お父さんは超能力者
花 千世子
お父さんは超能力者
【じゃまだな、このおっさん】
【こんなところに突っ立ってんじゃねーよハゲ】
道行く人々が、良男に文句を言っている。
しかし、そんなことなど気にならないほど、彼は驚いていたのだ。
ただまあ、ハゲてはいない。たぶん。
良男は、ようやくふらふらと歩き出す。
だけどやっぱり、驚きが勝ってしまい、そばにあった小さな広場に吸い込まれるように入る。
そしてベンチにへたりこむように座った。
そこから、遠巻きに歩いている人々を観察する。
【あーあ、今日のミーティングは部長もいるのか。最悪すぎるな】
【今日は夫、出張から帰ってくるんだよね……あーあ、もっと出張行ってればいいのに……】
【あいつ、『イソスタ』で彼氏自慢しかしてないじゃん。うざすぎ】
良男が今聞いているのは、人々の声である。
しかし、これらの声は言葉で発しているものではない。
心の声だ。
ついさっき、昼休みにいつもの蕎麦屋へ行く途中で、急に辺りが光った。
それから頭の中に声が響いてきた。
【お前がいい。お前にしよう】
機械混じりのような音声が、直接自分の脳内に響いている。
良男は戸惑った。
その声は続ける。
【人間、お前に能力をくれてやる。これは他の人間の心の声が聞こえるというものだ。好きに使え】
「他の人間の、心の声が、聞こえる?」
良男が聞き返しても、脳内の声は答えない。
【お前の使命が終わったら、能力は回収する】
それっきり、声は聞こえなくなった。
キョロキョロと辺りを見回しても、何も異変はない。
「疲れてるのかな……」
良男は、そうつぶやいて蕎麦屋のドアを開けた。
「本当に他人の心の声が聞こえてる」
良男は、ベンチに座ってぽつりとつぶやく。
ちょうどベンチのそばにあった寂れた自動販売機で、缶コーヒーを買った。
自分を落ち着かせるために飲んだコーヒーは、全然味が分からない。
それだけ良男は、驚いていた。
いや、興奮していたのかもしれない。
そして先ほどの蕎麦屋の出来事を思い出す。
蕎麦屋に入った瞬間、客や店員の心の声が聞こえた。
最初は、「なぜこんなに今日はストレートに物事を言うんだ」と不思議に思ったが。
だが、あきらかにお互いを罵り合うような言葉をぶつけあっている夫婦は、険悪なムードには見えない。
お互いに好意を寄せあっている若い男女は、「恋したいよね」と言い合っている。
しかも、その声というのは良男の頭の中に直接響いてくるのだ。
普通の会話とは違っていた。
そこで良男はハッとしたのだ。
先ほどの声が、他の人間の心の声が聞こえる能力をくれたことを思い出す。
じゃあ、疲れていて幻聴が聞こえたわけじゃないのか。
良男はなんだか少し面白くなって、蕎麦を高速で食べ終えて、道行く人の心の声を聞いた。
最初は面白いと思えていた。
しかし、だんだん疲れてきたのだ。
脳内に直接声が響く――しかも、悪口やら愚痴やらマイナスな声が多い――これはかなり心が疲弊するな、と思った。
だから良男は、こうして己を落ち着かせようとしているのだ。
しかし、缶コーヒーを飲み干しても、良男はそわそわしていた。
さきほどの声の主が言っていた。
【お前の使命が終わったら、能力は回収する】
「俺の使命ってなんなんだ……」
しがない会社員である良男は、今年で四十五歳。
金も権力も、そして体力もないのだ。
彼にあるのは、家族だけ。
いや、家族がいるから良男は幸せでいられるのだ。
そんな自分が使命とはこれいかに。
「ねえ、お父さん。今週末って予定ある?」
その日の夜、晩ご飯の最中に娘の
「今週末?」
そう聞き返し、良男は大きなハンバーグを箸で切る。
「うん。土曜日なんだけどね。ちょっと紹介したい人がいるの」
愛美がそう言うと、頭の中で声がした。
【彼氏を家に連れてくるの、緊張しちゃうなあ】
愛美の本音に、良男はギクリとする。
なるほど、それで「ねえ、お父さん」の言い方が妙に猫なで声というか。
お小遣いを前借りしたい時か、明日は友だちと遊ぶから帰りが遅くなると言う時の声のトーンだったわけだ。
愛美も十八歳の高校三年生。彼氏ぐらいいてもおかしくない。
しかも、顔は妻の
きっとイケメンな彼氏を連れてくるにちがいない。
そんなことを思っていると、また愛美の心の声が聞こえた。
【結婚を真剣に考えている彼氏だから、お父さんとお母さんともうまくやってほしいなあ】
けっ、こん。
頭の中の響いた娘の本音に、良男は味噌汁を吹き出しそうになる。
結婚だと?
まだ十八だろう? 早くないか?
相手の男はどういう奴だ? 常識はあるのか? 学生なら将来性はあるのか? 社会人であれば仕事の態度は? その男の家族構成は?
良男の脳内に一気に質問が浮かぶ。
質問というよりは尋問に近い。
いやいや、もちろん本当にそんなことを聞くつもりはないが。
しかし結婚を真剣に考えているとなると、こちらもそれ相応の態度が望ましい。
ふと隣に座る妻を見れば、「土曜日は幼稚園の前のケーキ屋さんでケーキ買ってくるね」と愛美と話している。
ニコニコする二人を見て、良男は思う。
これは一大事だ。
それと同時に、この能力に感謝した。
心の声が聞こえる能力があれば、彼氏が悪い男だったらすぐに見抜ける。
愛美が悪い男と付き合うのをやめさせることができるのだ。
良男が初めてこの能力に感謝をした瞬間でもあった。
土曜日の朝。
良男は落ち着かない様子で、リビングをうろうろしていた。
うろうろしているだけでは時間が無駄な気がして、掃除をしていたのだが。
床を塵ひとつ残さず掃除機をかけても、棚やテーブルの上をきれいに整頓しても、窓をピカピカに磨いても、それでも良男のそわそわはおさまらない。
そもそも、娘の彼氏――本人いわく結婚を考えて本気で付き合っているらしいが、来るというのに、落ち着いてなどいられるものか。
しかも、愛美が彼氏を家に連れて来るのは初めてのことだ。
一体どういう対応をすればいいのかわからない。
娘の彼氏が初めて家に来た時マニュアルとかあればいいのに……。
良男がそんなことを考えているのとは正反対に、美香はケーキを買いに出かけた。
おまけに美香は【タダシくん、どんなケーキが好きかな】という心の声。
タダシというのは、愛美の彼氏の名前だ。
それは昨晩、良男も愛美から聞いた。
つまり、美香は今日のことをまったく心配していないのだ。
まあ、美香は愛美がその彼氏と結婚を本気で考えていることを知らないからな。
知ったら、さすがにもっと心配したり、緊張したりするはずだ。たぶん。
いや、まてよ。
良男はソファーのクッションにコロコロをかけながら、思う。
既に美香は、愛美の彼氏に会っているのかもしれない。
だからあんなに心に余裕があるのだ。
会っていないとしても、愛美からタダシくんとやらの話をたくさん聞いて写真も見ているにちがいない。
外で働く良男よりも、在宅勤務の美香のほうが時間の都合がつけやすいから、彼氏と会っていてもおかしくはないのだ。
そうだ、既に美香は彼氏の情報を知っている。
だからあんなに緊張していない。
それはつまり、心配するほどの彼氏ではない、ということではないか?
好青年だと知っているからこそ、美香は安心しきっている。
うん、きっとそうだ。
良男はそう思って、きれいになったクッションをポンと軽くたたく。
大丈夫だ、妻を、娘を、信じよう。
美香が既に会っている(もしくは話を聞いているから)好青年にちがいない。
愛美が連れて来る彼氏なのだから、きっとちゃんとした人だろう。
良男はそう考えて、ようやく普段の落ち着きを取り戻した。
「ちーっす」
午前十一時。
玄関に現れた男性を見た良男は、固まっていた。
文字通り、フリーズ。
隣にいる美香も、自分と同じようにフリーズしている。
愛美は照れくさそうに、男性をこう紹介した。
「この人が彼氏のタダシくん」
その途端、良男の脳内の『好青年』『将来有望』『いずれは良い夫・良い父になる』という理想の言葉たちがガラガラと崩れていく。
愛美は彼氏を近くの駅まで迎えにいった。
そこで一時間も待たされたのだ。
この彼氏に。
そのうえなんだ、「ちーっす」って!
彼女の両親に、いや、初対面の人間にする挨拶なのか?!
「はじめまして」か「こんにちは」だろう!
良男はそう言いたい気持ちをぐっとこらえる。
もしかしたら、これが最近の若者の常識なのかもしれない。
むしろ、挨拶ごときで腹を立てていたら老害認定されかねないのだ。
まだそんな年齢ではないとは思うものの、十代の若者から見れば中年も年寄りも同じだろう。
「あらあら。よく来てくれたわねえ。さあ、上がって」
そう言った美香は、柔らかい口調でタダシくんにいった。
さすが我が妻は切り替えが早い。
そう思って美香を見た良男は、ぞくりとした。
優しい微笑み……しかし、目が笑っていないのだ。
そして美香の心の声が聞こえてくる。
【この子……挨拶がなってない上に一時間も遅刻してきて……ケーキは一番安いのを出してやるわ】
めっちゃ怒っていた。
ソファーに座るタダシくんを見て思う。
パッと見は普通の男子だった。
派手過ぎず、尚且つ地味というわけでもなく、むしろ整った顔立ちをしている。
スタイルも良く、愛美と並んで座ると美男美女で絵になる。
しかし、よくよく見ればタダシくんは、ジーンズの膝やトレーナーにうっすら汚れがついていた。
派手に転んだか、それとも何かやらかしたか。
それを知りたいが、心の声は聞こえてこない。
さっきからタダシくんの心の声が一切、聞こえないのだ。
どういうことだ? と良男が考えていると。
「はい。コーヒーとケーキね」
美香がテーブルに四人分のコーヒーとケーキを乗せていく。
その作業を良男も手伝いつつ思う。
だいぶ怒ってる。
来客が来た場合、美香は必ず「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」と聞くのだ。
それが今回はないということは、タダシくんを来客だとみなしていない証拠。
「っす」
コーヒーとケーキを出され、タダシくんはそう言った。
ちょっとだけお辞儀をしたから、これは「ありがとうございます」と言っているのか?
【ちゃんと、ありがとうございますって言えー!】
美香が心の中で代わりに怒ってくれた。
チラッと愛美のほうを見ると、苦笑いをしている。
【あーあ、もう……】
愛美の呆れたような心の声。
そうだよな、彼氏がこんなに礼儀がなってないんだもんな。
良男はうんうんと小さくうなずく。
まあ、近いうちに別れるだろう。
むしろ別れてくれ。
こうして、愛美の彼氏お披露目会は、まるでお通夜のような静かさでスタートしたのであった。
笑い声が聞こえる。
まるで自分だけが世界から切り離されたような感覚に良男は陥っていた。
いや事実、自分だけが取り残されているのだ。
目の前では家族の団らんが繰り広げられている。
良男抜きで。水入りで。
そうなのだ。タダシくんはすっかりなじんでいた。
愛美と美香とタダシくんは笑顔で話し、楽しそうだ。
どうしてこうなった?!
現在時刻は十二時少し前。
一時間もしないうちに、タダシくんは美香と打ち解けていたのだ。
【おもしろいわね、この子】
美香の心の声からして、どうやら本当に妻は笑っているらしい。
なにがなんだかわからない。
一つだけ確かなのは、久しぶりにチーズケーキを食べたら胃もたれした上に腹痛になった。
良男が十五分ぐらいトイレで席を離れ、戻ってきた時にはこれだったのだ。
なんだ、タダシくんは魔法でも使ったのだろうか。
それとも、自分がいない間にまともにしゃべるようになったのだろうか。
耳を澄ませて、彼の会話を聞いてみれば。
「っすよ。ガチでウケるっす」
ああ、なんかあんまり変わってない。
会話になっているだけ、まだマシか……。
「あら、もうこんな時間ね」
美香が棚の上の置き時計を見て言った。
そろそろ帰ってくれるか。
ホッとしていると、美香は恐ろしい言葉を放った。
「お昼ご飯、食べていくでしょ?」
「タダシ、食べるよね~? お寿司の出前なら食べるよね?」
何を言ってるんだ愛美。
良男はもはや会話に入れないし、入る気分でもない。
「食べたいっすね~。お寿司いいっすね!」
タダシくんがニコニコしながらそういった。
おいおいおいおい!
良男は今すぐこの場所から逃げ出したくなる衝動を抑えるのに必死だった。
結局、お昼は出前の寿司をとった。
ケーキを一番安いのにしたお詫びなのか、高めの店の寿司。
良男は胃がキリキリと痛んだ。
胃痛の原因は特上寿司(五人前)の値段のせいと、タダシくんが一気に打ち解けていることだ。
こんな彼氏なのに、美香も愛美も受け入れている。
おまけに、タダシくんの心の声は今も聞こえない。
そこで良男はふと思う。
もしかしたら、自分の使命というのは、このことではないのか?
脳内に響いた声は【お前の使命が終わったら、能力は回収する】と言った。
確かに【お前の使命】と言ったのだ。
それは人類を救うだとか、悪と戦うという使命ではない、ということだ。
良男にとっての使命、なのではないのだろうか?
ということは、今、目の前のこれは自分の使命なのでは?
愛美とタダシくんを別れさせること。
これが親としての使命なのだ。
きっと、そうにちがいない。
じゃあきっぱりと言おう。
こんなだらしない彼氏とは別れなさい、と。
うん、そうだ。こういうことは自分が言うべきなんだ。
良男は、すうっと息を吸った。
「タ」まで出かけたその時。
【このお寿司、美味しいなあ】
それは紛れもなく、タダシくんの声だった。
初めて心の声が、聞こえてきた!
良男はごくりと唾を飲みこむ。
【お寿司って回転寿司のデリバリーとかじゃないんだな。どうしよう、これすごく高いやつだよなあ】
心の中のタダシくんの声は、普通のしゃべり方をしていた。
なぜだ、と思いつつも良男はじっと心の声に耳を傾ける。
まあ、脳内に直接響いてくるのだが。
【お金足りるかな。でも、こういう場合って学生の俺が自分の分を払うって失礼なのかなあ】
いやいや、お金とかいいから。どんどん食べなさい。
良男は、そう言いたい気持ちをぐっとこらえた。
【それにしても、めっちゃ緊張したな……。緊張すると口調が変になる癖、やっぱ印象悪いよなあ】
タダシくんは、小さくため息をつく。
なんだ、そういうことだったのか。
じゃあ、あれは普段の喋りではない、ということだな。
ホッとする良男に、タダシくんはさらに思考。
【なんかもうあれこれと考えるほど余裕がなかったけど、ようやくちょっと冷静になれたかも】
なるほど。
タダシくんの心の声が聞こえなかったのは、緊張により思考する余裕がなかったということか。
良男は、美香の家に結婚の挨拶にい行った時のことを思い出す。
確かにあの時は、頭が真っ白で「お嬢さんをぼくにください」と言ったこと以外は、何一つ思い出せない。
タダシくんは、緊張していただけなんだ。
極度の緊張による、口調の変化。
良男がホッとしていると、愛美が口を開く。
「あっ、ねえねえ、そういえばタダシ、犬と言えばさ今日さ」
「いや、あれはいいって」
タダシくんが苦笑いをして、愛美の言葉を制す。
「えー、だって、タダシがどれだけ優しいかをさあ、お父さんにもお母さんにも知ってもらわないと」
ぶつぶつと愛美は言っているが、タダシくんはニコニコしているだけだった。
【ここに来る前に迷い犬を見つけて、飼い主を探してたら一時間遅刻したなんて、言い訳にしか聞こえないって】
タダシくんの心の声に、良男は納得した。
膝や肘の汚れは、そのせいだったのか。
途端に、良男の胸に安堵の気持ちが広がる。
控えめにいって、すごく良い彼氏なのでは?
良男はそう確信して、タダシくんに勇気を出してこういう。
「あの、マグロは好きですか?」
さっきからイカや玉子しか食べていないタダシくんに、良男は聞いてみる。
「すっ、好きっす」
「じゃあ僕の分も食べてください。大トロは胃もたれする年齢なんですよ」
「あざっす!」
タダシくんの口調が戻ったということは、緊張しているということか。
まあこれが自分との初めての会話だからな。
しかも、彼女のお父さんというのは一番緊張するポジションだ。
美味しそうにマグロを頬張るタダシくんを見て、良男は笑顔になった。
この子が、いずれ息子になる日が来るのかもしれない。
午後四時。
タダシくんは帰っていった。
帰り際、「あっ、そう言えば手土産持ってきたんです」と箱入りのバームクーヘンをくれた。
「母が、愛美さんの家についたらすぐに渡しなさいよ、とアドバイスしてくれていたんですが、緊張して忘れていました」
そう付け加えて。
「晩ご飯も食べていかないの」という美香の提案は丁寧に断っていた。
【黒毛和牛を買ってきて、すき焼きにしようと思ってたのに】
妻の本音に、良男は内心ではホッとしていた。
愛美がタダシくんを送る、と言って出て行くと、すっかり家の中は静かになった。
「いい子ね、タダシくん」
沈黙を破ったのは、美香だった。
「ああ、うん。そうだね」
【最初は心配したけど、忙しい両親の代わりに家事をこなして、まだ小さな弟の面倒も見ているって聞いてからは見方が変わったわ】
なるほど。自分がトレイにいる時、そんな話をしていたのか。
良男はうんうんとうなずいてから、口を開く。
「どうやら、あの口調も緊張からのものだったようだし」
「そうなの? それならよかった」
【なんでそんなことがわかったのかしら?】
妻の本音を聞いていて、良男は思う。
そういえば、心の声はまだ聞こえる。
使命は、まだ終わってないのか?
それとも、今日のことではないのか?
あれこれと考えていると、美香が思い出したように言う。
「ああ、そうそう。来週、わたし誕生日でしょ」
「うん」
「プレゼントとか、いらないからね」
【本当は夫婦二人で旅行がしたいんだけど、お父さん忙しいよね】
美香の本音に、まだプレゼントを用意していなかった良男は思う。
よし、温泉旅行の予約をとるか。
「あっ、牛乳なかった。買ってくるわね」
美香がそう言ったので、「僕が行くよ」と良男は外に出た。
家から少し歩いたところで、脳内に声が響く。
【人間、使命を果たしてくれたな】
この能力をくれた者と同じ声だった。
良男は思わず立ち止まる。
結局、使命ってなんだったんだ?
まさか妻の心を呼んで、誕生日に温泉旅行に行くことを決意したことか?
良男がそんなことを考えていると、再び脳内に声が響く。
【地球人類は、特別脅威ではないことが分かった。近いうちに我々の惑星と友好関係を結ぶことに決定した】
え、友好関係?! 一体、どういうことだ?
良男が訳がわからないでいると、声――宇宙人は続けた。
【もし、地球人類が狂暴だったら、この惑星ごと吹っ飛ばすつもりだったが、その必要はなさそうだ】
背筋がぶるっと震えた。
【じゃあ、能力と我々に関しての記憶は消していく。また会おう】
声が聞こえなくなり、良男は再び歩き出す。
あれ、なんだっけ?
何か大事なことを忘れている気がする。
とても大きなものを、忘れているような?
そこで良男は思い出す。
「そうだ、牛乳」
良男はぽんと両手を打って、それから歩き出す。
ふと空を見上げれば、丸い物体がキラリと光って消えた。
お父さんは超能力者 花 千世子 @hanachoco
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