第6話 彩りの第一歩
ユリはスコップを手に持ち、花壇の中央にしゃがみこんだ。彼女の前には新しい花々が整然と並べられている。それは、彼女が選んだ色とりどりの花々だった。赤、黄色、ピンク、紫――どれも鮮やかで、それぞれが庭園に新しい命を吹き込む準備をしているように見えた。
「これで、本当に良かったんでしょうか…?」
ユリは花を一つ手に取り、少し不安げに呟いた。その声に、隣で腕を組んで見守っていたジュノが反応する。
「君が選んだんだ。俺が何か言うべきことはない。」
「でも、責任重大ですよね…。副会長は、これを庭園の最初の一歩だって言ったし。」
ジュノは短く息を吐き、彼女に目を向けた。
「君が選んだ色が正解だ。それでいい。」
「そんな簡単に…」
ユリが首をかしげると、ジュノは少し顔を緩めた。
「選択には迷いがつきものだ。だが、迷いながらも進むのが本物の決断だ。」
「…副会長らしい意見ですね。」
「皮肉か?」
「褒めてるんです。」
二人はふっと笑い合ったが、ユリはすぐに真剣な表情に戻る。そして、スコップを土に差し込み、慎重に新しい花を植えるためのスペースを作り始めた。
「この花壇は、もともとどんな花が植えられていたんでしょう?」
ユリはふと疑問に思い、手を止めてジュノに尋ねた。
「母が選んだものだ。赤いバラが中心だったと思う。」
「赤いバラ…素敵ですね。でも、ちょっと寂しいかも。」
「寂しい?」
ジュノはユリの言葉に眉をひそめる。
「ええ、だって赤一色だと他の色がないから、何か足りない感じがします。」
「母はそれを『純粋さ』と呼んだ。」
ジュノの声には少し懐かしさが混じっていた。それを感じたユリは、一瞬言葉を飲み込んだが、すぐに明るい声で答えた。
「純粋さも大事ですけど、たまにはにぎやかさも必要ですよ。ほら、人間だってそうでしょ?真面目なだけだと疲れちゃいますし。」
「君は、ずいぶんと楽観的だな。」
「そうじゃなきゃ、花なんて扱えませんよ。」
ユリが微笑むと、ジュノはほんのわずかだけ口元を緩めた。
一つ、また一つとユリが花を植えるたびに、枯れていた花壇が少しずつ明るくなっていく。
「どうです?いい感じになってきたと思いません?」
ユリが顔を上げてジュノに尋ねると、彼は少し考え込むような表情で花壇を見つめた。
「悪くない。」
「もう少し素直に褒めてくれてもいいのに。」
「俺は素直だ。」
「嘘つき。」
ユリがクスクスと笑うと、ジュノは肩をすくめる。
「だが、確かに庭園に色が戻りつつある。それだけは認めよう。」
「やっと褒められた気がします!」
ユリは嬉しそうに笑った。彼女の笑顔が、花壇の花々よりも鮮やかに見える瞬間だった。
ユリが次の花を植えようとしたとき、ふとジュノが口を開いた。
「俺は、この庭園が嫌いだった。」
「え?」
思いがけない言葉にユリが手を止める。
「嫌いというか、近づきたくなかった。」
ジュノは花壇ではなく遠くの景色を見つめていた。
「ここは、母と過ごした場所だった。俺にとっての楽園だった。だが、それが消えたとき、この庭園も俺にとってただの傷跡になった。」
「それなのに、再生させようとしているんですね。」
「そうだ。」
「どうして?」
ジュノはユリの問いに少し間を置いてから答えた。
「過去を消すためじゃない。乗り越えるためだ。」
ユリはその言葉に息を飲んだ。ジュノの声には揺るぎない決意が込められていた。
「だから、君を選んだんだ。この庭園を再生させるためには、君のような視点が必要だと思った。」
「私の視点…ですか?」
「そうだ。君は俺が見えないものを見ている。だから、この花壇が明るくなっていくのを見て、俺も少しだけ希望を感じている。」
ユリは驚きと嬉しさが入り混じった表情を浮かべた。そして、自分の手に握られたスコップをもう一度見つめた。
「…この庭園、絶対に再生させてみせます。」
彼女の声は静かだったが、そこには揺るぎない決意が込められていた。
選択肢
ユリが次に取り組むのは? あなたの選択で庭園再生の進み方が変わります!
1.花壇の周りに小道を整備する。
→ 庭園全体のアクセントをつけ、花壇を引き立てる展開。
2.次の花壇に手をつける。
→ 色彩を広げ、庭園の再生を加速させる展開。
3.噴水の清掃を始める。
→ 庭園の象徴である噴水の修復に取りかかる展開。
応援コメントへの選択番号記載依頼
「ユリが次にどの部分に取り組むのか、次回の展開はあなたの選択次第です!ぜひコメント欄に選択番号を記載してください。選択番号のみの記載も大歓迎です!〆切は明日7時までとなります。また、感想や応援コメントもお待ちしています!」
読者メッセージ
「最後までお読みいただきありがとうございます!ユリとジュノが少しずつ歩み始めた庭園再生の道――次に進む一歩を決めるのはあなたです!毎日21時更新の『星降る庭園で君を待つ』、次回もどうぞお楽しみに!コメントお待ちしています!」
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