19話 疑心暗鬼

「辻こそ、どうしたの?」

 私は問いかけた。

「いや、よくよく考えたら、1人でコップ4個持ってくるの大変だろうなって思って来た」

 そう言って、辻はコップを2つ持った。

「それはどうも。2人は?」

「今頃、米屋くんが絡まれてるんじゃないかな」

 なるほど。つまり、私と同じく逃げてきたってわけか。

 私は理解して、うんうんと頷いていると、辻は黒崎くんがぼーっと突っ立っているのを見ていて、私はハッとした。

「あ、そうだ。どこまで話してたんだっけ」

 私は黒崎くんに聞くと、彼は言った。

「いや、また今度でいいよ。それじゃあ」

 そうして、黒崎くんは早々と去っていた。なんだあいつ。

「黒崎と話してたんだな」

 辻は彼の足取りを見ながら、メロンソーダを飲んで言った。

「そうそう。なんか、私たちの友情を疑ってたよ」

「どういうことだ」

 辻は意味がわからないという顔をしていた。

「なんか、男女の友情は成立しないって自論を掲げてたね」

「がはっ!ごほっ」

「大丈夫か!?」

 辻はむせていた。メロンソーダは刺激が強かったかしら。

「へ、へいき」

 彼は喉の調子を整えながら言った。

「でも、もし友達に好きな人ができたら、私だったら教えてほしいなって思うね」

「どうして?」

「だって、なんか隠し事されてるみたいで悲しいもん。それに、私にいつも協力してくれてるから、私だってできることなら協力したいし」

「そっか」

 辻は理解した様子だった。

「うん。だから、辻も何かあったら教えてね」

「うん」

「まあ、うちらは男女の友情成立してるし、問題ないよね」

 私が言うと、彼は頷いた。






「成立してるよな。そうだよな」

 辻は自分自身にそう言い聞かせていた。

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