5話 放課後トーク
事はうまく進み、私はもっくんとの交渉を成立させた。放課後、私はこのことを南と米屋に報告した。
「よかった。教えてくれるんだね」
「もっくんなら人脈も広いし、結構正確な情報をくれそうだな」
2人は進捗具合にとりあえず安心した様子だった。
「それにしても、何で受け入れたんだ?そこまで仲良くはないだろ?」
「確かに」
私は2人にもっくんにされた頼み事について話した。
「なるほどね。真央ちゃんに感謝しなきゃね」
そうだな。偶然、隣の席になったとはいえ、それなりに仲良くしてもらっているし。あと、もっくんの真央ちゃんへの溺愛っぷりにも感謝しておこう。
「いつぐらいにわかりそうなんだ?」
「分かり次第、すぐ教えてくれるって。本人曰く、3日以内には伝えるらしい」
「なるほど。じゃあ、それが来るまで作戦会議は一旦中断だな」
米屋は例のノートに今日の内容をまとめ始めた。もうそろそろ1ページ目は埋まりそうだった。
「そういえば、真央ちゃんは今日何で学校休んだの?」
「風邪らしいよ」
「そうなんだ。金曜元気そうだったのに」
それは私も思っていた。もっくん曰く、日曜の夕方に電話したが、そんな様子は見受けられなかったと言っていた。気がかりではあるが、ただ季節の変わり目で、体調を崩してしまっただけなのかもしれない。
ノートを書き終えた米屋は私たちの会話に加入して、こんなことも言った。
「そういえば、今日、俺らの教室前の廊下でバスケ部の女マネージャーがもっくんと揉めてたなー」
「え、そうなの」
「おう。南は放送委員で昼休み放送担当だからいないし、波は昼ごはん食べたあと、次の授業まで寝てるから知らないだろうけど」
「揉めてるって何の話してたの?」
南が聞くと、米屋は慎重に話し始めた。
「俺も一部始終聞いていたわけじゃないからわかんないけど、なんか2人は元カップルで険悪なのと、もっくんが部活を辞めるのを引き留めてるって感じだったな」
「もっくん、部活辞めるの?エースじゃなかったけ」
南は不思議そうに言った。確かに、うちのバスケ部は割と強豪だし、もっくんはその中でも特に目立つ印象があった。
「おう。俺も何で辞めるのかまではわかんないけどな」
もっくん大変だなーと部活に所属してない私はぼんやり思っていたところ、突然教室のドアが勢いよく空いた。私たちはびっくりして、ドアの方へ視線を移すと、そこには私たちの会話に出てきた中心人物、もっくんがいた。走ってきたからか息を荒げている。そのまま、気づいているのか、気づいていないのかわからないが、私たちの方を見向きもせず、荷物を床に荒っぽく置いて、机に突っ伏した。彼の異様な雰囲気から、ただ事ではないことを私たちは察した。そして、もっくんの様子を伺いながら、こそこそ話し始めた。
「もっくんどうしたんだ」
「確か、今日真央ちゃんのお見舞いに行くって言ってたような」
私はそう言うと、私たちは嫌な予感を感じた。そして、議論の末、このまま放っておくことはできず、私たちはもっくんの方へ向かった。
「ねえ」
私は声をかけた。しかし、返事はなかった。話しかけるなというオーラが感じ取れたが、私は諦めなかった。
「もっくん」
またもや無視である。米屋は撤退の合図を送ったが、もう一度声をかけた。ここで放っておくことは駄目だと私の勘が言っている。当たるかは知らんが。
さあ、お前。仏の顔も三度までだぞ。
「もっくん」
私たちは息を呑んだ。そして、数秒経ってから、もっくんはやっと顔をゆっくりと上げた。3度目の正直って本当だったみたい。
「何だよ。無視してたのに」
もっくんは不機嫌そうにこちらを見ていた。
「知ってる。でも放っておけなかった」
私は言った。南も米屋も同じ思いを持っているだろう。
それを察したのか、もっくんはため息をついて、ゆっくりと話し始めた。
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