6話 修復のために
「真央に別れようって言われた」
もっくんは俯いた。やはり、嫌な予感は的中してしまった。
「理由はもう俺のことが好きじゃないらしい」
「それに対して、もっくんはなんて言ったの?」
私は慎重に言葉を発した。
「信じられない、そんなわけないだろって。びっくりしすぎて、その後は真央からの言葉を待たずにすぐそのまま真央の家を飛び出して、学校に戻ってきた」
私たちも同感だった。あまりにも突然すぎる。私たち、つまり第三者から見ても、それは考えづらいことだった。
「あと、風邪じゃなかった」
「そうなの」
私は少し驚きながら言った。
「おう。どうやら俺に会いたくなかったんだと」
さっきから、どうも腑に落ちない。別れ話をした理由も、風邪を引いたって嘘をついた理由も。
「もっくんはそれを聞いて、どう思ったの?まさか、真央ちゃんがそんなことを本心で言ってるとでも?」
南はまるでもっくんを試すような言い方をした。
「最初は違うと思ったよ。そんなわけないって。でも、真央がそう言うなら、仕方ないって思えてきて。それに、なんだか自分自身に腹立ってきて。真央の異変に気づかないなんて。あんなに好きだったのに」
もっくんは完全に自信喪失していた。私は見ていられなくなってしまい、先程から黙っている米屋をちらっと見ると、奴の涙腺は崩壊していた。なんで、お前が泣いてんだよ。普通、そこはもっくんが泣くところだろ。
「バカタレ!!!!」
南は突如激昂して、机を勢いよく両手で叩いた。私ともっくんはびっくりである。米屋も、思わず涙を引っ込めたようだった。こんなに感情的な南は初めてだ。
「お前には失望したよ。私たちみたいな部外者でもわかるようなことをなぜ当事者はわかっていない。あのね。波みたいな恋愛経験値0の子でも、これはおかしいって思ってるんだよ。なのに、お前は間に受けて、メソメソして。お前の愛も所詮その程度か。話を聞いて、損したよ」
み、南。落ち着け。傷口に塩塗ってる!相手のHPが0に近い!あと、私の情報もちゃっかりバラすな!
「俺はどうしたらいいんだ」
「真央ちゃんと別れたいの?別れたくないの?」
南はもっくんに質問した。そして、もっくんは即答した。
「別れたくない!!!」
「じゃあ、どうにかして真央ちゃんの心を動かさなきゃね。そして、何でそんなことを言ったのか真実を知る必要がある。私たちにもできることがあるかもしれない。協力しようか?」
南はもっくんに手を差し伸べた。
「いいのか?」
「うん。私たち、真央ちゃんには恩があるからね」
南はそう言うと、私と米屋はうんうんと頷いた。
「感謝する」
すると、米屋も鼻水と涙でぐちゃぐちゃになった顔をティッシュで吹いて、やっと口を開いた。遅えよ。
「とんでもない!むしろ、協力したいくらいだ」
先程の話に心打たれたのか、やる気満々だった。
米屋の発言後、3人は私を見た。言うまでもないが、一応言うか。
「私も協力する!」
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