第36話 四姉妹の個性と仕事の振り分け

 金属板MAPで動かしたものが現実でも動く。

 便利ではあるが、それ以上に怖い。

 もし、移動させた先に誰かいたら……?


 ペチャンコじゃないのか?

 しかも、目視出来ない場所まで簡単に動かせてしまうのなら、命を奪ったことすら気づけない。

 あとは中に人がいる状態で動かしたらどうなる?

 激しく壁にぶつからないのか?


 こりゃ、慎重にやらないとエラいことになるかもしれん。

 家みたいな大きなものは、なるべく動かさないほうがいいかもな。




――――――




「うお! ごっつう茂ってる!」


 とりあえず炭作りは後回し。

 まずは畑を見ておこうとなったのだが、その成長ぶりに驚きの声が出た。


「すごいよね~、もうこんなに成長してるなんて」


 ソシラが指さすのはトマトだ。

 人の背丈ほどに伸び、もう花がいくつか咲いている。

 雑草でもここまで早く伸びない。異常すぎる育ち方に若干引いている。


「この子すごく可愛くない? ジョーイっていうの」


 今度はファニーだ。

 彼女が指さすのはニンジンだった。

 葉っぱがモコモコと茂り、根は太く土を押し広げている。


 こっちはさらにスゲーな。

 まだ二日しか経ってねえのに、もう収穫できそうなんだが。


 四姉妹は朝、井戸で顔や手足を洗っている。

 畑は井戸のそばにある。この成長具合も、すでに知っているわけか。


 先に言っといてくれない?

 なんで、すごいよね~ぐらいで受け流せてんの?

 俺なら驚いて「見て見て!」って言っちゃうよ。

 君ら順応しすぎてない?


 しかもだ。

 気になるのは順応力だけじゃない。


「ジョーイってなに?」


 誰だよそれ?

 もしかしてアレか?

 おまえニンジンに名前つけたのか?


「すごいんだよ。ガッっとしてて、ニョーンて感じで」

「どゆこと?」


 聞いたことに答えてないし、その中身も意味わからん。


「だから、ガッ、ニョーンだよ」

「ガッ、ニョーン……」


 まあ、言わんとしていることはわからんでもない。

 なぜなら、ソイツだけひときわデカく成長しているからだ。

 他のはまだ親指ほどにしか膨らんではいないが、もう普通のニンジンほどの太さになっている。


「じゃあ、もう収穫できるじゃん」

「ダメ~!!」


 引っこ抜こうとしたらファニーにタックルされた。

 なんだよ。なにがダメなんだよ。


「ジョーイはねえ、ニンジンのリーダーなの」


 リーダー?

 リーダーってあれか?

 まとめ役。

 なるほど。異常な成長をするニンジンの中でも、特にコイツ異彩を放つ育ち方だ。

 トルネードとでも言えばいいのか、回転しつつ上に伸びようとしている。

 だから、リーダーね。


「バカこくでねえよ」

「ダメ―!」


 変わった伸び方しててもニンジンはニンジンだ。

 植物にまとめ役とかねぇから。

 しかし、ふたたびニンジンを引き抜こうとするも、ファニーにまたしてもジャマされてしまった。


「抜かなきゃ食えねえだろうが」


 食べるために植えたのに、抜くのをジャマしてどうすんだよ。


「ジョーイは特別なニンジンなの! みんなの成長を見守らなきゃならないの!!」


 ファニーの力説である。


「コイツなに言ってんの?」

「さあ?」


 ソシラとヒソヒソ話す。

 どうもファニーは、こうしてたまにスイッチが入るのだとか。

 そういうときは頑として引かず、みな手を焼くこともしばしば。

 ただ、不思議といいように転ぶことが多く、ムリに止めないのだとか。


「では、ファニー。君を作物の世話係に任命する! ジョーイと力を合わせて作物の成長を守ってくれ」


 じゃあもうファニーに任せちまおう。

 やりたいやつにやらせるのが一番だ。

 この成長速度だと手入れもけっこう忙しいだろうしな。

 俺はそこまで時間を割く余裕はない。

 もちろん、収穫は一緒にするし、畑を耕したりの力仕事は俺がするけどな。


「ファニー、とりあえず水まいといてくれ。終わったら一緒に炭窯に火を入れよう。俺とソシラは薪を窯に並べとくから」

「わかった!」


 みんなですること、一人が責任もってすること。

 バランスよく振り分けていかないとな。

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