18話 男女の友情

「みんな〜!盛り上がってる〜!?」

 私たちは南に呆気を取られ、控えめにいぇーいと反応を返した。カラオケに来て、30分。部屋は、もはや南の独壇場となっていた。

「ほら、ちゃんとマラカス振って!」

 南が言うと、私たちは急いで手に持ってたマラカスを振った。言いなりである。

「次は私の十八番でーす!」

 すると、バラードのイントロが部屋中に流れ出した。私たちは、バラードにしんみりして静かになっていた。

 ではなく、もはや疲れて静かだった。


 私は南が歌に集中している最中、みんなの飲み物を持ってくる係に自ら立候補して、部屋を出た。そうです。逃げたんです。

 とりあえず、みんなメロンソーダでいいよなと思いながら、私はコップにそれを注いでいると、後ろから声をかけられた。

「あれー?偶然」

 振り向くと、そこには黒崎くんがいた。彼は私服だった。中々、オシャンである。

「友達と?」

「うん。そっちは?」

「俺はヒトカラ」

 1人で歌うのが趣味なのか。私は新たな情報を知った。

「友達ってことは、米屋と辻も一緒にいるのか?」

「そうだけど」

 彼はへーと言いながら、こそっと私に耳打ちをした。

「ずっと気になってたけど、ここだけの話、付き合ってるのか?」

 主語と目的語がないぞ。私は中学の時、英語の先生に言われた言葉を思い出した。

「誰が誰と?」

 私が聞くと、黒崎くんは言い直した。

「君は米屋か辻と付き合ってるの?」

 何を言い出すんだね。君は。私は首をブンブン横に振った。

「じゃあ、南さんがどっちかと付き合ってるの?」

 なわけあるか。急になんだ。

「それもないよ。何でそう思ったの?」

「いやー。俺はさ、男女の友情は成立しないって思ってるから」

 なるほど。怪しんでるわけか。

「まあ、わかるっちゃわかるけどさ」

 少女漫画とかでありがちだもんな。三角関係とかね。たまに、それ何角関係!?ってなるときもあるけど。

「だろ?」

「うん。でも、例外もあるよ」

「そうか?」

「うん。逆に、黒崎くんは女友達のことみんな意識しちゃうわけ?」

 私が言うと、黒崎くんは否定した。

「いや、元々女友達いないし、それに、俺恋愛興味ないからさ」

 彼氏作り作戦、1人目失敗じゃん。上手くいってたと思ったのになあ。私がしょげていると、彼はさらに話した。

「でも、米屋とかバレバレだよね」

「は」

「え。もしかして、気づいてない?」

 黒崎くんは呆れた表情で言った。何に気付いてないと言うのか。

「あ、でも、気づいてたら友達やってないか」

「どういうこと?」

 私は黒崎くんの顔をじっと見つめた。彼は口をゆっくり開け、言おうとした瞬間、

「何してんだ?」


 そこには、辻がいた。

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