第13話 お代は気分次第
「誰だ? 誰かいやがるのか!?」
盗賊はあたりを見回しながらそう叫んでいる。
なんということだ。もう見つかってしまったか。
「コソコソしやがって! 隠れてないで出てこい!」
コソドロが、何か言っている。
コソコソしてたのはお前らの方じゃねえか。どの口で言ってんだ?
まあ、たしかにいま隠れているのは俺の方だけど。
けど危険から身を守るために隠れるのは普通のことだしな。
「すぐに出てくれば悪いようにはしねえ。観念したほうが身のためだぞ」
「そうだ、そうだ。いまなら許してやるぞ!」
コソドロどもは、なおも訳の分からないことを叫んでいる。
なにゆえドロボウに許しをこわねばならないのか。
許しをこうべきは盗みを働いたお前らであり、隠れている俺ではないが。
「いまから十数える。それまでに出てこなかったら命はないと思え!」
「俺たちゃ探し物は得意だかんな、へへ」
誰でも見つけられるような鏡しか見つけていないやつが探し物が得意とは、ちゃんちゃらおかしい。
それに出てこなかったら命はないってのもアホなセリフだ。
出ていった方が命があぶねえっつーの。
というか、出てくるよう脅した時点で、まだ見つけていない、見つける自信がないって白状しちゃっているんだが。
「い~ち、に~い」
盗賊は
そんなもんで焦って出ていくとでも?
ちなみに、俺は草むらに隠れている。
まあ、見つかることはないだろう。
俺はゾンビだ。動かなければ気配ゼロなのだ。
「さ~ん、し~」
カウントは進んでいく。
そして、数を数える盗賊の右手はフトコロの中へ。
どうせ短刀でも握ってるんだろ。
俺が姿を見せた瞬間ドスリだ。
バカだね。そううまくいくかってんだ。
その短刀を使う機会などない。断言してもいい。
「ご――」
5の瞬間に盗賊はバタリと倒れた。
そうなのだ。ちょうど背中を向けていたので、石を投げてやった。
まあまあ大きな石だった。
石はそこそこのスピードで飛ぶと、盗賊の後頭部に命中、盗賊はあっさりと撃沈したのだ。
わははははは。
ナイスコントロール。
まさか本当に当たるとは。
石がダメなら木の棒で殴りつけようと思っていたが、その必要はなさそうだ。
これで一対一。もうどうとでもなりそうだ。
「アニキー!! ちくしょう! 誰だ? 誰がやりやがった!?」
盗賊の子分はわめき始めた。
いきなりアニキ分が倒れて、かなり焦っているように見える。
あらら、コイツら弱え~なあ。
こんなことなら隠れなくても良かったかも。
まあ、自然に水を飲ませるのが目的だったしな。
隠れなきゃそれも試せなかったし。
結局はムリだったけど。
つーか、そもそもこちらに危害を加えてこようとするやつに水なんて飲ませられるわけねーって。
最初からこうなる運命だったんだ。
しょうがない。多少強引だが、あれで行こう。
えい!
向こうの草むらに石を投げた。
石は茂みをガサガサとかき分けるように、奥へと転がっていく。
「そこか! みつけたぞ!!」
全然違う方向を向いて短刀をかまえる盗賊子分。
わははは。面白い。
彼、なんて名前だっけ?
そうだ。ソドロだ。ゾンビになって初めて覚えた名前がコソドロのソドロってのもまたいい。
草むらの奥を凝視するソドロ。
すぐに追わないところが、まさに腰ぎんちゃくって感じだ。
そんなソドロに近づいていって――ゴン!
ちょっと太めの棒で殴ってやった。
――――――
あれから丸二日が経過した。
「うう……」
最初は殺してやるだの、はらわた引きずり出してやるだの威勢のいいことを言っていた盗賊だったが、だいぶ元気がなくなった。
それもそのはず。
彼らは飲まず食わずで二日間を過ごしたのだ。木にロープで縛りつけたまま放置したから。
いま出てくるのは、うめき声ばかりだ。
「ねえ、街ってどのあたり?」
「……」
かなりまいってはいるようだが、それでもこちらの質問には答えない。
う~ん、ムダに根性あるなあ。
根性の使いどころを完全に間違っていると思うんだが。
まあ、いいさ。
時間ならいくらでもある。
俺はゾンビだし、飲まず食わずで監視できるしな。トイレにもいかない。
逃げ出すチャンスなんてまずないだろう。待ってりゃそのうち盗賊も根をあげるさ。
それからしばらく――
「……ううう。みず……」
ついに盗賊が根をあげた。子分のほうだ。
きた!
これを待ってたんだ!!
「え? なんだって? なにが欲しい?」
いちおう確認する。へんなところで、また根性出されても困るし。
「たのむ。水をくれ……」
「注文入りましたー! 水一杯ですね!!!」
カップに水をそそぐとソドロに飲ませてやる。
ロープは、まだほどかない。反撃されても困るし。
ゴクゴクゴク。横からダバダバこぼしながらもソドロは水を飲んだ。
超必死。よほど喉が渇いていたらしい。当たり前だけど。
「お、おれにもくれ」
その様子を見てアニキ分のほうも折れた。
水が欲しいと、こちらに向かって口を伸ばしている。
チューしようとしているオジサンみたいで、思わず吹き出しそうになった。
「まいどあり~」
笑いをグっとこらえて商売に徹する。
これで水二杯売り上げなり~。
金属板を見ると、評判が20あがっていた。
よしよし。望みに答えたからな。盗賊もさぞかし満足しているだろうて。
あとはお金か。
そういや、金額を設定していなかったな……。
「じゃあ、有り金ぜんぶってことで」
盗賊のポケットをまさぐると、銀貨が1枚、銅貨が15枚見つかった。
お代として、いただいておくとしよう。
その瞬間、盗賊はすごい顔でニラんできた。
しかし、俺が木の棒を構えると、すぐさま目をそらした。
よしよし、それでいいのよ。
ちらりと金属板を見た。
”メニュー 水” の横に、いつのまにか「金額……時価」と書かれていた。
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