後編 4 裏切りに恨み晴らせず

「ほら! アンタもったら?!」


「デキる訳ねえだろ!!」


 ナミちゃんは毛布に身を隠しながらオレに言葉をぶつける。

「そう!残念だわ!!」


「どういう事だ!!」


「アンタが私を抱けば、アンタもこの世から消し去れたのに!!」

 こう言いながらナミちゃんはオレを睨む。


「ワタシはもう消えるしかない!! アンタが私を!!約束を!!……守らなかったから!!」


「??!!」


「ワタシはオトコ達によって凌辱され殺められた女達の血と涙の結晶!! だからワタシが泡と消える時、ワタシを抱いたオトコ達も泡となってこの世から消える!! 人々の記憶からも!!」


「???!!!」


「でもワタシがこの世で一番憎いのはアンタ!! ワタシを!!ワタシ達を救って欲しいとの願いを込めて、あの日、アンタを死の縁から救い出してあげたのに!! アンタはそれを踏みにじりワタシを平気で裏切った!!」


「違う!! そうじゃない!! オレは!!……」


 こう口走るオレにナミちゃんは高笑いした。


「そうやって小ズルく逃げるのは父親アイツの遺伝かしら? 良かったわね! ワタシは憎いアンタの為になる事を、これからしてあげるわけだから!! 邪魔モノをその記憶ごと全て消し去ってあげる!!」


 そう叫んだ後、ナミちゃんは一瞬顔を背けて……海に向かって体を滑らした。

 ナミちゃんの体は……波に触れた足先から泡を吹き、ついには全てが泡となって海に消えてしまった。


 ほんの十数秒の事が……

 オレには果てしないスローモーションに見えた。


 けれども、オレが今見たものは……


 ……

 ……


 えっ?!


 オレの右足首……


 ここでケガしたんだっけ?


 あれ、何でオレ


 ここに居るの??



 ってここどこよ?!



 ……ああ!『エッチ岩』かあ~


 このランタンの明かりじゃ牡蠣とれねえなあ


 帰ろっ!!


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