閑話・???

《ある主従の会話》


「少し昔の夢を見ていました」


「昔の夢?」


「魔王さまと出会ったときの夢です」


「ああ、あの時はいきなりすごい剣幕で襲ってくるから大変だったよ」


「……お恥ずかしい限りです」


「まあ、お互いこうして元気に生きてるんだし気にしてないよ」


「そういえば、今更ながら不思議に思ったことがあるのですけど」


「なんだい?」


「魔王さま……あの時は勇者を名乗られていましたが、何故あの時私たちを助けてくれたのですか?」


「何故って、キミたちが困っていたからだけど」


「失礼、ちょっと聞き方が紛らわしかったですね。会ったことも話したこともない私たちが困っていると、なんで魔王さまには分かったのですか?」


「うーん、説明が難しいんだけど……勘? ああ、いや、勇者の特殊能力、じゃなくて体質みたいなものって言ったほうが近いかも?」


「ははあ、体質と仰いますと?」


「物語のヒーローって大抵困っている人がピンチの時にタイミング良く現れるでしょ? でね、それって別に隠れて出待ちをしてるわけじゃなくて、いや中にはそういう人もいるかもしれないけど、そういうのは例外としてね? 全員かどうかは知らないけど勇者とか英雄って呼ばれてる人は、そういう勘が妙に鋭くなるというか。予知夢とか幻覚とかで、助けを必要としてそうな人の居場所や感情が分かったり分からなかったり?」


「やけに曖昧なモノみたいですけど、予知能力とか読心術みたいなものですか?」


「いや、そこまでハッキリしたところまではわからないよ。助けを求めてる人の感情の強弱で精度も変わるし、僕の場合は何となくコッチの方に困っている人がいるかも……くらいかな」


「では、たとえば今私が考えていることが分かったりはしないのですね? ええと、深い事情で詳しくは言えないのですが、ここは個人的にすごく重要なところなんですけど」


「うん、全然さっぱり。でね、色んな世界のヒーロー達が次から次へと厄介事に巻き込まれるのは、意識的にしろ無意識的にしろそういうのが影響してたりするみたいだよ」


「なるほど、それでは魔王さまがあの時魔界に現れたのは……」


「そう、アリスの感情に反応したからってことになるのかな。あちこちの世界を渡り歩いていたら、物凄く強い絶望を感じてね。我ながらグッドタイミングだったよ」


「あの時は……そうですね。今考えると視野が狭まって心が病んでいたように思います。相談できるような相手もいませんでしたし。ああいう時ってつい極端から極端に走り勝ちというか……あの、魔王さま。今更言うのもなんだか変に思われるかもしれませんけど」


「うん、なんだい?」


「私と、そして魔界を救ってくれてどうもありがとうございました」


「どういたしまして。お安い御用さ」


「それと、これからもよろしくお願いします、魔王さま」


「こちらこそよろしく、アリス」


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