第12話 一騎打ち?

和色狂氷クレイジー・アイス

魔法使いがそう呟くと、その持っている杖の先から色とりどりのまぶしい光が飛び出した。普通に目がチカチカして目が痛くなりそう。

地味に嫌な攻撃だなあ。

そう思っていると、そのカラフルな光が今度はこちらへ飛んできた。――魔力弾だ。魔力の塊だから、ぶつかるとかなり痛い。

私は、

炎壁えんへき

と、唱えた。

すると、私の周りに炎が現れる。

もちろん、熱くはない。

その炎は、外部からくる魔力だけを燃やす炎だそうだ。

教えてくれた日記帳の中にいた元、魔王。ありがとう。

『瞬間転移』

私がそう呟くと、魔法使いの持っていた杖が私の手元にくる。

魔法使いは驚いた顔でこちらを見ている。

「流石は魔王だ。卑怯な手を使う。杖がなければ攻撃できないとでも思っているのか?」

そう言って、魔法使いは、何もないところから剣のようなものを取り出した。

卑怯かな?杖を奪うのって卑怯?

でも、戦場で卑怯も何もなくない?

っていうか、どうしよ。

剣相手に素手って、不利だよね。

私も剣って持ってたっけ?

あ、持ってたわ。

そういえば、魔王城の玉座の横に刺さってたわ。

あれを転移させてここに持ってくればいいのか。

『瞬間転移』

私がそう呟くと、剣が出てきた。

片手で持ってみると、見た目はすごく綺麗で禍々しい剣なのに、めっちゃ軽い。

すごいなー。

攻撃力高そう。

魔法使いは、

「ほお、貴様も剣を持っておるのか。」

と、言ったかと思うと、

花氷血刺フラワー・アイス・ブレッド

と、唱えた。

そして、気が付いた時には剣が首元にあてられている。

速っ?

え?今の一瞬何があった?

目で見えなかったんだけど。

『気配感知』

私は、目を閉じて気配感知の能力を使った。

確か、気配感知をすると目で見るより速く相手の動きが見えるって、日記帳の中の元、魔王が言っていた気がする。

千華翡翠せんかひすい

私はそう言って、技を出す。

これは元、魔王に教えてもらった風魔法と剣の動きを合わせた合わせ技である。

しかし、その魔法使い_カリスはその剣技を持っていた剣で受け止めた。

ギリギリ、と刃のこすれる音がする。

一旦私は勢いをつけて技を出すために距離を取り、カリスから離れる。

するとすかさずカリスは桜の木の幹をけり、勢いをつけて私に刃を向けて、

氷刺風血ひょうしふうけつ

と、言って技を繰り出してきた。

星が刃から出ているように見える不思議な技だった。

きっと、気配感知を使っていなければ負けていただろう。

私はギリギリのところでその刃をよけ、

真風炎刺まふうえんし

と言って、炎魔法と風魔法を合わせた技を繰り出す。

しかし、またカリスに受け止められてしまい、跳ね返される。

そして、その技によって剣から出てきた炎が桜の木に燃え移り、桜の木がみるみる燃えていく。

しかし、今はそんなことは関係ない。

死ぬか殺すかなのだ。

カリスは、

「あなたの技は綺麗だけれど、そろそろ飽きてきそうだわ。もう、次で終わりにしましょ。」

と、言って、

滅殺氷獄めっさつひょうごく

と、唱えた。

今度の攻撃は刀を使っていない。

どうやら、何も使わなくても魔法が使えるようだ。

おかしいな。

何も使わずに魔法が使えるのは魔族と、竜族のみだ。

彼女は人間族だと言っていたのに?

そんなことを思っていると、私の周りに氷の檻のようなものが現れ、その氷の檻の中に気が付いたら閉じ込められていた。

気配感知で’視’ていたのに、避けられなかった。

そしてその檻の中で氷が私の腕を貫いた。

「へー、今までに見たことない技だ。」

私はわざと、余裕ぶってそう言い、氷をバキバキに折った。

しかし、魔力を込めたりしても氷の檻は壊れなかった。

「うーん、面倒くさいな。」

そう言って、私は

さい

と唱えて壊そうとするけれど、無効化されて無意味だった。

さて、どうしたものか。

「あなたは、私たちがあなたたちの配下を皆殺しにする様子を大人しくここで眺めていてくれればいいわ。そうすれば、命だけは助けてあげるかもね?」

と、言ってカリスは、魔法で前世でいう携帯用テレビのようなものを取り出した。

そして、私のいる檻の中に雑に放り込む。

腹立つな、こいつ。

「一つ聞いていい?」

「何かしら?」

「君って、竜族だよね?」

「いいえ、人間よ。」

なるほど。

やっぱりそうか。

私がカリスにそう聞いた瞬間から、じわじわとカリスの顔の肌が竜のうろこになり始めている。

どうやら本人は知らない、または否定したい事なみたいだが、竜族なのだろう。

それなら効く攻撃はだけだな。

毒氷刺全どくひょうさつぜん

先ほどから、変な違和感を感じていた。

何かが変だった。

カリスの繰り出す技にはいつも、何か共通点がある気がしていた。

やっとわかった。

は、氷だ。

自身が氷が苦手だから、氷系の技を私にも効くと思って使っていたんだろう。

おそらく、無意識のうちに。

竜族の弱点は、氷。

たしか、あの元、魔王はそう言ってた。

竜の苦手とする氷と強い毒を含む技、毒氷刺全はその昔、日記帳の中にいた元、魔王が敵対した竜族を殺すときに作った技だと言っていた。

ということは、この技は絶対に効く。

そう思って、私はその技を出した。

その技で、一気に氷の檻を切り刻んでカリスの腹を狙う。

毒が一番効きやすいのは竜の肉体の中で一番血脈が集中している腹だ。

案の定、しっかりとその技は効いたようだった。

私の刺したカリスの腹の位置からじわじわと血がにじむ。

「かはっ。」

カリスが血を吐く。

私の足からも、血がぽたぽたと流れる。

私がカリスに攻撃した瞬間、カリスはその攻撃を確かに視’て、私に即座に反撃したのだ。しかし、とっさの行動だったのと私の初めて見たであろう技だったから動きが読みきれなかったため、位置がずれて私の足へ刺さった。

毒が、じわじわとまわり、苦し気にカリスが血を吐く。

「カリス。君はすごいよ。リーファ帝国軍には君ほどの強さを持つ兵はいなかった。魔王と同格だなんて、十分威張れることだよ。」

私は、カリスをそう言ってほめた。

事実、私はカリスほどの強さを持つものは、自分とルミクナ以外に見たことがなかった。それなのに、自分に傷を負わせたカリスは本当にすごいと思う。

敵ながらに、褒めたくなってしまう。

「魔王に、、褒め、、られる、こと、ほど、、の恥、、は、ない。」

カリスは、途切れとぎれにそう言った。

「そうかな?本当にすごいと思っているのに、残念だなー。」

私は軽い口調でそう言った。

「殺、、せ。私、を。」

カリスは、そう言った。

どうやら、この状態が痛くてつらいらしい。

普通に、カリスには恨みはたいして無いので素直に殺してあげることにした。

「じゃあ遠慮なく。」

私はそう言って、剣でばっさりとカリスの首を切った。

すると、その場が割れんばかりの大きな悲鳴があがった。

耳が痛い。

そう思って、カリスのほうを見ると、切ったはずの首から竜の頭が生えていた。そして、みるみると、カリスの人間の見た目だった肉体が竜の見た目へと変わっていく。

「えー?嘘でしょ?」

まだ死んで無いんだ。

どうしよ。

竜族の弱点は確かに氷だよね?

――じゃあ、こいつがもしも竜族ではなく――?

嫌な予感がした。

でも、そうしたら納得がいく。

まじかよー。

カリスについていた傷がみるみると治っていき、毒が分解されていく。

さて、どうしたものか。

カリスが――竜が大きな声で鳴いた。

うるさい。

どうしよう。こんな大きな竜相手に魔王一人(?)で相手するとか。

死亡フラグ立ちまくりだよ。

あっ、そうだ。

元、魔王に教えてもらったものを改良したを使おう。

私は、を取り出した。

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