9話 予期せぬこと
声の主は南だった。
『波あんたどこにいるのー』
「南だ!!」
「知り合いなの?」
彼は聞いた。
「はい」
私たちはよく耳を澄ませた。
『私は、波がもっくんとの待ち合わせに来れないのは、おそらく、何か事件に巻き込まれたからなんじゃないかって想定してる。波がまだ学内にいるっていうのは、私が教室に行ったときにわかった。なぜなら、荷物とか貴重品を学校に置いていくはずがないのは勿論そうだけど、波が常に大事にしている漫画を教室に置きっぱなしにして帰るなんて、ありえない。ちなみに今、米屋を呼び寄せて、探してもらってる。あと、波のこと見かけた人は情報提供しに、放送室に来てくださいー。明確な情報がわかったら、この放送で言うから、米屋は聞き逃さないでよ。波の見た目の特徴は女子、セミロング、地味です。あまり参考にならなくてすいません』
持つべき者はやっぱり友であるとこの時私は確信した。にしても、私の情報薄すぎるだろ。
『あと、あと、一応、波が見つかるまで、この放送室は貸し切らせてもらいます!先生、無断で使ってすいません!入ろうとしても無駄です。鍵かけました』
おい、大丈夫か。てか前から思ってたけど、南って行動力パネェ。
「助けが来るみたいだな」
「はい!」
私たちはほっとした。南はまだ話を続けた。
『おい。波を誘拐した学内にいる犯人たち。私は、君たちの目星はついてる。これを聞いてる犯人は今すぐ波を解放しなさい』
これは…怒ってる…!
「お前の友達勇敢すぎるだろ」
彼はツッコんだ。
「ほんとですよね」
「今頃、学内大騒ぎだろうな」
「確かに」
私、明日学校行けるかな。だって、恥ずかしすぎるだろ。これ、よくショッピングモールとかデパートで流れてる迷子のお知らせみたいなもんだし。
南が放送をし始めて数分経った頃だった。彼はドアの方を気にし出した。確かに、何か聞こえる。しかも、それはどんどん近づいてきてる。
「なんだか、騒がしくないか」
彼はそう言うと、ドアの方へ向かって行った。
「助けが来たのかも!」
私も彼に続いて向かう。私たちは、ドアに耳をくっつけて、ドアの向こう側に聞き耳を立てた。ドア面積はそれほど大きくないため、私たちの顔の距離が思わず近くなった。ふと目線が合うと、私の顔は熱くなった。一方、彼は全く気にしてない様子で、聞くことに集中していた。私が勝手に意識しただけだった。なんだよ!ドキドキさせやがって!
気を取り直して、私も声に集中すると、何やら男女複数人が争ってるような声が聞こえた。あれ、もしかして助けじゃない?違うのかな。彼もそう思ったのか、私たちは怪訝な顔をした。すると、いきなりガチャガチャと鍵を開ける音がした。私たちは咄嗟にドアから離れた。それが開くと、ドアの向こう側にいたのは、米屋とトリオだった。彼らは私の隣にいる彼を見て、混乱していた。そうだよな。まさか私以外にも中に人がいたとは思わないよな。そう納得していると、今度は米屋が私を混乱させた。
「辻くん!?なんでこんなところに!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます