第8話 井戸掘り
なんで今、井戸を……。
そう思いつつ金属板に触れる。
”井戸を掘ろう!”のまま新たな文字が出てくる様子はない。
……理由ややり方を教えてくれるわけじゃないんだな。
親切なようで、あんがい不親切だなコイツ。
まあ、客なんてこねえし、井戸を掘ってても問題ないっちゃあ問題ないか。
酒場なんて水がなけりゃあ始まらないし、井戸掘りは早めにしていたほうがいいかもしれん。
じゃあ、まずは中に水が入っているか確認。
周囲を見回し、石を見つけると、井戸へポイッチョと放り込む。
……音はしない。
やはり枯れ井戸。
つぎは中に降りなきゃいけない。
けど、どうやって降りよう。
……そういやロープがあったな。
近くの木にロープの端をくくりつけると、反対側を井戸の中へと垂らし、シュルシュルと降りていく。
こういうのは得意だ。
なんたって、俺は冒険者だからな。
あれよという間に井戸の底まで辿りついた。
周囲を見渡す。
土や枯れ木や枯れ草が堆積しており、水気は一切ない。
これを取り除けってことか。
ええっと、どうすりゃいいんだ?
とりあえず、何かに入れるか。
ツールに桶があったことを思い出す。
よし、この中に詰めていこう。
まずは枯れ木。
縦に詰めていく。そりゃあもう、ぎっちぎちに詰めていく。
引っぱり上げるとき落ちたら嫌だもんな。隙間に土も入れておこう。
そうして、満杯になったところでロープにくくりつけた。
そして、登る。
ロープにつかまり井戸の外へ。なにせここには俺一人しかいない。
桶を引き揚げて中身を捨てるのも俺がしなくちゃならないのだ。
井戸の外から桶を引き揚げると、中身をドサ~。
また、井戸の底におりていく。
……やべー、これ超たいへん。
いくらゾンビで疲れないとはいえ、さすがに時間がかかりすぎねえか?
桶で掻きだす量を考えると、100や200で済まないかもしれない。
どうしよう? なんかいい方法ないかな。
しばし、考える。
そういや、桶は収納できたな。
そうだ、中身入ったまま収納すりゃいいんじゃね?
それなら引き上げる作業を短縮できる。
外へ出てからもう一度出して、捨てればいい。
さっそく枯れ木と枯れ葉を桶に詰める。
そして、謎の空間に収納すると、ロープをつたって井戸の外へ。
ふう。これでちょっとだけ楽できそうだ。
桶を取り出す。
そして、中身をぶちまけようとして……。
「ありゃ?」
思わず声が出た。
なぜなら、桶の中身はカラッポだったからだ。
「あれ? 中身は?」
桶に入れた枯れ木と枯れ葉がなくなってる。
中身は収納できないのか?
しばし考える。
収納するとき中身だけ落ちた?
試してみよう。
近くの石を桶に入れる。
そして、桶ごと収納。
……石が落ちた気配はない。
ということは?
桶をふたたび出す。
中の石はなくなっていた。
よく見れば桶の内側についた土汚れもきれいになっていた。
もしかして、収納したら中身まるごと消えるのか?
――――――
えいほ、えいほ。
つるはしで土を掘る。
掘った土を桶に入れて収納。
まただして、土を入れて収納。
えいほ、えいほ。
つるはしで土を掘る。
桶に入れて収納。また収納。
作業速度は飛躍的に進歩した。
上へとのぼる手間も、土を捨てる手間もない。
ただ、掘って入れてを繰り返すだけ。
枯れ木や枯れ葉もすでにない。
堆積した土も減り、砂利まじりの固い土の層になっている。
よしよし、いい感じだぞ。
砂利や土には湿り気があった。
水源が近い証拠だ。
さらに掘る。
やがてゴロゴロとした石が多くなってきた。
そして……。
びしゃ。
つるはしが深く食い込んだ瞬間、跳ねた水が俺の顔にかかった。
うお! やったか。ついに!!
つるはしを抜くと、できた穴に水がじんわりとたまってくる。
おお~、感動。
すでにあった井戸とはいえ、再び水が出るようにしたのが俺だと思うと胸くるものがあるな。
じゃあ、もう少しだけ掘っちまうか。
ほこりでふたたび埋もれてしまわないように、やや深めに掘る。
ほうきも使って、土もしっかりと集める。
「できた!」
井戸の側面についたゴミやら草なんかもキレイにとった。
そのころには俺の足首まで水がたまっていた。
おお~、ついに飲み水が。
俺はゾンビだから水は飲まなくても大丈夫なんだけど、酒場に水は絶対いるからな。
さっそく、桶ですくう。
茶色く濁った水が、桶に三分の一ぐらいたまっていた。
「いえい! 井戸修理達成!!」
こうして俺は汚い水を手にいれることに成功した。
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