27話 過去

 私は放課後に南を誘って、学校近くの公園で話をすることになった。

 米屋と辻は授業中に隣の席であっても、お互い口を聞く様子もなく、授業が終わってからもそれぞれ別々に帰ってしまった。そのため、私たちと話す猶予は与えられず、今回は私と南の2人のみの会話となった。

「で、あの時、何があったのよ?」

 南は英語の授業中にあったことから、異変を感じとり、どうやら私たちの様子を伺っていたらしい。そして、南も黒崎くんと同様に、なんとなく何があったのか察したような雰囲気で、事実確認をするように私に何があったのか聞いてきた。私はあったことを全て話した。南は頷き、理解した様子だった。

「南はこのことに気づいてた?」

 私が尋ねると、南は暫く間を置いて、やがて心苦しそうに頷いた。

「うん」

「どうして黙ってたの?」

 それに対し、南は体をびくっとさせ、申し訳なさそうに私から顔を逸らした。自分でも嫌な言い方をしてしまったと思った。ニュアンスとして、もう少し柔らかく、良い表現があったのではないかと自分を責めた。

「ごめん、ちょっと嫌な言い方だった」

「ううん。波は悪くないよ。気づいてたけど言わなかったのは、同じことを繰り返したくなかっただけ」

「同じこと?」

 私は尋ねた。南は深呼吸して、ゆっくりと話し始めた。

「ちょっと話すと長くなるけど、前にさ、米屋の家に遊びに行ったの覚えてるよね?」

「うん」

「そこでさ、恋バナを私と米屋に聞いたの覚えてる?」

「えーっと…。ああ、覚えてるよ」

 確か米屋も南も中3の時に付き合ってる人がいたって言ってたような…。米屋のエピソードは色々聞いたが、南のはあまり深掘りしなかった記憶がある。

「中3の時に付き合ってる男子がいたのは前にも言ったよね。じゃあ、仮にそいつをAとしよう。Aとは最初友達同士だったんだよね。私たち以外にもあと2人、男1女1で友達がいてね。あ、男1はB、女1はCにするね。で、4人で仲良くやってたのよ。そこで、ある日。私がAから告白されたんだよね。正直、私はAのことを恋愛的には見たことなかったけど、当時の印象として、周りに結構カップルがいて、楽しそうにしてたから、軽い気持ちで付き合うことにしたんだ。勿論、Aにはそのことを伝えて、承諾してもらって付き合ってた。それで、隠しておくのは良くないと思って、B、Cにも付き合うことを伝えたの。2人はおめでとうって歓迎してた。時々冷やかしもあったりして、関係性は交際前と後であまり変わらなかった。だから、これからも仲良く過ごせると思ってた。だけど、それは違った」

 南はスカートの裾をぎゅっと掴んだ。当時のことを思い出して、苦しんでいるのがわかった。しかし、南は話を続けた。

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