第49話 VS魔人
魔人を倒す方法は主に二つ。
その身に宿る魔力を全て奪い尽くす。もしくは身体を跡形もなく吹き飛ばすか、だ。
どちらも難易度は高い。だが
ならば魔力を奪いながら、身体を消し飛ばす準備を進める。これが最善だ。
「ホタル。俺が合わせる。好きに動いてくれ」
「……わかりました。アンプルはどうしますか?」
俺たちは魔人を見据えながら一切の油断なく会話する。
アンプル。それが示すのはホタル専用の増血剤、
俺の答えは一つだ。
「……使ってくれ」
そもそも三十分なんて長い時間を掛けるつもりはない。
ここからの戦いは常に全力。極限状態を強いられる。でないと一瞬で殺されるだろう。
それにおそらくだが、魔人はまだ本調子ではない。
ヤツは産まれたて。いうならば
だが三十分もすれば完全に覚醒する。そうなったら俺たちに勝ち目はない。
だからこそ本調子になる前に殺す。それが絶対条件だ。
「わかりました」
ホタルが頷き、懐に手を伸ばした瞬間、魔人が動いた。
俺は前方向の重力を全力で強める。これは正規兵や
だがそんな超重力下でも魔人は潰れなかった。ただ、僅かに速度を落としただけだ。
ホタルが懐に伸ばした手を引っ込め
だから俺は叫んだ。
「そのまま使え!」
代わりに重力を操作し、ホタルの身体を後ろに、俺の身体を間に割り込ませる。
そして魔人の拳を右腕で受けた。
「ぐっ!」
凄まじい衝撃だ。
だが水晶と化した右腕ならば耐えられる。それに……。
……触れられればこっちのもんだ。
俺は魔人の拳から魔力を吸い上げる。
しかし魔力を奪われていることに気付いた魔人はすぐに離れた。そして再び姿を掻き消す。
先程よりも遥かに早い速度。到底目で追うことができない。
……だが!
既にそう動くことは計算済みだ。
俺は魔人が姿を掻き消した瞬間、膝の力を抜いてしゃがみ込む。次の瞬間、風切り音がして頭上を拳が通り過ぎた。
「
そのまま目の前にいる魔人に向けて引き金を引いた。
稲妻を纏った銃弾が放たれる。そして着弾すると同時、あたり一面に雷撃を撒き散らした。
常人ならばそれだけで感電死するほどの雷撃。
だが魔人には効かないだろう。はなから殺すことが目的ではない。
いくら魔人とはいえ、その身には筋肉を纏っている。ならば動きを鈍らせることはできるはずだ
その瞬間、辺りに無数の血剣が現れ、その切先を魔人へと向けた。どうやら無事、
「頼んだ!」
「うん!」
俺はホタルの行動を阻害しないように重力を解除する。
するとタラリと鼻血が垂れた。きっと脳を酷使し過ぎているせいだろう。
だけど気にしている余裕はない。ここが正念場だ。
俺は垂れてきた血を拭うこともせずに呟く。
「
俺はホタルと血剣の合間を縫うようにして
狙うは心臓。魔力が一際強く渦巻いている部位。
そこが重要な部位なのは間違いない。おそらく心臓を壊せば魔人は決して小さくないダメージを受ける。
その隙に魔力を奪えれば勝利に近付く。
ホタルが血剣と
俺は必ず当たるタイミングを見計らい、引き金を引いた。
飛び出したのは鋭利に尖った岩石の銃弾。その銃弾は赤熱するほどに回転し、その貫通力を高めていた。
ともすれば自壊するほどの回転量。しかしこの銃弾を構成しているのはただの岩石ではない。
魔術によってその密度を人工的に高めた岩石だ。消費魔力は多いが、その威力は凄まじい。
その速度は凄まじく、刹那の内に魔人へと届いた。
岩石の銃弾が直撃し、魔人の心臓――赤黒く輝く
「くっ!」
そのまま破壊する気だったが上手くいかなかった。
だけどもう一発撃っている時間はない。魔人の再生速度ならば間に合わない。
だから俺は仲間の名を呼んだ。
「ホタル!」
「はい!」
露出した心臓目掛けて、ホタルが神速の突きを繰り出した。
……獲った!
俺はそう確信した。
しかしホタルの
奇怪な文字が心臓を守るようにして記述されたのだ。
直後、硬質な音が響き、
「魔術……!」
魔人の心臓を取り囲むようにして障壁が顕現していた。
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