17話 消しゴムの行方

「なにこれ。このキャラかっけえー」

「…へ?」

「男の中の男って感じだなー。俺もこういう感じなりたいわー」

「はあ」

「ごめん、少し借りるね」

 そう言って、黒崎くんは私の消しゴムを持って前を向いた。なんか、大丈夫だったっぽい!というか、よくよく考えたら、オタクに引く奴こっちから願い下げだったわ!

「ありがとー」

 書き終えたのか、彼は消しゴムを机に置き、お礼を言った。

「いえいえ。何書いてたの?」

「あー今日ね、日直だから学級日誌書いてたんだよ」

「なるほど」

 じゃあ、明日、私が日直やんけ。やだなあ。

「というか、久々に会話したよな。1回隣の席になって、少し話したことはあったけどここまで話したことはないよな」

「うん」

「これからも話しかけていい?嫌じゃなければ」

 黒崎くんは恥ずかしそうに言った。

「嫌じゃないよ!全然」

 むしろ、ありがてえ!

「そっか。じゃあ、また機会あれば話すわ!」

 そう言って、黒崎くんは前を向いた。


 あれ、なんかいい感じじゃん!?


「いい感じじゃん!」

 南はノリノリで言った。米屋も辻もやや興奮気味だった。私は朝あった出来事を彼らに報告したのだ。我ながら、自分でも初日からこんな話せるとは思っていなかったため、出だし好調である。

「他に黒崎くんと喋った人いる?」

 私が言うと、すぐ辻と米屋が手を挙げた。

「俺たち、体育の授業中、チームが一緒になってそこで少し話した」

「例えば?」

「一緒のチーム初めてだねーとか…」

「あとは?」

「…」

「おい」

「しょうがないだろ!俺、男と喋んないし」

「俺もそもそもコミュニケーション能力低いし」

「男ども、しっかりしろ」

 南は叱責した。ほんとだよ。1番期待してたのに。てか、全然喋ってないのになぜ自信満々に手を挙げた?

「ちなみに私は結構話したよ」

「お!南は何話したの?」

「趣味の話は勿論したし、あとは部活のこととか」

「なるほど。趣味は何だったの?」

 米屋が聞くと、南は言った。

「カラオケらしい」

「カラオケかー」

「歌上手いのかもね」

「たしかに」

 次々と私たちはコメントを漏らした。そこで、南は挙手をした。

「ということで!これから4人でカラオケ行かない?」

「急だな」

 辻は言った。

「相手の趣味を理解するのも大事でしょ?それに、黒崎くんと喋ってたら、単純にカラオケ行きたくなったー!それに、私マイク持つの好きなのよ」

 南は言った。個人的な理由すぎる。けど。

「私も久々にカラオケに行きたいかも」

 私が言うと、米屋、辻も賛成した。

「まあ、確かに。俺は行くのありだな」

「うん。俺もみんなが行くなら行くよ」

「よしゃー!行こうぜー」

 こうして、私たちはカラオケに遊びに行くことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る