第11話 恋に不器用な女と片想い①
その日の夜、集まって明日の計画を立てる予定だったが、「ごめん、
あれだけ飲んだらそりゃ眠くもなるだろう。
美園のかわいい声が聞こえただけでも良しとしよう。
「じゃあ僕らも寝ますか」
(美園ちゃんと旅行なんて夢みたいだな)
旅行での可愛らしい姿の美園が浮かんでは消えていく。
(いつか2人で…)
だんだん瞼が重くなって、
翌朝はスマホが何度も震えて、
スマホを見ると、まだ5時だ。
表示には叶夢と出ている。
何度も何度もスタンプを押してきているようだ。
(なんだよ…)
断る権利はないようだ。
叶夢がロビーをイライラしたように歩いている。
(まさかの不機嫌か)
「なるべく早く来たよ」
「ふん、まぁいいわ。そんなことより教えてほしいのよ」
ドカッとロビーのソファーに座った。
そわそわしていて、いつもと様子が違う。
「何を教えてほしいの?」
「私…おかしいのよ。なんか気持ちが安定しないっていうか」
「はぁ?ホルモンのやつじゃないの?」
「バッ、バカ違うわよ!」
「じゃあどういう時に気持ちが落ち着かないの?」
「なんか神原に、綺麗ですね、叶夢さんって言われたでしょ?なんかあれ以来、調子悪いのよ、何度も何度もその時のことを思い出してしまって…」
「あのさ…それでなんでこんな気持ちになったんだろうとか聞くつもり?」
図星の顔をしている。
「早朝から勘弁してくれよ…」
「何よ!次男にはわかるっていうの!?」
「高校生以上は大体わかるんじゃない?」
「どういうこと?」
「姉ちゃんは今までモテてきて、そういう気持ちを向けられることはあっても自分がそういう気持ちなったことなかったんだね」
日頃の仕返しだ。
「ようこそ、片想いの世界へ」
その後、朝食を食べるために叶夢は男子部屋に来たが、ぎこちない動きで大人しい。
(本当に恋愛経験なしなのか…もう28なのになぁ)
「おはようございます」
叶夢が神原に挨拶されて、「おはよ」と小さく呟いて、静かに座った。
次男は人生で初めて叶夢の大人しい姿をみた。
ただ、2人をその気にさえすれば大丈夫と思っていたが、叶夢のこの不器用すぎる様子を見るとそういうわけにはいかなさそうだ。
次男はため息をついた。
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