第28話、メイドマリアージュ
アレクとルリの二人は、ジラントに乗って全滅した村から森の中へ。
森の中の道に沿って木々の間を飛んだ。
「くっ、すごい
「ああ」
進むほどに強くなった。
道の先に貴族の館が見えて来た。
「ジラント」
ここから先は何が起こるかわからない。
ジラントはブレスが吐けない一般竜。
戦闘には不向きだ。
館から少し離れた所でジラントから下りた。
「メイドラゴン
アレクが専用のインベントリからメイドラゴンナイトのフル装備を出した。
「百八あるメイド殺法その7、”掃除道具召喚”」
ルリが、純白の
背の高い鉄の格子にかこまれた館の正面門に、ゆっくりと近づいていく。
正面門には、首を小脇に抱えた騎士が立っていた。
「くっ、首なし騎士(デュラハン)……?」
「デュラハン……?」
「……来たか」
首なし騎士(デュラハン)の小脇に抱えた首が重低音の声で話しかけてきた。
「!!」
「ああ、ヴァ―・ヴァンシーもそうだが、”アンデット”というより、”精霊”や”妖魔”に近い存在だ」
――会話も可能である
「……見逃してはくれまいか?」
「……中の二人はこれまでにもう十分ひどい目にあったのだ」
首なし騎士(デュラハン)が落ち着いた声で言う。
その時、奥にある玄関から小柄な少女が現れた。
小柄な少女は、血に濡れたエプロンドレスを着ている。
「……村を見てきたわ」
――二百名近い犠牲が出ている
「……あれは、うちのメイドがご主人様の為にしたことだ」
「……メイドの貴様ならわかるだろう」
「ええ、わかるわ」
「……ルリさん」
「でもね……」
ルリが切なげに目を伏せた。
「私ならご主人様と一緒に逝くことを選ぶの」
チャキリ
笹帚(エクスカリバー)を構える。
「……そうか」
首なし騎士(デュラハン)が片手の持った剣を、高潔な騎士のように胸も前に構えた。
「首なし騎士(デュラハン)は私がっ」
アレクがランスを構えて騎士の前に。
アレクのランスチャージ。
ガキン
首なし騎士(デュラハン)は口から生えたカミソリのような歯で ランスチャージを受け止めた。
玄関で小柄な少女が両手を頬につけた。
「これ以上、ご主人さまにかまわないでえっ」
「イイイイイいヤヤやあああアアアア」
メイドヴァ―・ヴァンシーの、”フィアーバラッジ(泣き叫び)”。
しかし、少女は元はメイド紋を持たない一般メイドだ。
ご主人様への思いと自分の命と引き換えに、ヴァ―ヴァンシーになっただけである。
左手に真っ黒く浮かぶメイド紋は限りなく小さい。
ルリとアレクは、”フィアーバラッジ(泣き叫び)”の
影響を受けない。
「覚悟っ」
「百八あるメイド殺法その21、”メイド縮地”」
一気に距離を詰める。
「
少女に近づくだけで生命力が奪われる。
だが、ルリは
少しクラリと来たがそのまま少女の目の前へ。
笹帚(エクスカリバー)で袈裟懸けに斬ろうとした。
「ご主人様っ」
少女がギュッと目をつぶった。
その時だ。
館から
「くううっ」
ルリは、あまりに危険な気配に大きくバックダッシュ。
アレクが近づいてくる。
「な、なんだ……」
あまりの妖気に周りの空気を歪ませるような何かが、館の二階から降りてくる。
「ご主人さまっ」
「……お目覚めになられた」
玄関から寝間着を着た、170センチくらいの身長の男性が現れた。
頭は白髪で外傷は無かった。
「待たせたね」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
少女がご主人様の腰に縋(すが)りつきながら叫ぶ。
「ご主人様を、《殺してしまって》》ごめんなさい」
「なっ」
「まさかっ」
少女が暗殺者に襲われヴァ―・ヴァンシーのなった時、生命奪取(ライフドレイン)が暴発。
村人のようにご主人様の生命力を奪っていたのだ。
ご主人様がかがみこみ、小柄なメイドの両脇に手を入れて持ち上げる。
「でも、助けてくれたじゃないか」
そのままギュッと抱き締めた。
「ご主人さまあ」
メイドが涙を流しながら抱きついた。
「僕と結婚してくれるね」
ご主人様が抱きしめたメイドの耳元で囁く。
「まずいっ、ルリさんっ」
「ええっ」
「「専属契約されてしまうっ」」
二人が、”メイド縮地”でご主人様に飛び込む。
「静止の魔眼」
一瞬、ご主人様の後ろに無数のどくろが浮かぶ。
「くうう」
二人の動きが止められた。
「はい……はいっ、ご主人さまああ」
ご主人様の力はメイドのもの。
少女の左手のメイド紋の周りに巨大なご主人様の紋が浮かび上がる。
位階は侯爵(マーキス)だ。
ルリの紋より大きくなる。
ここに、”専属契約”がなった。
「行っておいで」
ご主人様に優しく背中を押されるメイド。
「はいっ」
少女の頭の中にメイドの種族記憶からある言葉が浮かび上がる。
”メイド殺法”だ。
「百八あるメイド殺法その7、”掃除道具召喚”」
少女が漆黒の長帚を召喚した。
「あれは……”ストームブリンガー”……!?」
アレクの驚きの声。
昔、虚弱体質の皇子が最愛の恋人を犠牲にしたという伝説がある暗黒剣だ。
特攻に、”
「か、体が動かない」
少女が長帚(ストームブリンガー)を上段に構えた。
「百八あるメイド殺法その、30……」
真っ黒なメイドオーラが長帚(ストームブリンガー)に集まる。
「間に合ええ」
「
アレクの両目が金色の竜眼に。
強引に魔眼の
「ルリさんっ」
「アレクッ」
アレクが、盾を前に、動けないルリを背中から包み込むように守る。
「メイド活殺法、”
メイド殺法には無い聖属性の結界だ。
二人の周りに白い光の結界が浮かび上がる。
「メイドオオオオオオオオオ、レーザアアアアアアアアアアアア」
その時、黒い色をしたぶっといメイドレーザーが二人を包んだ。
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