第16話 少しずつ

 目の前にある広大な土地。周りに住んでる方々の期待の目、さすがに無視はできないので、魔法で資材を作り建物を作ることにした。とりあえずは宿泊できるように小さな家のようなものを作り、その横に外壁を作って、大きな部屋をいくつか作り大きな建物を作り始めた。


 魔力が増えたと言っても魔法で作れる資材も多くはないので、休みながら出来るだけ頑丈に作っていく。

また魔獣や戦闘になった時に近隣住民が避難ができるよう食料等の備蓄量も多めにする予定だ。

しかし、どう考えてすぐに完成するようなものではない。今は増えていく人口に対する食料などの入手の問題も有るので、宿泊場所と物を保管出来る場所を作りそれ以外は暇なときに少しずつ作っていく事にした。


 出来ていく建物を見ながらモモは

「ここが私たちの新居になるのね」と嬉しそうだった。

「私たち個人の部屋も有るのか?」とツバキも興味あるみたい。

「私はセートさんと同じ部屋でも大丈夫ですよ」安定のサザンカ……

「太陽の光の本拠地にしてもいいかな?会議室とかも欲しいな」珍しく笑顔のサクラさん

「私たち親子も完成したらこちらに住めるのですか?」ローズマリー親子はどちらかと言うと良いのかな?と言う感じの表情だった。

「お仕事が嫌ではなかったら、こちらに引っ越しても引き続きお願いしますね」と返事しておいた。


 近くで見ていた人たちにしてみたら、何もない所から魔法で資材を作り建物を作り出し短時間で住む部分や大きな部屋が出来て行く。そんな事が出来るのはやはり勇者様だったのだと騒ぎになっていた。


 一方また魔獣の巣が見付かったのでセート達は食料入手に向かった。見付かった敵は弱かったので洞窟になっている巣の中に何かないかと探してみた。結果としてあの魔法の鉄と人間の子供が一人見付かった。子供は衰弱していたため発見後即撤退した。移動中よく見るとその子供の耳が少し長い。

これってよく話に出てくるエルフでは?モモに聞いてみよう。

「モモこの子ってもしかしたらエルフ?」

「私の大人のしか見た事ないけどこの耳の特徴はそうだと思う」

「エルフって人間が住む所でも嫌がらないのかな?」

「分からないけど放置しておく事も出来ないしね」

「そうだな。人の少ない小屋の方に行くか」

「そうだね」

小屋に着くとすぐに子供は気が付いたみたいだ。

「ここは?人間につかまったのか?我が一族と争いたくなければ開放しろ」

「戻るところが有るならどうぞ。ただもう少し休んでからでないと危険です」

「なんだその魔力?お前は……いや貴方はもしかして勇者様?でも私の知ってる勇者様と魔力量が違い過ぎる。神の使徒様ですか?」


「いや普通の異世界人です」

「異世界人が普通?そんなの居ないだろう?しかしその魔力は我々の一族の長老とでも比較にならない量だぞ。良かったら私と結婚して我が一族の長にならないか?」



これもはしかしたら相手は子供ではない説が浮上中。

「貴女はその一族の代表の方の親族でしょうか?」

「私が代表だ。長老と呼ばれるものは別に居るがその方々は意見を出したり不在時に代行する位だ。魔力量でわかるだろと言いたいが貴方となら比較対象にならないな。今のこの姿は魔力の節約中なんだ。魔獣の巣を発見したので近付いたら囲まれてしまってな。体を守るなら小さい方が消費魔力が少なくていいからな。」

「魔法で体の大きさも変えれるのですか?」セートは驚いて聞いた。

「出来ないのなら教えようか?二人きりで。魔力が戻れば元の姿に戻れるしな。まあ自慢ではないが一族でも一番美しく”姫”と呼ばれていた私だ。そうだ名乗ってなかったな。名はコデマリ。貴方の伴侶となるものだ。」


「「「「セートは私達と結婚するの」」」」


「人間か……まあ人間からしたら彼は魅力的だろう。見る目は正しいな。別に人間が何人来ようと気にしないぞ。私が正妻になれば後は好きにしていい」


「コデマリ、申し訳ないがこちらに居る方々と先に結婚の約束をしている。それに誰を正妻にとかも考えていない。共に生活して結婚を申し込んでくれたので結婚する。貴方の事はまだ何も知らない。今すぐにお受けできない」


「まあそういうところも悪くないな。だが私の本当の姿を見たら考えが変わるかもしれないぞ。エルフでも特に美形と言われた私だ。魔力さえ戻ればここに居る女性たちに負ける事はないぞ」


「魔力か?少し渡そうか?」


「魔力の受け渡しなど超難関の魔法だぞ、そんなこと出来……あっ!何か入ってくる。熱い……体が熱いの。こんな大きいの(魔力)が私の中へ……深い所まで入ってくる……。もう駄目我慢できない。元に戻る……って戻れた。いやあのありえないんですが。


その魔力を消費しますので出来たらもう一度魔力を補給いただくとかは……無理ですか。残念です。あれはとても気持ちがい……ではなく興味深い魔法だ。私も知りたい。そう知りたいのだ。もう一度体験したいわけではないぞ」


 その言い訳している間誰も話さない。セートも魔力を渡すときにコデマリの手に触れたがそれを離す事を忘れていた。本当にコデマリは美しかった。しかしセートが気になったのは

”服も一緒に大きさ変わるんだ。破れるのとかは期待してなかったよ。本当だよ”


この世界美形が多いのでいつの間にかセートは慣れきていたのもあった。

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