第10話 信じる理由

ユリは深呼吸をして、自分の心に湧き上がる迷いを振り払った。目の前のジュノの視線は鋭く、それでいてどこか不安を隠しているようにも見えた。


彼の言葉には試すような響きがあったが、それがユリを余計に奮い立たせた。


「私は、ここに残ります。」


ジュノの目がわずかに見開かれる。


「ここで、この庭園を完成させたいんです。」


ユリの声は力強く、彼女の決意がはっきりと表れていた。その言葉に、ジュノは短く息をつき、視線をそらした。


「どうして、そんなに簡単に決められるんだ?」


「簡単なんかじゃありません。でも、ここでやるべきことがあるって思うから。副会長が、どうしてこの庭園を再生させようとしているのか、まだ全部は分かりません。でも…副会長がこの庭園を大切に思っていることだけは分かります。」


ジュノは黙ったままユリを見つめていた。彼の表情は読めないが、その瞳の奥に少しだけ温かいものが浮かんでいるように見えた。


「私は、あなたを信じたいんです。」


その言葉に、ジュノはわずかに苦笑した。


「信じたい、か。君は本当に不思議な人だ。」


「よく言われます。」


ユリが明るく微笑むと、ジュノも思わず口元を緩めた。その一瞬の柔らかい表情を見て、ユリの胸が少しだけ温かくなった。


翌日、ユリはいつもより早く庭園に足を運んでいた。昨日の決意を胸に、さらに庭園を整えるための計画を立てていたのだ。


「よし、今日はもっと進めるぞ!」


彼女が気合を入れていると、後ろからジュノの声が聞こえた。


「随分と元気そうだな。」


「副会長も早いですね!」


「今日は少し時間があるからな。」


ジュノはユリの隣に立ち、庭園を見渡した。


「次に何をするつもりだ?」


「小道の低木が大体整ったので、今度は庭園の中心にある噴水に手をつけたいんです。」


ユリは噴水を指差しながら説明する。その噴水はかつての華やかさを失い、ひび割れた石材と溜まった泥水が目立っていた。


「庭園の象徴である噴水を再生させれば、全体の雰囲気も変わると思うんです。」


ジュノは少し考え込むように視線を噴水に向けた。


「確かに、それはいい案だ。ただし、簡単な作業ではない。」


「簡単じゃなくてもいいです。私にできることから始めます。」


ユリの前向きな言葉に、ジュノは静かに頷いた。


「なら、一緒にやろう。」


「えっ?」


「俺も噴水の再生には興味がある。それに、放っておくと君は何でも一人でやろうとするからな。」


ジュノの言葉に、ユリは少し照れたように笑った。


「ありがとうございます!でも、副会長が手伝ってくれるなんて意外ですね。」


「俺が役に立たないと思っているのか?」


「そんなことないですけど、偉い人って、こういう作業はあまりしないイメージなので。」


ジュノは軽く肩をすくめた。


「偉い人間も手を汚すべき時がある。それに、これは俺自身の問題だ。」


その言葉の裏に隠された意味を感じながらも、ユリは深く問い詰めることはせずに微笑んだ。


二人はひび割れた石材を確認しながら作業を進めた。古い泥を取り除き、割れた部分を補修するための材料を用意する。


「これ、いつ作られた噴水なんですか?」


ユリが尋ねると、ジュノは少し懐かしそうな表情を見せた。


「母が設計したものだ。彼女は花だけでなく、庭園全体のデザインにもこだわっていた。」


「すごいですね…本当に副会長のお母さんは才能のある方だったんですね。」


「彼女は才能があっただけじゃない。家族にこの庭園を通じて何かを伝えたかったんだ。」


「それが、家族の絆…ですか?」


ジュノは少しだけ頷いた。


「俺にはまだ、その意味がすべて分かったわけじゃない。だが、母がここに込めた思いを壊したくない。それだけは確かだ。」


ユリはその言葉に胸が熱くなるのを感じた。ジュノの想いを形にする手伝いができることが、今の彼女にとっての誇りだった。


「絶対に、噴水を復活させましょう!」


ユリの言葉に、ジュノは短く微笑んだ。


そんな時、庭園の入り口から再び人の気配がした。


「ジュノ、こんなところにいたのね。」


ソラの声が響く。振り返ると、彼女は明るい笑顔を浮かべながら二人に近づいてきた。


「イ・ソラさん…。」


ユリが小さく呟くと、ソラは彼女に軽く手を振った。


「こんにちは、ハン・ユリさん。今日も頑張ってるのね。」


「え、ええ…。」


ソラの視線がジュノに向くと、彼の表情は少し険しくなった。


「何の用だ?」


「ただ様子を見に来ただけよ。それに…あなたとハンさんが一緒にいるところを見ておきたかったの。」


ソラの意味深な言葉に、ユリは戸惑いを隠せない。


「何が言いたい?」


ジュノの低い声に、ソラは微笑みを崩さない。


「言いたいことなんて何もないわ。ただ…ジュノ、あなたがどこまでこの庭園を再生できるのか、興味があるだけ。」


その言葉が挑発に聞こえたのは、ユリだけではなかった。


選択肢


ユリが取る行動は? あなたの選択で物語が動き出します!

1.ソラに直接反論する(ユリがジュノを守る)。

 → ユリが積極的にソラに立ち向かい、ジュノとの信頼を深める展開。

2.黙ってジュノの様子を見る(状況を慎重に見極める)。

 → ユリが冷静に状況を判断し、ソラの出方を伺う展開。

3.作業を続けて無視する(自分のやるべきことを優先)。

 → ユリがソラに振り回されず、ジュノに信念を示す展開。


応援コメントへの選択番号記載依頼


「ユリがソラの挑発にどう対応するのか、次回の展開はあなたの選択次第です!ぜひコメント欄に選択番号を記載してください。選択番号のみの記載も大歓迎です!〆切は明日7時までとなります。また、感想や応援コメントもお待ちしています!」


読者メッセージ


「最後までお読みいただきありがとうございます!ソラの挑発にユリとジュノはどう向き合うのか――物語がさらに動き始める瞬間です。あなたの選択が物語を彩ります!毎日21時更新の『星降る庭園で君を待つ』、次回もぜひお楽しみに!コメントお待ちしています!」

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