第14話、メイドグッズ

 竜騎士。

 それは竜と契約し共に戦う騎士のことを言う。

 竜と契約すると竜が種族進化するときがある。

 自分の飛竜である、”ジラント”はもとは荷竜ポータードラゴンだった。

 自分と契約することで貨物竜キャリアードラゴンに進化したのである。

 契約した時に、新たに得たスキルは、”インベントリ”である。


 自分は、百八あるメイド殺法さっぽうその17、”メイドインベントリ”も使える。

 しかし、自分がメイド服を着ると、”ジラント”が汚れ物を見るような目で見てくるので、自粛している。


 ――何故だっ


 アレクの容姿は、金髪碧眼、身長180センチくらいの美丈夫。


 ――メイドゥーン王国内ならいざ知らず、他国で男がメイド服を着ると普通に通報案件だ


 という目でジラントが自分を見てきた。


「……あれか、自分との間で得たスキル、”インベントリ”を使わなくなるから嫉妬してるのか?」 

 実は、”メイドインベントリ”の方が容量は大きい。


 じ~~~


 ジラントがとてつもなく嫌そうな目でこちらを見てきた。

 色々、諦めたようにフルフルと首を振る。


「それとも……メイド服が着れないから悔しがっているのか」


 はあっ⤴


 ジラントが驚いたように首を向けた。


「そうか、そうか、メイド服を着たジラント(飛竜)かあ」

 

 ――大きなメイド服を着て、ヒラリとスカートをひるがえしながら、空を飛ぶ飛ぶジラント(飛竜)


「……いいかもしれない」 


 突然目の前に光り輝く円が現れた。

 複雑な魔法文字がゆっくりと回る。


「契約破棄用の魔法陣……?」

 自分とジラントとの契約を破棄するものだ。

 ジラントの署名付き。

「えーと、ジラント」

「ジラントさん」

 しばらく口(?)を聞いてくれなかった。



「いい天気だね~」

 青い空、白い雲。

 街道を下に見ながらのんびりと飛んでいる。

 時々、スイーという感じで滑空した。

 この街道の先に、噂のメイドさんが来たと言う街があるはずだ。


 しばらく飛ぶと、


「お、あれかな」

 遠くの方に中くらいの規模の城塞都市が見えて来た。

 さらに近づく。


「おお、ここだなあ」

 確かに強力なメイドオーラを感じる。

 とりあえず、街の入口近くに降りた。

 街に入る手続きをするためだ。


「飛竜商人とは珍しいなあ」

 受付の門番に、身分証のドッグタグを見せた。

 冒険者ギルドのものである。


「西の方からかい」

 門番が気安く話しかけてくる。


「メイドゥーンからです」


「そうかい、そうかい」

「店を出すときはギルドの許可を取ってくれよ」


「わかりました」


「ちなみに商品はなんだい」


「メイドグッズです(キリッ)」


「ああ、メイドゥーンか」

「ルリちゃんがよろこぶかねえ」

 ドッグタグを確認する。

「はいよ、通っていいよ」


「はい」

 ジラントと一緒に歩いて街に入った。

 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る