45話 清掃係

 根っからの夜行性である私は朝起きるのが辛い。平日の起床なんてもってのほかである。そんな中、学校から課せられた罰により、私はいつもより朝早くに起き、学校に向かっていた。辛さには更なる拍車がかかっていた。早く来て、校内清掃するなんて、うちの美化委員ですらやってない。

 「サボりたい」という気持ちが脳内にチラチラよぎりつつも、私は結局いつもより早い時間に学校に着いていた。偉い、私。

 とりあえず、私は教室に荷物を置いて、指定場所に向かった。どうせ須賀はサボりだろうと期待していなかったのだが、私が着いた頃には、もう向こうは掃き掃除をしている最中だった。あら。意外。

「おはよう」

 とりあえず挨拶をすると、須賀は手を止めこちらへ振り向いた。

「おせーよ」

 そう言って、須賀はまた手を動かした。相変わらず、憎たらしい奴だ。しかし、なぜだか、以前より威圧感は感じなかった。

「ごめんごめん。早いね。いつ来たの?」

 私は箒を取り出して、さらに話しかけた。

「さっき」

「そっか。とりあえず、今日から暫く頑張ろ」

「おう。次はもっと早く来いよな」

「わかったってば。私、塵取り持ってくるね」

 私は塵取りを取りに行った。ところが、それが見当たらない。普通セットで近くに置いておくべきだろ。すると、耳上で突如声がした。

「上」

 私が振り向いた最中、須賀は後ろから手を伸ばし、掃除用具諸々が入っていたロッカーの上に置いてあった塵取りを持った。同時に、私の目には浮き上がった喉仏が飛び込んできた。あまりにも近距離でびっくりしていたところ、手を掴まれ、無理やり塵取りを持たされた。ご、強引な奴だぜ!


 私は塵取りを持ちながら、須賀が入れたゴミが増えていく様子を見ながら、ふと思い出した。

「そういえば、あの後、浜田先生とまだ喋ってたけど、何話してたの?」

 須賀は脳内の記憶を辿っているのか、返事が返ってくるのにタイムラグがあった。

「大した話じゃねえ。親について色々言われただけだ」

「そうなの?」

「おう。まあ、そんなことどうでもいいだろ。早く終えようぜ」

 須賀は箒を戻しに行った。おそらく聞かれたくなかった話題なのだろう。私はしまったと思ったが、それを挽回できるほどのコミュニケーション力は持ち合わせていない。

 どうしようか少しあたふたしているうちに、須賀はそのまま箒をしまい、教室に戻っていってしまった。私はゴミが溜まった塵取りを持ちながら、そこに取り残されていた。

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二次元にガチ恋してた私が現実で彼氏を作るまで。 ぐうたら者 @gutaramono

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