草原迷宮
鰻串と五平餅は失敗だった。
それが分かったのは、
味が染みた五平餅の板は特に大人気だ。とても幸せそうに噛み締めている。
それでも板よりは本体の方が美味しいのは当たり前だ。
迷宮ペンギンの食事は嘴で突くスタイルなので、五平餅の様なモノを食べる時は時間が掛ってしまう。そんな食べるのが遅いニゾーに目を付け、何匹かの
「ぐが!」
寄るんじゃねぇ! とニゾーが威嚇すれば離れて行くが、それでもじりじりと間合いを詰めるのは止めない。ニゾーのストレスがヤバそうだ。
「……ニゾー」
「な?」
「ぐー、ぐ、ぐが、ぐあー」
態々ペンギン語で『一匹なら殺して良いぞ』とイチゾーが言うと、
ペンギン語と
「……ンで?」
ニゾーが落ち着いて食事に戻ったのを確認して、カズキに視線と言葉を投げる。
その視線は剣呑なモノだ。
「何時から人類の敵になったんだよ、テメェ」
「なっちょらんわ。言うたじゃろ? 次の迷宮攻略の協力者じゃ、と」
「へぇ? 何? 躾けて爆弾でも持たせて突っ込ませんの?」
「それやるならドローンでえぇじゃろ? こいつ等が寝床にしちょった迷宮が次のターゲットなんじゃぁ」
——あぁ、成程。そう言う話しか。
余り楽しそうな話では無さそうだ。そう考えながら煙草に火を付ける。匂いを嫌って
「……群れの規模」
「正確な数はわしも知らんが、キングの
「……へぇ?」
ちら、と板を取り合ってぐるぐる唸り合っている
「この群れのキングは穏健派でのぅ。人に手ぇ出すんは危ないちゅうてこれ迄は周りの迷宮で狩りやらして暮らしちょったが……」
「角猿に住み家の迷宮取られてそうも言ってられなくなった?」
「……」
びっ、と人差し指で刺される。正解らしい。嬉しくない。
周りのワンコたちはノーマル、居てもウォーリアーかハンター程度。ウィザードも居なければナイトも居ないし、子供もいない。剣と弓で武装した彼等は本当に群れの一部、狩猟部隊だけなのだろう。
「……」
ぷかぷかと煙を吐きながら、空を見上げる。
「これが噂のテロリストの策か?」
「手口、じゃの」
生態系を乱して、使う。そしてその乱すのにも使った駒、今回なら角猿も使う。そして崩した所に止めを刺す。そう言う戦法らしい。地味だが分かり難く、気が付いた時には止め難くなっている。やられる方としては堪ったモノでは無いが――
「こいつ等の住み家取り戻してやればこっちが有利じゃ」
「……」
そう言うことだ。追うにしても天弦の尻尾が見当たらないので、今はこれしか出来ない。カズキの同僚達が情報を掴むまでの時間稼ぎ。それはイチゾーも納得した。だが――
はしゃぎまわる
——
カズキがわざと触れなかった
前回攻略したワンルーム迷宮とは異なり、角猿達が
事前の調査の結果を聞くと、多分『端』の無い――あっても『大陸』とかそう言う広さの迷宮だとのこと。俗に言う攻略不可能迷宮と言う奴だ。少なくとも、イチゾーがこの迷宮に入ったら、直ぐに攻略を諦めて帰る。核を見付られる気もしなければ、探す気すら湧かない。そう言う迷宮だ。
「うわん!」
イチゾーの部隊に振り分けられた二十匹の
目的地は角猿達に奪われた彼等の城だ。糧食と弾丸に矢、それとニゾーなどを積み込んだ
今回は迷宮攻略と言うよりは戦争だった。
既に敵が防御を固めているので、やるのは攻城戦。城を囲み、補給路を絶った状態でちまちまと嫌がらせをする。
そうしてある程度削ってから城内に突入してイチゾー、ニゾー、カズキ、えもにゅーの二人と二羽が大猿を相手どり、
そうして城を奪い返す。そう言う作戦らしい。
「……」
部隊は五つ。ただし人類が指示しているのはカズキがいる本隊と、イチゾーの部隊のみ。
理由は簡単。二十匹以上の
「……」
なんとなく、イチゾーは知能テストを思い出した。人喰い族が混ざってる状態で川を船で渡るアレだ。人数優位となると人喰い族が襲ってくるので、組み合わせを考えなければいけない――と言う問題だったと思う。
アレの一番楽で今後のことも考えた場合の正解は人喰い族に『事故』に遭って貰うことだと信じているイチゾーだが、もしかしたらあの問題も、今の状況の様に人喰い族を殺せない理由があったのかもしれない。
そんなことを考えながら、強い
そのアホ面を見ていると、『不利に成り過ぎない程度に戦争の中ですり潰せ』と言う
四つの部隊が四つの門を塞ぎ、城から投げられる投石や中猿が持つ銃撃をやり過ごしつつ、こちらからは
角猿達は簡単な攻城兵器、カタパルトなどを造る程度の知能と器用さがある様で、正面を受け持っていたカズキの部隊が少し下がったが、それでも包囲は順調だ。
五つ目の部隊。イチゾー達遊撃部隊が敵の補給部隊を徹底的に潰し回っているからだ。
ラファとドナはこの戦争がレオとマイキーの弔い合戦だと理解しているのだろう。
しつこく、正確に、角猿達の匂いを嗅ぎ取り、角猿達の死神と化していた。
見つかったら、殺される。
逃げようにも持久力に優れた犬と
迷宮に入って五日が経つ頃には既に角猿達の補給部隊は居なくなっていた。
「……明日一日見て回って――」
もう居なかったら包囲戦に加わるかな。野営中。右手の蟲がまたニゾーに虐められているのをみつつ、そんなことを考えた。そしてその旨を伝えるべく、端末——は電波が無いので、手紙を書き、ラファを呼ぶ。書いてる最中もニゾーが新人イジメを止めないのでとても邪魔だ。
犬だからだろうか? ラファとドナは
イチゾーは
やる気に溢れ、時に中猿に向かい出す困ったさんだ。軍隊には要らないタイプである。
だが、そのやる気は成果に繋がり、最近
道案内ナイトとたまに
何故かラファを呼んだらその早太郎も付いて来た。
「ラファ、カズキに手紙届けてくれ」
「うわん!」
何故か護衛に立候補する早太郎。やる気があるのは結構だが、犬と
アホなので走り去って行った。
「……護衛が居るならニゾー付けるけど、どうする?」
へふ、と良く分からない返事をされる。「……」。そうだった。コイツ、
「ニゾー」
ここでラファに怪我をされると索敵能力が落ちる。それは面白くないのでニゾーに声を掛ける。相変わらず新人をぐるぐるさせて遊んでいた。
「……お前ね。何時まで新人イジメて――」
「ぐなっ!」
そろそろ叱ろうと思ったら、ニゾーが慌てた様子で離れた。そのフリッパーからは血が出ていた。噛み千切られたようだ。右腕を見ると、怒った新入りが
「……ラファ、わりぃ。ちょい手紙に追加するから待ってー」
言って、イチゾーは手紙に
あとがき
しっぺい太郎はここにはあるか?
しっぺい太郎はありませぬ。
しゃりもにグミはここにはあるか?
しゃりもにグミはありませぬ。
買い忘れた!!
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