序章

第1話

初夏の日は長い、まもなく7時なろうという時刻なのに、


まだ真昼のように明るい。


気温は30度を超えているだろう。


今年は梅雨に入ってからは、殆ど雨が降らない。


そのせいか気温が高くても湿度が低くて、


朝晩はかなり涼しい。


 


その暑い日差しの中を一人の女が、


自転車を懸命にこいでいる。


名前を山本彩と言う。


可成り急いでいるようだ。


額からは玉の汗が流れ、汗が目に入り痛い。


それを手で拭い、走り続ける。


家に早く帰らなくては、そんな思いで、


彼女は急いでいる。


 


家には、仔犬が彼女を待っている。


今年の一月 に、飼い始めたマルチーズのルルだ。


 


今月で8ヶ月になる。


大分大きくはなってきたが、


大人になるにはまだ 少し時間がかかる。


 


エアコンはつけていないので、


家の中は可成り 暑くなっているかもしれない。


締め切っているわけではないが、


開けておいても大丈夫そうな窓は開けてあるので、


それ程室温が高くはなっていないかもしれない。  


保冷材をタオルに包んで玄関に置いてあるので


仔犬は何時も、その上で横になっている。

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