第20話 慣れ

辛いことに慣れてしまうことは   とても悲しいこと 




大きな痛みでかき消される小さな傷は   


積み重ねてもわかりやしないのだから


自分自身で傷つけてしまっていることにも     


…気付けやしないのだから








酷いことに慣れてしまうことは   残酷なこと


  


目の前のなにもかもがただ描かれた無機質な絵にしか見えなくなる


流れた涙の潤いも  目の前で泣くものが息をしているのかも  


…わからなくなる


麻痺した感情の先端は  


どんな現実も「仕方ないだろう?」とくくってしまうのだろうから








当たり前のことに慣れてしまうことは   もったいないこと




当たり前にあることなんか一つもないこの世界で


当たり前だと思えるほど信じていられるものを   


尊く思う心を失くしてしまうのだから








慣れてしまわないこと    


それはすべてと初めて会った気持ちを忘れさせないでいてくれるだろう






慣れない感情にまた今日も   戸惑っては








「あたたかいな…」と   私は呟くのだろう。




 






悲しいことに慣れてしまうのはきっとすごく悲しいことだね…


酷いことに慣れてしまうのはきっとすごく残酷なんだね…


そして  嬉しいこと、しあわせなことに


慣れてしまうことは




きっと、すごくもったいないよ…?

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