第6話 最後の確認
東京行きの深夜バスの中、香織は静かにバッグを開け、中に収めたUSBメモリを取り出した。涼介がその動きを見て、首を傾げる。
「確認するつもりか?」
「ええ。」香織は小声で答えた。「何が入っているか、最後に確かめておきたい。」
「確かめるって……どうやって?今はバスの中だぞ。」
「持ってきたわ。」香織はバッグの底から薄型のノートパソコンを取り出した。
「準備がいいな。」涼介は少し驚いたように笑ったが、その表情はすぐに真剣に変わる。「でも、大丈夫か?もしこれにトラップが仕掛けられていたら……。」
「その可能性もある。」香織は冷静に答えた。「だから、慎重に扱う。」
彼女はイヤホンを装着し、涼介には聞こえないようにデータを開き始めた。画面には複雑なファイル構造が現れる。
「どうだ?」涼介が隣で囁くように聞く。
「まずは、この中の動画ファイルを確認するわ。」香織は慎重にクリックした。
画面に再生されたのは、薄暗い会議室で行われている密談の映像だった。スーツ姿の男性たちが真剣な表情で話し合っている。
「……これが“極秘プロジェクト”の会議?」香織が呟く。音声を集中して聞くと、会話の中に「松本達也」という名前が何度も登場していた。
「松本……やっぱり、彼が関わっている。」涼介が小声で言う。「それで、何を話してるんだ?」
香織は再生を進めながら、男性たちの発言をメモし始めた。
「……計画の漏洩は許されない。」
「山崎には目をつけているが、彼が動き出す前に対処する必要がある。」
「松本が黙っていれば問題ない。」
「これって……山崎さんのことを明らかに狙ってるじゃないか!」涼介が声を潜めながらも激しく言った。
「そうね。」香織は画面を凝視したまま答える。「この会議の内容が、彼の命を奪う原因になった。」
再生が終わると、香織は次のファイルを開こうとした。だが、その瞬間――。
ノートパソコンの画面が突然真っ黒になり、赤い文字が浮かび上がった。
「このデータにアクセスする者は、命の保証はない」
「な、なんだこれ?」涼介が身を乗り出す。
「……セキュリティトラップ。」香織は冷静を装いつつも、内心では警戒を強めた。
画面はそのままフリーズし、パソコンが強制シャットダウンされた。
「これで終わり……なのか?」涼介が不安げに尋ねる。
「いいえ。データはまだUSBに残っているはず。ただ、慎重に扱わないと。」
その時、バスがガタリと揺れ、香織の手元からUSBメモリが滑り落ちた。
「しまった!」香織が慌てて床を探ると、USBメモリは狭いシートの間に挟まっていた。
「見つけた!」彼女が手を伸ばした瞬間、バスの車内アナウンスが流れた。
「次の休憩地点で停車します。乗客の皆様、荷物の確認をお願いいたします。」
香織はUSBメモリをバッグに戻し、涼介に目配せした。「休憩地点で何か起きるかもしれない。気をつけて。」
休憩地点・高速道路サービスエリア
深夜のサービスエリアは静まり返っていた。香織と涼介はトイレのためにバスを降りたが、その周囲を警戒しながら歩いていた。
「何か嫌な感じがする。」涼介が呟く。
「同感よ。私たちを追っている人間がここで動いてくる可能性がある。」香織はバッグを肩に抱え直し、周囲を見回した。
その時、遠くに停まっている黒い車が目に入った。運転席には誰かが座っているようだが、顔は見えない。
「おい、あの車……。」涼介が小声で言った。
「わかってる。多分、私たちを見張ってる。」
二人がその場から離れようとした瞬間、車から男が降りてきた。その男は香織たちの方へ向かってまっすぐ歩いてくる。
「まずいな。」涼介が緊張した声を漏らす。
男は香織たちの前に立ちふさがり、低い声で言った。
「USBメモリを渡せ。」
「あなたたちの命令に従うつもりはない。」香織が毅然と言い放つ。
「このままだと、お前たちがどうなるかわかってるんだろうな?」男がバッグを狙うような目で香織を睨む。
その瞬間、涼介が割って入った。「ちょっと待てよ。どうしてそこまでこのデータにこだわるんだ?」
男は答えず、代わりにポケットから拳銃を取り出した。
「これは本気だ。」
香織と涼介は一瞬で言葉を失った。しかし、香織はすぐに冷静さを取り戻し、バッグの中でUSBメモリを握りしめた。
「……私たちはこれを守るためにここまで来た。あなたたちの脅しに屈するわけにはいかない。」香織の声には震えがなかった。
男が銃口を少し下げたその瞬間、遠くからパトカーのサイレンが鳴り響いた。
「警察?」涼介が驚いた声を上げる。
男は一瞬だけ動揺したが、すぐに拳銃を隠し、車に戻ると急発進してその場を去った。
「どうなってるんだ?」涼介が息を吐きながら言う。
「彼らも慎重になっているのよ。でも、これで終わりじゃない。」香織はバッグを強く握りしめた。
読者選択肢
香織たちは黒い車の男の脅威を一時的に退けましたが、追っ手が諦めるとは思えません。データを守りながら、どう動くべきか?
1.警察に状況を説明し、助けを求める
- パトカーが現れたこのタイミングを利用し、警察に守ってもらう。ただし、データが隠蔽されるリスクもある。
2.吉井茜との合流を最優先し、直接データを渡す
- 時間を無駄にせず、信頼できる記者にデータを託す。ただし、移動中に再び追跡を受ける可能性がある。
応援コメントへの選択番号記載依頼
読者の皆様、物語はいよいよ佳境です!
香織と涼介が命を懸けて守る証拠データ。このデータをどう扱うかが、真実を明らかにするカギとなります。あなたの推薦力で、彼らの運命を導いてください!
コメント欄に「1」または「2」の番号を書いてください!
締切:明日朝7時まで
どちらの選択肢を選ぶかで、物語の展開は大きく変わります。あなたの選択が、香織たちの未来を決めます!
読者メッセージ
いつも『港町事件簿:最後の確認』をお読みいただき、ありがとうございます!
香織と涼介が真実に迫る緊迫の展開が続いています。彼らがこの危険な状況をどう切り抜けるかは、読者の皆様の選択次第です。
物語の行方を一緒に楽しみながら、次回もぜひご期待ください!
コメントをお待ちしています!
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