第17話 とあるチームの内情を見て

 緑髪少女はタウラ・アルバランさんといって、グリーゼくんのパーティで彼とともに前衛を務めるファイターでした。

 そんなんがなぜ私を襲ったか。私がグリーゼくんに粉かけてるアバズレだと誤認してのことだったそうです。

 端的に言って馬鹿ですね。


「なんですってぇ〜……あだだだっ」


 医務室のベッドで寝かされたタウラさんが、包帯だらけの顔で凄んできます。全然怖くありませんな、ははっ。

 ……いや、やっぱ怖いかも。発掘された古代の王ぐらい包帯まみれですし。怪奇ミイラ女。


「安静になさい。自業自得の重傷とはいえ、見ていて憐れですよ」

「ぐぬぬ……っ」

「タウラ、興奮しない。傷が開く。その風船デカ乳女の言うことは残当(残念ながら当然)」


 そしてミイラ女に治療術を掛けている彼女は、グリーゼくんのもう一人のパーティメンバー、リブラ・ブラキムさん15歳。

 冷静通り越して冷淡な、感情も希薄な雰囲気の少女です。充分に美少女と呼べる範疇の、白い肌に青いロングヘアの赤眼ちゃんですが……もっと愛嬌見せた方が魅力的ですよ。


「大きなお世話。あなたがグリーゼに興味がないのと同じぐらい、私も風船女になんて興味がない」

「手厳しい。まあ、そういう訳でタウラさん。あなたの行動はまさに無駄骨を折っただけだったというわけですね♪」

「うわあぁぁぁぁぁ〜〜〜ん!! アタシだってぇぇぇ〜〜〜っ!!」


 枕を顔に乗せて泣くタウラさん、それを押さえつけてリブラさんは治療術を続けます。


 ……治療術は五行術の中で一番高度なカテゴリーです。

 素人でも鈍器で殴れば相手を殺傷出来ますが、応急処置にはきちんとした知識が必要。本格的な医療となると尚更です。

 同様に、最低限の医療知識を身に着けて、初めて実践可能なのが治療術。リブラさん、在野の冒険者としては相当な逸材ですね。術師としては確実に私より上です。

 そもそも私はヘボですがね。


 そこで、騒動の切っ掛けとなったグリーゼくんも医務室へやって来ました。なぜかセキシスと、ステラちゃんまでご一緒に。


「あれ、二人とも」

「あれ? じゃありませんの。昇級していきなり問題を起こして、リーマさんも唖然としてましたの」

「売られた喧嘩を熨斗つけて返しただけですが」


 私は悪びれずに返答します。問題行動なのは自覚していますが、それはそれ。荒れくれ揃いのギルダー同士、喧嘩なんて日常茶飯事です。


「それはそう。ですので、ギルドも双方に特務一回分のペナルティで手打ちにするとのことですの」

「んで、これが指令書じゃ。言っとくが拒否は許さぬ……いや出来んからな」

「はぁ」


 ステラちゃんに押し付けられる紙束。微妙に納得しかねますが、何かしら条件つけた方が後腐れしないもの事実。ここは大人しく受領して……って、ん?

 軽く目を通しただけですが、とても無視できない記述がデカデカと乗ってるように思えるのですが!?


 美しい筆跡で書かれた「サイデリア・セプテントリス」の署名と、デフォルメされた陛下の似顔絵。ご丁寧に捺印として皇家の紋章まで押されていました。


「す、ステラちゃん、ステラちゃん? これ、依頼主が……」

「な? 真皇帝陛下からの依頼じゃ。断れんじゃろ?」


 と、陛下ご自身が仰っています。

 いや、だから不自然でしょう!? 中央から大分外れた街の、しかも職安に、どうして皇帝からの指令書が舞い込むんです?


「どうして、と言われてもな。ステラちゃんが皇帝から直々にお願いされるぐらいにグレートなギルダーじゃからとしか言えんわ。クカカカカッ」


 自由だな〜、この人。


「つーわけでレティ! お主はグリーゼくんのパーティと合同で、ぶっ飛ばしたそこの娘の代わりに指令をこなせ。これ、命令な」

「なんですと?」


 つーことは、これが例のバンデンバーグ大公絡みの依頼ってこと?

 セキシスがどんな様子かを見上げましたが、興味なさそうに枝毛探してるだけでした。マジでどうでもよさそー……。

 まあ行けというなら行きますが。


 というわけで。私は新キャラどもと一緒に、盗賊団の壊滅作戦に参加することになりました。

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