第22話 白姉さま

◯ヒビキ

 光乃君様と同じ狐獣人様だ。なんて美しさ……

◯サシミン 

 釧路に狐獣人の善性イレギュラーの方がいらっしゃったとは

確かに釧路フィールドは狐天国だからいてもおかしくは無いか?

◯ヒヒノ 

 髪色等違うが雰囲気がまるで光乃君様のようだ。皇室マニアな私が言うんだ間違い無い。


ヒビキさんが真面目なコメントしてる!?


リスナーのみんな光乃君様とやら崇めてるけど誰だっけ?

もしかして私があまり興味無かっただけで有名なのかな?


「【翻訳】話し合いをするにあたってその丸いのは少々目障りだな。

何処かに情報が漏れる魔導具だろう?

私に都合が悪い。

なに殺しはしないし二人を傷付ける事無く返す事を約束しよう」


と言葉を挟む事無く私達のメアリーが両断されていた。


あれ私も壊すチャレンジして見た事あるけどマジ硬いんだよね。今の私じゃ傷付ける事は出来ても壊すのは無理でした。


「【翻訳】これで気兼ねなく喋れるだろう

さっきも言ったようにその黒狐を私に渡して貰いたい

勿論タダとは言わない

礼もしよう」


すげ〜一方的に圧かけてくるなぁ


美人だからすんごい首縦に振りたくなる

女の私でもほいほい言う事聞きたくなるって凄いね


なんか魔力感じるし言う事を聞かせやすいスキルの可能性もあるかも。


『お返事の前にどうしてその子なんですか? 

私が先に目を付けたんですけど

黒狐は他にもいると思いますが』


一応マリナが聞いてみる

他狐の空似かも知れないしね

そもそも私だし


「【翻訳】その子がただの狐じゃない事なんて勿論分かってる。

一匹の獣だけじゃなく複数それも様々な獣の煮凝りの様な匂い、それと同じく様々な魂の残滓の気配を感じる。

邪な気配もだ

遠くで見ていた時は思わなかったがここまで近づけば流石に分かる。人の形をしているがお前達二人からも似た匂いがするな。

まあ、お前達と比べるとその黒狐は特にそれが濃い。濃厚で匂いに色が付くレベルでプンプン臭うておる」


私そんなに臭ってた!?

ダンジョンから出て毎日お風呂入ってますよ失礼な!


「【翻訳】それに黒狐を知り合いの子と言ったのは、そう伝えた方が楽に連れて行きやすいと思ったからそう言ったまでよ

人は情に弱いと伝え聞くしな」


意外とイヤな奴っぽいけど包み隠さないのでプラマイゼロかな?


『あなたレベルの存在であれば隠し立ては無理ですか。

もう色々バレてそうですね。

それなら余計にこの子は渡せません!

私から大切な存在を引き離す事はしないで欲しい』


そうマリナが言ってくれたよ!

割と窮地なのに嬉しさが勝っちゃうね。


「……………………」


狐獣人さんは暫く黙ってこちらの様子を見ている


ちょっとソワソワしちゃうよ


「【翻訳】君たちの気持ちは確かに受け取ったよ。

精査して見たが君たち悪意は感じない。

邪な気配はあるが何故かそれはクリアだ。

例えるなら純粋な漆黒そんな感じだ。

だから私は自分のカンを信じる事にした。

君たちに誠意を見せたいから秘匿された情報ではあるが真実を話そう。

信じて貰えないかも知れないが嘘ではない。」


一呼吸置いて続きを語りだした


「【翻訳】私がこの狐を求めている理由だが、我らが神たる母が呪いの肉毒に侵されていてな。

治療魔法すら全く効かん、あらゆる霊薬や考えられる全ての治療を施したが治まるどころか肉毒が浸食していくばかり」


本当か分からないけど、わざわざ喋らなくて良い情報を教えるって事は私を連れて行く気なんだろうね


マリナ達をちゃんと納得させて連れて行きたいのかな?


正直、実力差ありすぎてどうにもならなそうだし受け入れるしか無いけどね


まあこの狐獣人さんが善よりなのは事実っぽい

感覚的に分かるよ。ちょっとやり方強引だけど


『それがなんで黒狐を連れて行く事になるんでしょう?』


「【翻訳】それはその狐がその肉毒その物で構成されているからだ。

その毒に侵されていて生きていける生命はいない筈だった。

神ですら抵抗虚しく徐々に蝕まれ躰を内から削られるのだ。

だがソレは全身肉毒でありながら普通に動いている

だからこそ解明したいと思うたのだ。

それが母を助ける近道だと信じている」


んー?


話はちゃんと聞いたけど私毒作った記憶無いよ??


訳が分からないから姿を黑狐から人に変えて直接話す事にする。


ゴキゴキゴキと音を鳴らせながら強引に身体を作り変える。


魂をマリノボディに移し替える方が早いけどおどろおどろしい演出も必要だよね!


ただでさえ美人狐獣人の気迫に負けっぱなしだし


「あー始めまして白姉さま、私は宝生マリノと言います。

抱きついている可愛い美人妹の姉です。

今は姿が違いますけどね双子なんですよ〜

それで早速本題に入るのですが私毒作った記憶ないですよ?」


本当に記憶がない。


肉体の変形を見たら流石の美人狐獣人さんもビックリしてるよ


「【翻訳】……予想外の展開だがまあいい……

その肉体そのものが毒なのだ神族を含むあらゆる生物に対する」


へー


分からない事が分かったね


「神族ってのが良く分からないんですが……

それと私に何をやって何をする予定だったんですか?

後私も治療魔法的な何かは可能ですが試して見ます?

今の所人間やモンスターに対して毒になる事無く適応していますよ」


提案して見たよ


「【翻訳】神たる母に実験する事など出来ないからな。周囲の反対も強いし私も許さない

全身肉毒な存在なら原因を解明する為に色々出来るだろうと思ったのだが、ここまで知能があるとは予想外だな

獣畜生なら兎も角、知的存在となると安易に扱う事も出来ない。

智慧を持つ者を無理に連れて行くのは私の道理に反すがコレばかりは譲れんから無理にでも付いて来て貰うことになるが」


この美人さん……本来はモルモットとして私使う気満々だったのか……


こわ!


「私で実験するより私に治療させる方が良いと思いますよ?

今までの試行錯誤の結果、私は様々な生物を拒否反応無く肉体を繋げられます。

最近の研究で生物と無機物の融合も出来ました。

人にモンスターの肉を、この場合肉毒と言われる私ですね。それを人の肉として馴染ませ融合させる事が出来ます。

私の肉を取り込んだ物の健康状態を魔導ネット(SNS)で確認していますが様々な医療機関で検査されても健康に問題は起きていません」


アピールタイムだよ!

態度は軟化してるけど圧倒的強者による強制で色々やらされるには変わらないだろうし今後の立場を良くする事は大事!


母を助ける為だもの、千載一遇のチャンスを手放すタイプには見えないしね


「そこに居るドリーは元はレッドゴブリン天狗と言うモンスターでした。そこに様々な改造を施し骨格は金属を多く含むスティールスケルトンの骨+少量のミスリルと高純度の魔石を組み込み、運動性能の高い森林大虎の筋肉と入れ替えています。

私達の中で最高の戦闘力を誇ってますよ!流石に白姉さまに敵いませんが」


更にアピール!


「肉の事は肉の専門家たる私に任せて欲しいです。

見てないので完治出来るとまでは言いませんが該当箇所を切除したり、代替の肉体に魂を移し替えたり、肉毒の箇所だけ切り離したりと病気の進行を遅らせる事は出来ると思います!」


アピールタイム終了!


どうだ!


「【翻訳】たしかに私達が今まで二千三百年程やって何も結果を出せてないのだからやらせてみるのは大事かも知れないな…………

可能性があるのであればどんな事でも試したい」


でしょでしょ!


って二千三百年!?


長生き過ぎる……


「因みにお母様は今どちらに」


「【翻訳】母はダンジョンの外だ」


へえーまあ見るからに善性イレギュラーだし知らない内に外に出てたんだねぇ〜


「あと最初に言ってたお礼期待していいんですか?

私がついていく品とお母様を回復した時にも報酬欲しいですよ!」


強引に巻き込まれるんだし貰えるものは貰いたい


黑狐さんテイマー計画が台無しになって私結構プンプンしてますよプンプン!


「【翻訳】期待してて良い

どちらにしろコレを渡さないと連れて行く事は無理だしな

ほれ」


そう徐ろに投げたそれを私は即【鑑識眼】


鑑定

SS級アーティファクト 銀河の宝眼

所持者 無し

次元を渡る時、世界からの干渉を無効化する

神の干渉を軽減する


おお!

SS級アーティファクトくれるの!?

ラッキー!


褒美に釣られてホイホイ付いていく事に決めたよ


勿論マリナ・ドリーの安全は【血魔法:血判】で確実に保証して貰った!


契約内容は軽いから白姉さまも拒否はしなかったよ。

これで憂いなく拉致られる事が出来るね!

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