第39話 バーベキュー

 琴音と小鳥遊さんと一緒にスイーツバイキングに行ってから四日後の八月十二日。


「この野菜切ってて~」


「お皿ってこれで良かったかな?」


「なあ、誰かレモン持ってきてないか?」


「ねえ、まだ焼いたらダメなの~?」


 俺はみんな(優希、琴音、小鳥遊さん、米倉さん、大山、荒崎さん)と一緒にバーベキューをしていた。


 何故俺たちはバーベキューをしているのか、それは、時を一日前まで遡らなければならない。



 バーベキューの一日前、八月十一日、午後一時。


 それは突然鳴り出した。


 ブーブーブー!


「ん?」


 俺はテーブルに置いてあったスマホが鳴り出したのに気付いて、スマホを取る。


「琴音?何の用だろ?」


 俺は少し疑問に思ったが、電話に出る。


「もしもし?」


「あっ、樹!明日みんなでバーベキューするからさ、樹はバーベキュー台とか炭とか持ってきてくれる?」


「......何の話?」


 いきなり聞き覚えのないバーベキューの話をされたので、俺は一回琴音に尋ねる。


「あっ、言ってなかったね!今日で優希とか小夜ちゃんとかの塾がお盆休みに入るらしくてね、あと大山君も今日戻ってくるって聞いてるから、みんなで塾と甲子園頑張ったねーってことでバーベキューしようってことになったの!」


「俺と琴音はどっちも大して頑張ってないけどな」


「まあまあ、いいじゃん!楽しければ!」


 というか、なんか夏休みに入ってから結構な頻度で遊んでいるような気がするんだが、まあ、いいんだけど。


「それで?どこでバーベキューするんだ?」


「えっとねー、うちらが通ってた中学の近くの海辺に公園あったでしょ?あそこでするの」


「ああ、あそこならバーベキューオッケーだもんな」


 俺もそこで家族で何回かバーベキューとかやったことあるし。


「それで、俺はバーベキュー台と炭持ってくればいいのか?」


「うん、食材とかは他の人に持ってこさせるからさ。樹の家って結構キャンプするんでしょ?だからそういう道具も持ってるんじゃないかって思って」


「父さんが好きなだけだけどな」


 そういや、中学の時琴音にうちがよくキャンプするって言ってたっけな。


「じゃあ、十二時に公園に集合ね!じゃあね~!」


「じゃあな~」



 というわけで、俺は今海辺の公園でみんなと一緒にバーベキューをしている。


「ねえー、樹ー?」


「ん、何だ?」


「まだできないのー?火」


「五分前も聞いたぞ、それ」


 俺に火付け係を任せたんだからいちいち聞いてこないで全部任せてくれりゃいいのに。


「だってー、もう三十分も経ってるじゃん!もう火ぼうぼう燃えてるんだから焼き始めてもいいじゃん!」


「まだ炭の方が焼けてないんだよ、炭に火が移って安定してきてからだ。それに、こんな激しい火で焼いたら具材がすぐ焦げるぞ」


「むー、バーベキューがこんな待つなんて......もっとすぐできると思ってたのに」


 がっくりと項垂れる琴音、まあ、俺も最初はそんな感じのこと思っていたけども。


 そうして、炭を動かしたり薪を足したりすること約二十分。


「もう焼いてもいいぞ~」


「やったー!」


 炭に火が移って火力も安定してきたのでそう言うと、琴音が両腕を大きく上げて喜びの声を上げた。


 そうして、それぞれがあらかじめ切ったりしていた肉やら野菜やらを網に乗せて焼き始める。


「あっ、もうこれいいんじゃないかな?」


 米倉さんがそう言って指したのは、イカだった。やっぱり海鮮類って焼けるの早いな。


「そうだね、もういいかも。あっ、調味料ここに置いておくね」


 優希は塩コショウ、焼き肉のたれ、レモン汁、ハーブソルトなどの調味料が入った皿を俺たちの近くに置いてくれた。


「あっ、ありがと」


 俺は優希にお礼を言っておく。


 そして、イカを取って......って、あれ?イカが消えてる?


「イカ旨えな!」


「誰がイカ全部取ったのかと思ったら大山かよ!」


 全然予想通りだったが。


 それにしても、さっきの数秒で何個かあったイカを残らず全部取るなんて、すごいな。


「そういや、大山甲子園どうだった?」


「ん?ああ、三回戦で負けたな」


 いや、それはもうメールで聞いているんだが。


「三回戦の相手が今回の優勝候補でな、かなり強かったんだよ!でも、あのバッテリーからホームラン打ったのはかなり興奮したぞ!」


「なんか嬉しそうだな、そんなに楽しかったのか?」


「ああ!今までで一番楽しい試合だったぞ!」


 本当に楽しそうに話す大山、本当に野球が好きなんだろうな。


 運動馬鹿ってところ考えたら光樹と結構話題合うかも、なんか性格も似てるし。


「ほら、どんどん焼けてるよ~」


 優希は焼けた肉やら野菜やらをどんどん大きい皿に移していく。


「あっ、牛カルビ頂きっ!」


「えっ、これ牛カルビなのか?俺も俺も!」


 俺は急いで琴音が取った肉と同じ肉を取って食べる。


「おお、旨いな!」


「私が厳選したお肉だからね!とくと味わうがいいぞ!」


「いや、それ俺が持ってきた肉だから」


「えっ、そうだっけ?」


 優希に指摘されてびっくりしたような表情を見せる琴音。ドヤ顔で言ってた分恥ずかしいだろうな。


「旨いな!」


「大山、お前取りすぎだろ」


「そうか?」


 大山の皿にだけ肉やら海鮮類やら野菜やらが山盛りになっていた。どんだけ盛ってんだよ......


「肉、焼けたぞ、いるか?」


「あっ、はい、頂きます」


 荒崎さんが大皿に移した肉を小鳥遊さんが取る。こちらも楽しんでいるようだ。


「そういや、何でお盆に塾が休みなんだ?俺が高校受験の時に通ってた塾はお盆の時勉強合宿みたいなことしてたけど」


 俺がふと疑問に感じて優希に尋ねてみる。


「お盆とかお正月とかにそういう勉強合宿をするのは受験生だけだよ?」


「あっ、そうだったんだ」


 確かに、お盆とか正月とかに勉強するのは受験生だけで十分だからな。


「ほらほら!樹も優希もじゃんじゃん取って!どんどん焼くから!」


「おい、肉ばっかりじゃなくてちゃんと野菜も焼けよ?」


「何?樹、野菜食べたいの?」


「まあ、肉ばっかり食べてたら飽きるからな、野菜挟まないと」


「それもそうだね」


 そうして、琴音は玉ねぎやらピーマンやらを網に乗せる。


「ほら、また焼けたよ~」


 優希がまた大皿に焼けた肉などを置いていく。


 そうして、楽しい時間はあっという間に過ぎていった。



 ◇◇◇◇◇◇



「ふうー、食べた食べた!」


「じゃあ、後片付けするか、俺は炭の処理するから他のはみんなでやってくれる?」


「えっ、炭の処理とかやらなきゃなの?」


「そりゃそうだろ」


 まず水を掛けて消火して、その後この公園にある灰置き場に捨てるだけなんだけど、これをせずにその場に炭を捨てる奴が意外といるんだよなー、たまに。


 この公園はそういうのないからいいんだけど。


 そうして、俺たちはバーベキューの後片付けなどを終わらせた。


「よしっ、全部終わったな」


「それじゃ、ここで解散としようか!バイバーイ!」


「じゃあな~!」


 俺たちは公園を後にした。


 楽しかったな~、バーベキュー。

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