12話 カメラの映像

 諸々の出来事が解決した次の日。私が教室に入ると、それに気づいたクラスメイトたちはそこへ押し寄せてきた。

「昨日、大丈夫だった!?」

「放送聞いたよ!興奮したなぁ」

「結局あの後どうなったの?」

 次々と迫ってくる生徒たちをうまく交わしながら、私はなんとか自席に着席した。どうやら、南、米屋も同じ状況らしく朝からご苦労である。もっくんは朝練だからか、まだ来ていなかった。同じ場に居たとはいえ、放送で触れられなかった辻に関しては周りに人だかりはできておらず、ホラー雑誌を読み漁っていた。うん?待てよ。




辻来てるじゃん!!!


「辻!おっすおっす!」

 私は辻に声をかけると、彼は顔をあげた。

「ああ」

「おはよ!今日学校来たんだ!」

「おう」

「それホラー雑誌だよね。こないだ本屋さんで平積みになってるの見たよ」

「そか」

 省エネか。もうちょい言葉の数増やそうぜ!今んとこ全部2文字でしか返事してないから。

 2人で話していると、周りの人だかりがなくなった。どうやら米屋が開放されたらしい。彼はぐったりしていた。

「よお。お疲れ」

「おう。大変だったぜ。それにしても、なんで、波は色々聞かれないんだ?」

「米屋が詳しく知ってるよって言ったら、みんないなくなった」

「おい!どうりで、俺ばっかりに人が来るわけだ!」

 南もおそらく私と同じ手を使ったに違いない。今、彼女は呑気に惣菜パンを口に運んでいた。

「そういえば、辻くん、今日来てくれたんだね。いつも気になってたんだけど、来る日と来ない日、どうやって判断してるの?」

「部活がある曜日に行くのが条件としてあるけど、それ以外は気まぐれ」

「そうなんだ。じゃあ今日も部活あるんだ」

 私が聞くと、辻は首を横に振った。

「え?違うの?」

 さっきと言ってること違うんだが。私と米屋が頭にハテナマークを浮かべていると、辻は言った。

「波に会いたかったから」

「「はあぁぁぁぁぁ!?」」

 私と米屋は叫んだ。クラスメイトたちが怪訝な様子でこちらを見つめていた。私は赤面してしまった。色々な恥ずかしさが込み上げた。

「変なこと言ったか?」

 辻は不思議そうだった。落ち着け。自分。まずは理由を聞こうじゃないか。私と米屋が思ってるような理由じゃないかもしれないじゃないか。

「な、なんで会いたかったの?」

「昨日撮ってたカメラの映像を見せたくて。成果があるかはわかんないけど」

「な、なるほどねぇー」

 とんだ早とちりである。まったく。彼氏作りを始めてからというものの、恋愛に敏感になってる気がする。よくないなぁ。だけど、米屋も敏感だな。あいつは彼女作りしてないのになんでだ?おませさんなのか?

「カメラの映像って?」

 米屋が聞いた。そうか。米屋は知らないんだった。私は辻の所属している部活のことと、カメラの映像について説明した。

「なるほどなぁ」

 米屋は理解した様子だった。

「で、今日の放課後なんだけど。波空いてたりする?」

 辻が聞くと、私は答えた。

「うん。掃除係だから終わってからでいいなら、私は構わないよ。実は気になってたんだ。見れて嬉しいよ」

 私はわくわくしながら言った。正直、何も写っていなくてもそれはそれで構わない。こういったものの検証過程が見れるのは珍しいし。

「ありがとう。じゃあ、今日の放課後、部室集合でいいかな」

「りょーかい」

「お、おい。ちょっといいか?2人で見るのか?」

 米屋は焦った様子で聞いた。

「そうだけど」

 辻は答えた。

「お、俺も見ていいか?そ、そういうの俺も好きだから」

 米屋は辻に一生のお願い並に頼み込んだ。米屋もホラー好きなのか。初耳だ。勝手に苦手そうだと思ってたけど。

「ああ。いいよ。よかったら、波も米屋くんも友達とか連れてきていいからな」

「そっか!じゃあ南にも聞いてみる?」

 私が聞くと、米屋は頷いた。

「わかった。まあ、とりあえず、今日の放課後に部室集合ね!」

 そうして、私たちは約束を交わした。

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