異星人とのコンタクト
六蟬
第1話
西暦25XX年――我々は遥か25万光年離れた星〈SGMC-LS〉に無人探査機を送り、生物らしきモノを採取し持ち帰ることに成功した。採取したサンプルは植物によく似ていて、その星には他にも生物がいることが予想された。そのため、実際にその星に出向き、調査することが決定した。地球規模で食糧難に陥っている現在、〈SGMC-LS〉が我々の救世主となることを祈って、我々は出発した。
一ヶ月ほど経ち、我々調査隊一行は無事〈SGMC-LS〉に着陸することに成功した。地表は砂色で、ほんの僅かだが湿っていた。真空ではないようだが、我々は念のため宇宙服の防護は外さず、地表を散策した。
しばらく歩いたところで、我々は大きな池を発見した! 美しい水がその窪みに溜まっていて、周囲には植物のような緑色のモノも見られた。意気揚々と我々は池に近付き、水を採取した。その時、一人が池の対岸を指差し、「あれを見ろ」と言った。「何か、立っている」
全員がそちらを向いた。そこには、大きな頭と手が特徴的な、人型の生物が立っていた! 我々は水どころではない、とその生物に歩み寄った。
近付くと、その生物は目も大きく、耳や鼻は平らだと分かり、まるで伝説の宇宙人、リトルグレイのような風貌だった。先頭に立った調査隊のリーダーが、恐る恐る彼に話しかけた。
「ハ、ハロー?」
彼は我々の呼びかけに反応した。そして縋りつくようにリーダーにしがみついて、こう言った。
「頼む、助けてくれ」
あまりにはっきりと我々に分かる言葉を発したため、我々は驚いた。宇宙服のヘルメット越しでも、声はよく聞こえた。
「一体、どうしたんですか」リーダーは動揺しながら彼を自分の体から離した。
「俺、この星の未来からタイムマシンで過去に戻ろうとしたんだ。だけどな、出力を間違えて50億年前に行きそうになったから、途中で――30億年暗い遡ったところで――慌てて飛び降りたら、ここにいたんだ。タイムマシンもどっか行ったし、もう俺はどうしたらいいんだ……」
彼は言い終えないうちから泣き始めた。我々は彼の話をすべて理解することはできなかったが、今ひどく困窮していることは分かった。試しに携帯用宇宙食を一つ彼に渡すと、「ありがとう、こんな俺に優しくしてくれるんだな」と宇宙食を受け取り、泣きやんだ。
我々は彼に、なぜ我々にも分かる言語が話せるのか、どうしてそのような姿をしているのか、と尋ねた。
「ああ、これは俺の時代の宇宙服なんよ。本当の外見はもうちょっと違うからな? それで、宇宙服に自動翻訳機がついてて、俺の言ったことがその相手にとって意味のわかる言葉になるんだ。逆ももちろんあるぞ」
タイムマシンといい、宇宙服のシンプルさといい、自動翻訳といい、我々よりも技術が進んでいるのは明らかだった。地球ではまだタイムマシンの実装は叶っておらず、宇宙服もまだ重い。
今度は彼が我々に質問した。なぜここにいるのか、どうやって、どこから来たのか。我々はできるだけその一つ一つに丁寧に答えた。彼は我々の話をよく理解してくれたようで、「へえ、あんたたちも大変なんだなあ。そんな遠いところから、食べ物のために?」と同情するように頷いた。
「せめて俺の生きていたころのこの星に来れたら良かったな。この星、けっこうでかいから、食糧生産するためだけの大陸とかあるんだぜ。星の恵みのおかげで生きられるって言って、星を神様みたいに考える星が昔からかなり多かったから、環境も綺麗に保ててたらしい」
まるで自分のことを自慢するかのように話した。だが、次の瞬間には、「まあ、もう帰る手段はないんだけどな」と俯いてしまった。
励まそうと、リーダーは彼に言った。「それでも、あなたが我々に話してくれたことは我々にとって良い情報でしたから、あなたと出会った意味はありました。ありがとうございました」彼の手を取り、しっかりと握りしめた。
その言葉を受け、また彼は泣きそうになったが、ぐっとこらえ、彼も手を握り返した。そしてぱっと離すと、口角を上げた。
「俺、もうちょっとタイムマシン探してみるわ! へへ、あんたらのおかげで、生きる気力が湧いたよ。ありがとな、じゃ!」
そう言い、彼は我々に向かって大きく手を振りながら、遠くへ去っていった。見えなくなるまでこちらに手を振り続け、我々もそれに振り返した。だが、我々は複雑な気持ちだった。理由は二つあった。
一つは、我々はこの星に生物がいて、遠い未来には高い技術を持ち、豊かな環境を維持していることを知ったが、その遠い未来はおそらく何十億年も先であることだ。そんな未来まで地球が存続できるはずがない、と断言できるほど、地球は今とても厳しい状況だ。
そしてもう一つは、我々が死に絶えるよりもずっと早くに、彼が死んでしまう可能性が高いことだ。もしこの星のどこかに彼のタイムマシンがあったとしても、すでに壊れている可能性があり、しかもこの星は巨大だ。徒歩で見つけられるはずもない。
それでも、我々に縋りついて助けを求めてきた彼が元気を取り戻して前を向いたというのに、さらに彼を絶望させてはいけない気がして、我々は手を振らずにはいられなかった。
異星人とのコンタクト 六蟬 @Roku_Zemi
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