第34話 プール 1
合宿が終わって約一週間後、八月二日。
俺は自室で夏休みの宿題に取り組んでいた。
ピロン!
「ん?」
机の上に置いていたスマホから着信音が鳴ったので確認すると、琴音から着信が来ていた。
アプリを開いてメッセージを確認する。
「プールの無料入場券があるからみんなで行くよ~!樹も来る?」
というメッセージが琴音から来ていた。
「プールか......」
みんなって書いてあるけど、誰が来るのだろうか?小鳥遊さん?優希?
「まあ、とりあえず返信するか」
そうして、俺は「行く~、いつ?」と返信をした。
返信して一分くらいしてから、琴音からまたメッセージが来る。
「明日だよ!十時に集合ね!あっ、お弁当も忘れずに!」
というメッセージとともに、プールの場所のリンクが貼ってあった。
「室内プールか、結構広いんだな」
リンクをタップしてリンク先へと飛ぶと、市内にある大規模な室内プールの画像が目に入ってきた。
どうやら、ウォータースライダーや流れるプールなどもあるらしい、結構楽しめるかもな。
俺は少しワクワクしながら、そのプールのことをスマホで調べ出した。
◇◇◇◇◇◇
翌日。
「あっちーな」
俺はプールの近くまで来たのでバスから降りて、灼熱の太陽の下を一人歩いていた。今日の最高気温は三十七度、今はまだ十時前だから三十度弱って感じかな。それでもかなり暑いが。
それにしても、プールなんて久しぶりだな~。最後に行ったのが中二に家族で行ったから、二年ぶりかな。
「って、すぐだったな」
バス停から歩いてすぐの場所にプールはあった。市民プールだったんだな。
「あっ、樹だ!おーい!」
市民プール前にいた琴音が大きく手を振って呼びかける。
琴音以外に来ているのは、小鳥遊さんと優希、米倉さん、荒崎さん......って、多くない?
「よくこの人数分の無料券あったな」
「ふっふっふっ、感謝してよ?なんかお父さんが仕事関係でもらって来たらしいんだよね」
何故かドヤる琴音。
「そういや、大山は来てないんだな」
大山も来れば打ち上げメンバー全員だったのに。
「ああ、一応連絡してみたんだけど、部活で来れないみたい」
「あー、あいつ野球部だから今の時期は忙しいだろうしな」
なんか県大会とか甲子園とかあるだろうし。
「まあ、とりあえず入ろっか」
そうして、俺たちは市民プールの中へと入っていった。
「あの、これ使えますか?」
「はい、使えますよ。六名様でよろしかったですか?」
「はい!」
琴音が受付の人に無料入場券を渡す。
「じゃあ、行こっか!」
俺たちは入場して、それぞれの更衣室へと入っていく。
「樹?覗いたりしないでよ~?」
「するわけねーだろ」
琴音とそんなやり取りをしながら、俺は優希と一緒に男子更衣室へと入った。
「それにしても、プールなんて久しぶりだな~」
「そうだね、俺中一ぶりかも」
「うちの中学プールなかったからな~」
優希とそんなことを話しながら服を脱いでいく。
「そういえば、小鳥遊さんとは上手くやれてるか?」
「うーん、そうだね。まだ若干気まずさはあるけど、普通に話すくらいはできてるよ」
「そうか」
それはよかった。
そんなことを話している間に、俺たちは水着に着替え終わった。
「さて、そろそろ出るか」
「そうだな」
そうして、俺たちは更衣室から出る。
「......女子たちはまだっぽいな」
まだ女子勢はいなかった、まあそりゃ、男子より着替えに時間かかるだろうからな。
「お待たせ~」
「おっ、やっと来たか」
しばらく待っていると、琴音たちがやってきた。
つーか、女子とプールに行くなんて初めてかもな、俺のこの十五年の人生の中で。
「えっ、樹~?何じろじろ見てんの~?」
「はっ、はあ?じろじろなんて見てねーよ」
にやつきながらそんなことを言う琴音、俺は思わず顔を逸らす。くっ、なんか顔が熱い。
大体まず、女子の水着姿なんて目のやり場に困るから直視できない......って、そんなことは口が裂けても言いたくない。
「まあともかく、まずはウォータースライダーから行こうか!」
俺のことは無視して、琴音は大きく片腕を上げて歩き出す。
「樹?大丈夫?」
「......ああ、うん」
心配してくれたのか、優希が俺に声を掛けてくれた。俺は火照った顔を見られたくなかったので、俯きがちに答える。
「そっか、じゃあ、行こう!」
そうして、俺たちは一つ目のウォータースライダーの列へと並ぶ。
「ここはね、最大で六人いっぺんに滑れるらしいんだよね!」
「六人で?どうやって?」
琴音の発言に疑問を抱いたのか、米倉さんが質問する。
「えっとね、なんかボートっぽいのに乗ってからウォータースライダーを滑るみたい」
ボートっぽいのか、ジェットコースターみたいな感じなのかな?
「お待たせしました~」
列で五分くらい待って、ようやく階段を上り始めることができた。あとは一番上まで上って滑るだけだな。
「ウォータースライダー、どんな感じなんだろうな?」
熱くなっていた顔もだいぶましになってきて、普通に話せるようになった。
「私も詳しくは知らないんだけど、なんか楽しそうだったよ!」
「へえー、楽しみだな!」
そうして、俺たちは一番上まで上りきった。
「はい、こっちに座って~」
係のおじさんが俺たちを誘導して、丸いゴムボートみたいなものに乗せる。
俺たちは、丸いゴムボートの端の方にそれぞれ互いに向き合うような形で座った。
「......よし、じゃあ行くよ~」
係のおじさんはそう言うと、ゴムボートを両手で押した。
「うおおおー!」
「ひゃっほーい!」
ゴムボートはどんどん速度を上げていき、それに伴い回転していく。
俺は思いっきり両手を上に上げて楽しむ。
ばっしゃーん!
いつの間にかボートは着水して、係の人に促されて俺たちはボートから降りてプールから上がる。
「楽しかったね~!次はどのウォータースライダーする?」
「あ、あの、ちょっといいだろうか?」
「ん?」
琴音がテンション高めではしゃいでいると、遠慮がちに荒崎さんが小さく片手を挙げる。
「実は私、絶叫系が昔から苦手でな。ウォータースライダーだったら大丈夫だと思っていたんだがダメっぽくて。なので、申し訳ないのだがちょっと私は遠慮させてもらってもいいだろうか?」
荒崎さん、絶叫系ダメだったのか。ちょっと意外だったかも。
「あ、あの、私もちょっと怖かったから、遠慮していてもいいですか?」
小鳥遊さんも遠慮がちにそういった。小鳥遊さんの方は結構予想通りだったな。
「オッケー、わかったよ。じゃあ、次は流れるプールにでも行ってみようか」
琴音は二人に気を使ってか、二人でも大丈夫そうな流れるプールに行くことを提案する。
「あ、ありがとね、ことちゃん」
「いやいや、大丈夫だよ~」
琴音と小鳥遊さんはそんなやり取りをしながら、俺たちは流れるプールへと向かった。
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