第2話 幼馴染の黒妃優華
授業は進み、学校が終わる。
本を読んだり、ボーッとしたり、寝たり、適当に過ごしている。
授業の内容はそんな姿勢でやっていても入ってくる。
中間テストも赤点はとらなかったからな。
なかなかのものだろう。
「・・・・・・」
それに本気を出せば俺は満点をとれる。
テストなんていうのは、暗記したものをテストの日まで覚えてテスト用紙に書かれていることに答えればいいだけだ。
テストの日以降は全部忘れていい。
いかにして当日まで覚えておくかの物事にすぎない。
そんな陳腐なものを本気でやるのが馬鹿馬鹿しいから俺はやっていないだけだ。
だっておかしいだろう?
能力を測るのが暗記なんて。
暗記できてたら良い点数をとれる。
システムが間違っているんだ。
学力というのが暗記でいいのか。
良いわけない、勉強というのが覚えることなんて間違っている。
かっこいい俺には似合わない。
「難しい顔してるね」
「えっ?」
考えごとをしていたため俺に近づく存在に気づかなかった。
「強助、なにかあったの?」
声をかけられた方向を見ると、さっきまで見ていた海にそっくりな青色の瞳で、こちらを見つめる女の子がいた。
「なんていうかさ俺ってかっこいいなぁって」
「なにそれ」
クスッと笑う優華。
「そんなことを考えながら、海を見ていたんだ。
「真面目に答えて〜」
「大真面目だけど」
問いかけに対してやや煽るような言葉を返すと、優華は頬を膨らませながら俺に近づいてくる。
「ど、どうしたの?」
顔の前でじーっと見つめられているため、優華の肩につくかつかないかぐらいの、薄い紫色のセミロングの髪から、白姫さんとはまた違った甘い、心をくすぐるような香りが漂ってくる。
「ふ〜ん。言う通り嘘をついている顔には見えないや。本当に真面目に言ってたんだね」
「当たり前だよ。俺は絶対に嘘をつかないからな」
「それが嘘だよね?」
「はい嘘です」
「認めるんだね!?」
くだらないやりとりを気軽にいつでもできる女の子。
幼馴染の
お互いが五歳だった頃からの付き合いだ。
家が隣で自然と学校に一緒に行くようになって、小、中、高と十年くらいずっと、俺の近くにいる存在。
昔から彼女はモテている。
高校も例外ではなくクラス、学年を超えた学校の人気者になっていた。
目が大きくてまつ毛がながい、鼻も口もシュッとしていて顔が可愛い。
加えて、小学校高学年くらいから女性らしい体つきが成長し、出る所は出て、締まる所は締まるという、男子だけでなく女子から見ても抜群のプロポーションと顔を
それ以降、より一層人気に拍車がかかり、高校に入ってからまだ二ヶ月ほどしか経っていないが、白姫さんを越える学年一番の人気者だと俺の唯一の男友達から聞いた。
「強助?」
「なんでもないよ」
白姫さんとは違い、スカートの丈が短すぎず長すぎない。
制服も第一ボタンまでしっかりと閉めて、スタイルを主張しすぎていない。
逆に露出していなくてセクシー感が増していると言えば増している。
俺の方がセクシーさでは負けていないけど。
「怪しい・・・・・・」
先程よりも明確に何かを疑っているようにジロリと見てきた。
「なんかいやらしい目を感じるんだけど」
「実は強助がエッチだな〜と思ってた」
最近の女の子は日常でエロい言葉を使うのに抵抗がないのか。
なんかあざといな。
「そんなに見つめてもなにも出せないよ」
「どうだろうね。私と強助は昔からの仲だから強助が特別になにかを出してくれるかも」
「なにを求めているんだ?」
「う〜ん・・・・・・スイーツ。ケーキとか」
上目遣いでお願いしてくる優華。
やはりあざとい!!
「さっきからしている話と関係ないよね?」
「強助と話してたらお腹空いてきちゃった」
「食いしん坊ってやつ?」
「そんなんじゃないもん! 女の子だからだもん!」
はい、あざとい!!!
ぷくっーと頬を膨らませて軽く睨んでくる優華。
流石人気者。
あざといの三連単だ。
男子だけでなく、女子もドキドキしてしまう可愛いさだった。
「ごめんごめん。それでなんのよう?」
「そだね。一緒に帰ろ〜って言うために来たんだけど強助はいやらしい目で見てくるからさ、言いそびちゃった」
「いやらしい目では見ていないからな」
「どうだろう〜〜??」
言っている内容とは反対的に優しく笑う。
だけどその姿より、優華の後ろのクラスメイトたちが気になる。
人気者の優華と一緒にいると男女関係なくクラスの人達から視線を集める。
表情は見えないけど、
人から向けられる嫌悪と憎悪の感情は言葉にされなくても、目だけで十分伝わってくる。
早くこの場から去ろう。
戦略的撤退だ。
「わかった」
「ちょっと待って」
いつでも帰れるように荷物をまとめていたバックを持ち、席から立った瞬間。
目の前に座る金髪が輝く女の子、白姫波音羽に呼び止められる。
イライラした棘のあるオーラを感じる。
「なに白姫さん?」
注目をより浴びることになるから、あまり話しかけないでほしかった。
けどそんな思いは白姫波音羽の前では通用しない。
「じゃあねって言いたかった」
「え・・・・・・どうゆうこと?」
「学校が終わってこれから帰るんでしょ。席が近い隣人として別れの挨拶はちゃんとしておかなきゃな〜って」
言葉の意味はわかるが、別れの挨拶と言われるとオモイ言葉に感じる。
「友達なんだから当然でしょ」
いつ友達になったんだ。
俺のカッコよさに白姫さんは頭がやられたのか。
「ねぇ黒妃さん?」
大きく開けた瞳で僅かに口角を上げながら、隣にいた優華を見る白姫さん。
先程から俺に言葉を言っていると思っていた。
けど違ったのかもしれない。
優華に向ける視線から、なにか裏腹な思いと別の狙いがある気がした。
「あはは〜そだね白姫さん」
優華が笑いながら言葉を返すが、全く笑っていない気がするのはなんでだろうな。
二人はクラス、学年を超えた学校の人気者ってだけで周囲からは毎回注目を集めていたけど、仲は悪くなさそうだった。
普通に会話をしていた。
なのにこの一瞬だけを見れば牽制しあっているように見える。
クラスの人達からの注目もかなり高まってきた。
いまクラスにいる人達は全員こちらを見ている。
世紀の一戦という雰囲気だ。
「私と強助は帰るね。白姫さんまたね」
「ちょ優華!?」
白姫さんとの話を強引に終わらせて、優華が俺の手をとり引っ張っていく。
「いつもみたいに二人で帰るんだ。じゃあねー白姫さん」
白姫さんが煽るように優華に言葉をなげかけ、優華も声が聞こえたのか一瞬止まったが、すぐ移動を再開した。
俺はそんな優華に引っ張られるまま歩き二人揃って教室を出る。
「幼馴染・・・・・・か。特別な関係ってなんだか羨ましいな・・・・・・・・・・・・」
教室から出る前に白姫さんが呟いた言葉が聞こえた。
特別な関係が羨ましい———どんなオモイで言ったんだろう?
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