第20話
色々なダンジョンを見てきたが入口は大差ない・・・はずだった
淡く光る壁のお陰で視界は良好、地下に繋がっているせいか少しひんやりするのが特徴でどこも同じ。けど・・・
「なんじゃこりゃ・・・『左ゲート右1階』!?誰か掘った・・・訳じゃないよな?」
ダンジョンに看板が取り付けられている事は多々ある・・・けど実際に文字が刻まれていることなんて今までなかった
「ゲートがあるって事は10階以上のダンジョンって事?調査の時は3階までって・・・」
「そんなに成長するもんかね?入れないだろうけど見に行くか」
そう言うとラウルは分かれ道を左に向かう
ゲートは基本その階にあるゲートを使った者しか使えない。だから初めて来るダンジョンはゲートは使えず1階から攻略する他ない
「うわ・・・マジかよ・・・」
驚いた・・・青白く光るゲートが5つ・・・そのゲートの手前に分かりやすく番号が振ってある
2から6・・・これは恐らくそのゲートの先を表しているのだろうけど・・・各階にゲート・・・なんて便利なの・・・
「もし本当に各階にゲートがあるのなら現在のこのダンジョンは6階までって事になるな。1ヶ月くらいで3階から6階ってのもびっくりするけど・・・このゲートはありがた過ぎだろ!?」
ラウルが驚くのも無理はない
ダンジョンは基本10階毎にゲートがあるのが普通・・・なのに各階にあるなんて・・・もしマーベリルダンジョンも同じように各階にゲートがあればガゾス達も死なずに・・・
「サラ?どうした?」
「・・・いや・・・これならわざわざ食料やマナポーションを持ち込まずに済むな、と考えていただけだ」
「そっか・・・そうだよな・・・途中で帰ってもまたその階から挑戦出来るなら粘る必要はない・・・その日の内なら何度でも入れるし・・・マジで最高のダンジョンじゃねえか!」
ギルドで発行される入場許可証は当日限り有効・・・逆を言えば当日なら何度でも出入り出来る。一回出て日が変わる前に入場してもいい為にお金のない冒険者は外で休憩して再度日が変わる前に突入する事もしばしば・・・だがその際は初めから攻略していかないといけなくなる
だがこのダンジョンでは一回出てもすぐに元いた階に飛べるとなると他のダンジョンに比べると便利さは雲泥の差だ
「ここを拠点にしてもいいかもな・・・なあ?サラ」
「・・・私は別に・・・」
確かに便利は便利だが各階にゲートがあると言うならまだ6階までしかないダンジョンという事になる。それならマーベリルダンジョンの21階に飛んで稼いだ方がより稼げる。それにこのパーティーもずっといる訳ではないし・・・
「・・・まっ、考えといてくれよ。俺達はいつでも歓迎だぜ?」
私は願い下げだ
今回このパーティーに加入したのも新しく出来たダンジョンに行くという点のみ・・・そうでなければ加入などしなかっただろう
ラウル達はダメ元でゲートに入ってみるがやはり作動しない。諦めて分かれ道まで戻り今度は右に進むとようやく1階の入口に到着する
「サラ・・・頼んだ」
「ええ・・・宝は?」
「低階層は大したものないだろ・・・最短のルートで」
「了解・・・少し待ってて」
風魔法を使いダンジョンを隅々まで調べる。今回は最短ルートと言うことなので2階への階段を探しどこをどう通れば最短でそこまで辿り着けるか探った
「・・・そこまで複雑ではないけどなかなか広い・・・魔物はスライムとブラッドドッグにバウンドキャットのみ・・・罠はない」
「さっすがサラ!これで強いってんだから本当最強だよな」
「・・・そうでもないわ。レンジャーの中には直接ダンジョンを見渡す事が出来る人もいるし強さも私を超える人もいる・・・まだまだよ」
私の場合は風を送り感じるだけ・・・なので正確ではない時もある。道だと思ったら床がなかったり、魔物の形が似ていて間違った事もある。スカウトとしてもアタッカーとしてもまだまだだ
「そんな事ないって・・・んで、とりあえず先頭任せても?マナポーションはたんまり持って来たからそのまま魔物も倒してくれると助かる」
「・・・ええ。なら・・・」
どうやらラウル達は私に全て任せっきりで楽をするつもりらしい。まあラウル達に任せて手間取るくらいなら私がやった方が早いだろうしそれでも構わないが・・・
私を先頭にタンカーの盾使いケット、近接アタッカーの剣士ラウル、ヒーラーの僧侶アタカに後衛アタッカーの魔法使いイースが並んで歩く
出て来る魔物は下級も下級のスライム達
マーベリルダンジョンで手に入れた鉄扇・・・『風牙扇』を使うまでもなかったが時間をかけたくなかったので使用する事にした
「・・・すげぇ・・・歩いてるだけで魔物が刻まれていく・・・」
「これが・・・『風鳴り』・・・」
共にここまで来た仲だが実戦は初めて・・・私の二つ名にもなった『風鳴り』を見て驚きの声をあげていた
「・・・なあサラ・・・どうやって魔法を出してんだ?詠唱とか要らないのか?」
「・・・企業秘密・・・」
タネを明かせばトラブルの元になる。『風牙扇』にマナを流すだけで強力な風魔法を生み出せると知ったら私を殺してでも欲しいと言う者は多いだろう。もしこれからずっとパーティーを組むとしたら別だが、一時のパーティーメンバーに教えるつもりなどサラサラなかった
「なるほど・・・まあそりゃあそうだよな。で?マナポーションはいるか?」
「まだ大丈夫。6階程度なら必要ないかも」
「ますます頼もしいねえ・・・もしかしてこのダンジョンが10階くらいあっても余裕?」
「いや・・・6階でギリギリくらい。魔物の数にもよるけど必要になったら声をかける」
「そうしてくれ・・・じゃないとマジで俺達はただのお荷物になっちまうからな」
「私が窮地に陥ったら助けてくれれば良いさ」
「そんな事あるのかねぇ?『風鳴り』に」
油断は禁物・・・だが、ボス部屋に挑んだり宝箱を無理矢理開けたりしなければそんな事は起こらないだろう
それでも慎重に進んで行く
ダンジョンでは何が起こるか分からないからだ
2階に到達して再び風魔法で探り最短の道を行く
途中現れた魔物も風が鳴ると無慈悲に切り刻まれていく
3階4階5階と順調に進み、残すは最深部と思われる6階のみとなった
エモーンズダンジョンの印象としては・・・普通
広さはそこそこあるけど迷路になっている訳でもなく魔物の数も普通・・・可もなく不可もなくという印象だ
途中いくつかの宝箱と明らかに場違いな魔物もいたがこちらから仕掛けなければ襲って来ることはなかったので問題はなかった
「こんな簡単に6階まで下りられるのに他の冒険者は何してんだか」
「不遇職と言われているスカウトになる者が少ないのだろう・・・私が言うのもなんだがな」
「そうだな・・・行き慣れたダンジョンなんかだとスカウトは荷物持ちくらいしか役立たねえし・・・まっ、サラくらい強けりゃ別だけどな」
「・・・私も別に強い訳ではない・・・それで・・・6階には下りるのか?」
「当然!・・・マナはどんな感じだ?」
「この分だと6階は足りそうだ・・・何とかな」
「そいつは良かった。マナポーションも安かねえから助かるぜ。と言っても出し惜しみするつもりはないから気軽に言ってくれ」
「ああ」
6階へと下りる階段の前で言葉を交わすといざ最深部であると思われる6階へ・・・下りた先には他の階と同じようにゲートがあり、いつでも戻れるという安心感がうまれる
いつものように6階を探ると違和感が・・・
目を閉じ顔を顰めているとラウルが首を傾げる
「どうした?何かあったのか?」
「・・・あったと言うか・・・ここが6階か少し疑わしくてな」
「?・・・俺達5階から下がって来たよな?」
「ああ・・・けど魔物が1階のそれと同じだ」
「どういう意味だ?」
「・・・下りる階段はなく最深部なのは確か・・・だが魔物の種類が1階と同じなんだ。スライムにブラッドドッグ・・・そしてバウンドキャット・・・」
「はあ?なんだそれ・・・1階と6階が同じ魔物ってそんなダンジョンありかよ」
私も聞いた事ない
ダンジョンは下に行くほど魔物は強くなる。そして魔物は強いほど価値のある魔核を出す・・・だから冒険者は下の階を目指すのに・・・
困惑する中、確かめてみようと少し進むと目の前に1階で見たスライムが・・・
「マジでスライムだ・・・んだよ!」
ラウルは怒りに任せて剣を抜き斬り掛かる
ラウルが怒るのも無理はない・・・せっかく苦労して最深部まで来たのにこれじゃあ骨折り損だ
ボグッ
スライムをラウルに任せて私は再度この階を探っていると鈍い音がしたので方向に顔を向けると吹き飛ぶラウルの背中が目に映る
「え?」
「グッ・・・クソッ・・・タレ・・・」
ケットに受け止められたラウルはお腹を押え呻き声をあげていた。Dランクの剣士がスライムに・・・殴られた?・・・いや、油断していたら殴られはするかもしれないけど・・・人間を飛ばすほどの威力をスライムが??
「ラウル!」
駆け寄りキズの具合を見ると致命傷ではなさそうだ。僧侶のアタカがすぐに治療を受け開始したので問題はないだろう
「クソッ・・・気を付けろ・・・普通のスライムじゃねえぞ・・・」
「ああ・・・そうみたいだな」
短剣を逆手に持って構える
『風牙扇』を使えば恐らく倒せるだろう・・・だが、それだとラウルの言う『普通のスライム』ではないかどうか判断出来ない・・・そう判断した私は戦闘態勢に入っているスライムに近付いてみた
「!」
ラウルの言う通りだ
スライムの体から突如として伸びる触手。その触手のスピードが普通のスライムのそれではない
鋭く伸びてくる触手を飛び退いて躱すと着地した足で地面を蹴り距離を詰める
2本3本と伸びてくる触手を躱しながら横を通り過ぎざまに短剣で切り付けた
手応えはあった・・・が、怯むことなく再び触手を伸ばしてくる
「サラ!」
風が鳴る
ラウルの叫ぶ声をかき消す風の
「下級下位のスライムじゃない・・・中級とまではいかないまでも下級上位くらいは・・・」
倒せないことはない・・・けど以前の私だったら倒す事は出来なかっただろう・・・スライムなのに
「ラウル・・・ここは撤退して改めて・・・」
「・・・いや、予定通りだ」
「予定?この先同じようなスライムが出て来るかも知れないんだぞ?このままでは・・・」
「サラ・・・見ろよ」
ケットに支えられながらラウルが指を指した先はスライムが残した魔核だった。スライムの物とは思えないほど大きい魔核・・・これは・・・
「中級並のデカさだ・・・6階でスライムなんてと思ったけど・・・悪かねえ・・・続行だ」
最深部である6階でスライムが出て来て面を食らったが・・・魔核の価値は大きさや質によって変わる・・・この魔核なら高く売れるだろう・・・5階の魔物よりも高く・・・だが・・・
「ここにいる全部の魔物が同じような魔核を出すとは限らないぞ?ここは一旦撤退して準備してから戻って来た方が安全ではないか?」
何とも言えないが、もしかしたら奥にいるスライムや他の魔物が今のスライムより強い可能性もある。ここは万全を期した方がいいと思ったのだがラウルは首を横に振る
「確かにサラの言う通りだが同じ大きさの魔核を出す可能性の方が高くねえか?まだマナに余裕があるなら何体か倒してからでも撤退は遅くねえと思うがな」
「・・・分かった・・・だけどゲートもあるのだから無理はしないぞ?」
「・・・そうだな・・・無理は良くねえ・・・」
こうして私達は戻ることなく先に進んだ
思えばここで戻っていればあんな事には・・・いや、いずれなっていたのだろうからここで戻っても結局は同じ事か・・・
先に進む私達を迎えたのはスライム、ブラッドドッグ、バウンドキャット・・・まるで答え合わせのように次々に襲いかかって来た
『風牙扇』で倒して出て来る魔核を見るとやはり大きい・・・他で聞いた事もないがやはり普通の魔物ではないようだ
「・・・もういいだろう?マナも尽きかけている・・・このダンジョンの6階は1階に出て来る魔物の上位版・・・強さも魔核も、な」
「ああ・・・最初はガッカリしたがこの情報は値打ちもんだぜ・・・下手すりゃギルドから報奨金すら出るかも知れねえ」
「そうかもな・・・で?戻るって事でいいのか?」
「もちろんだ。サラのお陰で予定通りに進めたよ。ほら、マナポーションだ」
そう言うとラウルはマナポーションを投げて寄越す
高価な物なのに落としたらどうするんだ
「もう戻るだけだろ?」
「ギリギリなんだろ?戻る途中で湧くかも知れねえし安全に越したことはねえ・・・無理させちまったし俺達だけじゃここの魔物は危ねえかも知れねえから・・・まっ、保険と思って飲んでくれ」
「そう・・・だな」
何かがおかしい
安全を確保するなら入口近くの時に引き返していたはずだ・・・確かに私も他の魔物が最初に出会ったスライムのように強いのか気にはなったが・・・
感じた違和感に頭を巡らせながら渡されたマナポーションの瓶の蓋を取ると口に運ぶ
いつも思うがもう少し味付けを・・・ん??
「・・・ラウル・・・これはマナポーションか?いつもと味が・・・」
味としては不味い部類に入るマナポーション・・・だが今飲んだものはいつもマナポーションとはまた違った味がした
「あれ?もしかして間違えたか?あー、やっちまった・・・それ・・・毒だわ」
「なっ!?」
棒読みも棒読み・・・しかも下卑た笑いを浮かべながらの棒読みだ
その瞬間、ラウルの言った事は冗談ではないと理解する・・・そして間違えたのではなくわざと・・・
「悪ぃな・・・それ麻痺毒だわ・・・しかも遅効性の」
嵌められた?でもなぜ?
ラウル達を睨みつけると彼らは全員笑みを浮かべていた
「そう怖い顔するなよ。全ては予定通り・・・なんだからさ」
彼は話す
今までの全てが『予定通り』だった事を
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