出来る、中性的な見た目をしているゲンレス帝国幹部が一人、ヴァイがドス黒く濁った水晶玉を片手に会所に現れる。

 レコリと呼ばれた老人は杖を突きながらヴァイの元へと向かい、掌に乗っているコアの中心部を覗き込み、感嘆の表情を見せた。


「……素晴らしい。是非とも使いましょう。ですがそのコアを解放する為には二人必要でしょう。ですのでゲイルさん、それと――」

「ワタクシが行くわ!」

「レイズ! そう来なくっちゃなァ!」


 レコリが指名するよりも早くレイズが名乗り出る。その勇ましさにゲイルは嬉しそうに鼻を鳴らしていたが、レコリとヴァイは難色を示していた。


「……レイズさん、今回ばかりは控えた方がよろしいかと」

「いいえ! あのクソガキ共に一泡吹かせないとワタクシの腹の虫が収まらないわ!! いいでしょヴァイ!!」

「……いいんじゃない? 言っても聞かなさそうだし。それに我もゲンレスターの研究を進めたいし好都合だ」


 どうしても食い下がって聞く耳持たないレイズにレコリは少し悩んだが、彼女の熱意に折れる事となる。


「……分かりました。ですがくれぐれも無茶はしないように」

「ハッ! そうと決まりゃさっさと行くぜ! レイズ!!」

「ええ! アイツらはたっぷりとお仕置きしてやらないとねっ!!」


 そう言ってレイズとゲイルはとっておきのゲンレスターを手にしながら次元を切り裂き、再び地球を侵攻するべく意気込んだのだった。


◇◆◇


 地球時間。八時過ぎ頃。定依栖高校の生徒達は今日も学校を目指す。希望に満ち溢れていて意気揚々と歩を進めていく者や、不安に苛まれながら重い足取りで進めさせられている者が見受けられる。そんな生徒達の中に紛れている胡桃沢くるみさわ咲久耶さくやはどちらかと言えば後者である。


「はぁ……」


 俯きながら溜息を吐く咲久耶は元気無さそうに脂肪まみれの身体を揺らしながら学校を目指す。その理由は学校生活が苦痛で仕方が無いからだ。

 咲久耶は昔から人付き合いが得意ではない。寧ろ苦手な位だ。入学式から約一ヶ月が経っているのにも関わらず、誰とも打ち解けられずに一人寂しく下校時間が来るのを只管に待つのみだった。


「うわっ!?」


 俯きながら歩いていたものだから、交差点の丁度曲がり角で誰かと出会い頭の衝突が発生してしまい、尻餅を着いてしまった。


「ってーな! どこ見て歩いてんだよ!」

「ご、ごめん! 怪我は――!?」


 少し幼めの高い声のする方へ見やると、目の前には背が低く幼い見た目をした、定依須高校の制服を着た女子だった。


「……!」


 ふと目線を降ろすと、咲久耶は思わず赤面する。同じく尻餅を着いているその女子は、色気無く両足を開いているものだから、スカートの中が丸見えとなっている。

 そして明らかに男物であるトランクスの裾の隙間から見てはいけない部位が後もう少しで見えそうになっており――。


「朝からイイモノ見れてラッキーじゃの」

「わぁっ!?」


 耳元で艶かしく囁かれ、咲久耶は思わず仰天し、目を逸らし後退りする。逸らした先に居たのは、すっ転んでパンツが丸見えになっている天真爛漫な少女とは真逆の、妖艶な佇まいとはち切れんばかりの胸が特徴的な定依須高校の女子生徒だった。


「いつまで恥ずかしがってんのアオっち! 早くしないと遅刻するよ!」

「そ、そんな事言われたって!?」


 小麦色に焼けた肌と金髪のコントラストが麗しいギャルの様な見た目の女子が、色白の肌に度のキツそうな眼鏡を掛けた委員長の様な印象の女子の手を引き咲久耶達の元へと集う。無論、この二人も定依須高校指定のブレザーとスカートを着用している。


「しっかりしろよ。これもSPPの為なんだろっ、と。……立てるか?」


 天真爛漫な見た目に似合わず粗暴な口調で喋る少女はスカートの中を見られた事なんて露知らずに勢いよく立ち上がり、鈍臭くいつまでも座り込んでいる咲久耶に小さく柔らかそうな手を差し伸べた。


「あ……ありがと……」


 女子に優しくされるなんて久方ぶりだった。咲久耶は躊躇いがちに手を出してみると、少女は迷いなく脂汗にまみれたそれを掴み、下手したら自分よりも強い腕力で肥満体を余裕の表情と共に立ち上がらせた。


「ワシが用意した制服がピッタリで何よりじゃ」

「サカキンそれ絶対サイズ小さいっしょ? サイズ合ってないのは見苦しいんだけど」

「ペチャ⚫︎イの嫉妬はそれ以上に見苦しいのぉ」

「僕は好きでこんな胸になったんじゃない!!」


 四人の女子は近くに居た男子なんて気にも留めず目も留めずに学校目指して横並びで歩いていく。定依須高校指定の制服、そして一年生を示している臙脂色のリボン。あの四人はつまり同級生と言うことになるのだが、学校で一度も見た事が無いし誰か転入してきたという情報も無い。正体は謎である。


「あ、あの……っ!」


 謎に包まれている美少女達を引き止める。喉を使う事に慣れていないからか大きな声が出せない。弱々しい震え声は彼女達の耳に届かないかに思われたが、一人だけ振り返った。


「俺達の事は秘密にしといてくれ」


 少女は少し困った様な笑みを浮かべ、口元に人差し指を立ててそう言った。その表情と言動に咲久耶はこれ以上言及する事は出来ず、立ち尽くす。そして、昂ぶる鼓動を抑えられず、秘めたる想いを思わず口に出していた。


「カ……カワイイ……!!」

 


 ◇◆◇


「……SPPはどうなっている?」


 朝礼前。ヒナタ達は各自の教室に入る前に誰も入って来ないであろう和室へと向かい、すぐさまデバイスを取り出した。


「ヤバい通り越してヤバたにえんってカンジの上昇量だよ! ホラ見てホラ!!」


 何故か高揚しているイツキは宛ら水戸黄門の印籠が如く三人に画面を見せつける。着物姿で花を活けている時よりも大きい上昇量だったのでヒナタとアオイは胸を撫で下ろした。


「オメーの発想には驚かされるぜ。女子生徒に扮して登校してみようなんてな」

「あんな恥ずかしい事、僕はもう絶対やらないからな!」

「フン、オマエみたいなムッツリスケベに限ってこっそり女装して悦に入ったりするモンじゃ」

「や・ら・な・い・か・ら・な!!」

 

 アオイとリンのいがみ合いを尻目にデバイスの時刻を見てみると、朝のHR開始まで五分を切っていた。ヒナタは急いで男に戻り、鞄の中に入れていた男用の制服を取り出して着替え始める。


「……何してんだ向井。オメーも早く着替えろよ」

「……ごめんちょっとトイレ! 着替えて先に教室行ってて!!」

「向井イツキ! その姿で出るんじゃない!!」

「ダイジョーブ! バレない様にするからー!!」


 そう言うとイツキは着替えが入っているであろう鞄を抱えて部室から出て行こうとしている。葵が止めようとするが時既に遅し。足の速さは女になっても変わらずだった。


「ワシのこのパーフェクトボデーは見たくないというのか。まな板ビッチの癖に生意気なヤツじゃ」

「!!?」


 ふと振り返ってみると、リンは女の姿のままブレザーを脱ぎ捨てて仁王立ちしており、組んだ両腕から乳房が溢れそうになっていた。それを直視してしまった葵は性的興奮のあまり、鼻血を出してしまった。


「オメーいつになったら慣れるんだ? 胸がデカくても中身は榊だぜ?」

「チビ助。メガネにそれを求めるのは永遠の世界平和を求める事と一緒じゃ」

「うるさいな!! 放っておいてくれ!!」


 そんなこんなで着替え終わった三人は各自の教室を目指して部室を後にしようとする。和室の扉を閉める際、緋奈太の鞄の中に身を隠していたヘルムがモゾモゾと動き出した。


「――どうしたヘルム?」

「いえ……デバイスが反応した様な気がしまして……」


 残り一つとなったシャルティ・デバイスが反応を示したという事は、最後の一人である光のシャルティエイルに選ばれし者を発見したという事。しかし周囲を見渡してみても誰も居ない。


「……誰も居ねーぜ?」

「おかしいですね……確かに反応したと思うのですが……」

「何をしている原田緋奈太。生徒会副会長である僕の前で遅刻は許さないぞ」

「るっせーな! わーってるよ!」

「待って下さい緋奈太さ――!」


 本来ならば早い内に見つけた方が良いのかもしれない。だが既に校舎近くまで歩を進めていた葵がそれを許さなかった。緋奈太はヘルムの制止を無視して教室へと向かっていったのだった。

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