第4話 あくまで酒場経営だからね

 つぎに金属板に出てきたのはツールだった。

 なにやらズラズラと工具が書かれている。

 斧、つるはし、ノコギリ……


「あ!」


 見ていたら、その上に重なるように文字が出てきた。

 なんでだよ。これじゃあ見えねえじゃねえか!


”ツールが一番大切なんだ!”

”これがないと何も出来ないからね”

”君にやって欲しいのは、あくまで酒場の経営”


 分かってるよ、それぐらい。

 まあ、たしかにさっきは危なかったけど。

 今度は、ちゃんと選んでやるから。

 俺のオヤジは大工だった。子供の頃、俺もよく手伝っていた。

 工具ならだいたい分かるっての。


 はやる気持ちで金属板に触れる。すぐに文字が消えた。

 よし、よし。


 ところがすぐにまた文字が重なってきた。

 オイ! ジャマすんなよ! なんでそうやって重ねてくんだよ!


”貧乏な君は次の10個を選ぼう”

”斧 ツルハシ ノコギリ かなづち カマ ホウキ 桶 ロープ 火打石 ナイフだ”

”これさえあればなんとかなる”

”あとは工夫で乗り切っていけ”


 誰が貧乏だよ。大きなお世話だ!

 たしかに金はなかったけど。冒険者なんかだいたいそうだ。

 金がねえから体張ってんだよ。


 ほんとにコイツ煽ってくんなあ。

 イライラしながら金属板に触れる。また文字が消えて、今度こそツールを選べるようになった。


”斧 ツルハシ ノコギリ かなづち カマ ホウキ……”

”ジグソー 丸ノコ チェーンソー トリマー インパクトドライバー……”


 メチャクチャたくさんあるな。

 知らない物もやたらあるし。

 煽ってくるけど、指示は的確っちゃ的確か。

 これだけあったらどれ選んでいいかわからないもんな。


 書かれていた通りに選ぶことにした。

 というか、他のはポイントが高くて、そもそも選べなかった。

 今後に期待だな。

 で、選んだ10個は、どれも10ポイントで合計100ポイント。

 これでポイントを全部使い切った。

 また金属板に触れる。

 次の指示が出てきた。


”次は設備を……と言いたいところだけど、ポイントがもうないね”

”設備は自分でなんとかするしかないよ”

”だって、君はゾンビなんだからね”

 

 うるせえよ!

 好きでゾンビになったんじゃねえよ!


 あれか? チュートリアルって悪口って意味か?

 まったく。変なもんを選んじまったなあ。

 などと、ぶつくさと文句を言っていると、金属板にさらに文字が。


”環境を整えよう!”

”客を呼び込むにあたって、最低限の見栄えを整えなきゃいけない”


 なるほど。

 たしかにそうだ。客商売なんだから綺麗にしとかないとな。

 キタナイ場所には客は寄りつかない。

 まあ、当たり前だな。


”まずは草刈りだ”

”建物から出てみろ。前に見える石壁の切れ目が酒場の入口だ”

”あそこから客はやってくる”

”せめて、その入り口から建物まではキレイに草を刈っておく必要があるぞ”


 ふむふむ。

 書かれている通りに建物から出る。

 うっそうと茂った雑草たちで石壁の切れ目など、まるで見えなかった。


 ……これを刈れと?

 もう森なんだが?


 というか、ここが酒場なのね。

 いや、うすうす感じてたよ。

 だって、透明な壁があって俺ここから出られねえもん。

 でもさ、さすがにこれはヒドくね?


 振り返ると今にも崩れそうな小屋がある。

 床も腐って抜けているし、窓もないし、扉もない。

 いまどき盗賊だってもっとマシなアジト使ってるぞ。


”まあ、頑張って。休まず刈り続けたら二日で終わるから”

”ゾンビで良かったんじゃない?”

”寝ないで働き続けられるから”


 オイ! ふざけんな!

 ゾンビをバカにすんじゃねえよ!


 チクショー。やってやらあ。

 刈って刈って、刈りまくってやる。

 見てろ。

 ガッツリ稼いで目にもの見せてくれるわ!

 ハッハッハッハー。



――――――



 そう意気込んでいたものの。

 大事なことに気がついた。

 ポイントで選んだツールはどこにあんの?


 キョロキョロと見回しても、それらしきものはない。

 どうすんだよ。素手じゃさすがにムリだぞ。


 などと思っていると、これまた気づいた。

 いつの間にか自分の手にカマが握られていることに。


「え!?」


 なんで? どうしてだ?

 たしか、選んだツールにカマはあったけど。

 拾った覚えなどない。なんでそれが俺の手に?


 わからん。まったくわからん。

 じゃあ、他のはどこ行った?

 たしか選んだのはカマと斧と……。


 ――その瞬間、手にしたカマが斧に変化した。

 え! なにこれ? どうなってんだ?


 しばし固まる。

 ……もしかして。


「ロープ」


 そう言葉にだすと、斧がロープに一瞬で変わった。

 マジか……。


 じゃあ、ナイフ。

 今度は言葉に出さなかったが、ちゃんとロープはナイフに変化した。


 なんだこれ?

 持っているものを自由に変えられるのか?


 やべえ。マジ、スゴくねえかこれ!!

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