女子4人ゆるファンらいふ!

深水えいな

第1話 ゆるふわファンタジー始めます!

「ククク……諸君らはこのゲームに閉じ込められた! 元の世界に戻りたくば、ボスを倒してこのゲームをクリアするのだ! ハーッハッハッハ!!」


 だだっ広いフィールドに不気味な男の声がこだまする。


 辺りはたちまち不安や怒り、悲しみの声に包まれた。


「ゲームに閉じ込められただって!?」

「そんな馬鹿な!」

「この戦いが終わったら、彼女と結婚するって約束してたのに~!」


 嘆く剣を持ったの戦士に、悲しむ黒ずくめの魔法使い。

 槍を持った甲冑姿の大男も、膝をついて泣き崩れている。


 動揺に包まれる人々の中で、四人の少女たちはキョトンと互いに顔を見合せた。


「……だってさ。どうする?」


 赤いボブヘアーに犬耳の少女――メイがポリポリと頭をかいた。


「別に、この四人がいればアイナ楽しいし構わない!」


 金髪ツインテールのリス耳少女、アイナがぴょこんと元気に手を上げる。


「あらあら、最近多いですよね。こういうゲームに閉じ込められちゃうっていう事件」


 長い黒髪にウサギ耳の少女、マヤが可愛らしく小首を傾げる。


「……私は別に構わない。向こうに友達もいないし」


 魔導書をめくりながら、淡々とした口調で言ったのは、銀のショートカットに猫耳の少女、ツキ。


「ていうか、元々ファンタジーの世界で暮らしたかったからラッキーかな」

「だよねぇー! アイナも!」

「私も同じです。現実世界の体は専門病院に運ばれて二十四時間管理されるから別に心配する必要ないですし」

「……みんな何をそんなに焦っているのか分からない」


 口々に言う四人の少女。


 ゴーン、ゴーン。


 ゲーム開始を告げる教会の鐘が鳴った。


「討伐隊を作ろう!」

「俺は騎士団に入る!」

「まずは平原に出てレベル上げだ!」


 周りの屈強な男たちの声が聞こえてくる。


「じゃあ、こうしようか」


 メイが提案する。


「とりあえず、ボスの攻略はあいつらにまかせる」


 その案に、残りの三人は賛成した。


「賛成ー」

「そうですね、私たちが行っても、足でまといにしかなりませんし」

「……じゃあ私たちはどうするの」


 うーん、と四人の少女は考える。


「そうだね、じゃあとりあえず……」


 メイが真面目な顔をするので、残りの三人はゴクリとツバを飲んで、彼女の大きな赤い瞳を見つめた。


「とりあえず?」


「みんなで住む家を作ろう!」


 メイの提案に、他の三人は同時に声を上げた。


「家?」

「家を買ってどうするのです?」

「……どこで買うの」


 んー、とメイは上を向いて考えた。


「細かいことは分からないけど、とりあえず家はいるでしょ」


 残りの三人は、またもや顔を見合わせた。


「いいんじゃない? 四人で住むのも楽しそうー!」

「そうですね、宿屋に泊まるのもお金がかかりますし」

「……うん。野宿は嫌」


 そんな訳で、四人のこれからの方針は決定した。


「まずは家を作る!」


「うんうん! それから?」


「それから? えーと」


 メイは目を泳がせる。家を作ってから先のことは考えていなかった。


「あ、そーだ!」


 アイナがポニーテールを揺らしてぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「はいはーい! アイナはねー、川に行って釣りとかしてみたいかもっ!」


 マユがうなずく。


「いいですね。食料もただで手に入りますし。じゃあ、私はお裁縫でもしたいなって思います。みんなの可愛いお洋服を作りたいです」


ツキがボソリとつぶやく。


「……じゃあ、私は料理。家庭菜園してみたいかも」


 アイナは再びメイの顔を見た。


「メイは?」


「えっ、私!? 私はえーっと」


 メイは上を向き真剣に考えた末、満面の笑みで答えた。


「……よし、決めた。私は、のんびりダラダラと日常系ファンタジーライフを楽しむ!」


 他の三人は顔を見合わせた。


「何それー」

「いつものメイさんと変わらないじゃないですか」

「……でも、それが一番かも?」


「でしょ!?」


 メイはこぶしを握りしめた。


「よしっ! それじゃ、これから四人で家を作って、釣りとか料理とかお裁縫とか家庭菜園とかやって、みんなでダラダラ楽しく過ごすことにしよう!」


「おー!」

「良いですわね」

「……別に、いい」


 そんな訳で、ゲーム世界に閉じ込められた少女たち。


 赤髪イヌ耳のメイ。

 金髪リス耳のアイナ。

 黒髪うさ耳のマユ。

 銀髪ネコ耳のツキ。

 

 ――四人の今後の方針が決まった。


 『この世界で、のんびり可愛いゆるふわスローライフを楽しむ!』



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