第8話 別れと拾う神
そして
「じゃあ兄ちゃんは姉ちゃんをショッピングモールへ誘って」
「えぇ!やだよ。絶対行かないって言われるし、暴れられたら困るよ」
「大丈夫」
そこのカフェでお茶をして、相談にのってもらう予定になっている。
どうやら上手く誘えたらしい。
(スペシャルショートケーキのクーポンが効いたな)
叶夢はケーキに目がない。
特にショートケーキが大好きで、新しいケーキ屋さんやカフェがオープンする度に食べに行くくらいだ。
今回はショッピングモール2階のカフェのスペシャルショートケーキのクーポンを渡しておいたのだ。
叶夢と歩夢を見送ると、その後すぐ崎矢がやってきた。
「こんにちは」
「どうも。この前はありがとうね」
そう言いながら、カフェを目指す。
カフェに近づくと、少し並んでいるようだ。
その中に叶夢と歩夢もいる。
「あ~!姉ちゃん!偶然だなあ~」
ここまでは作戦通りだ。
「工藤さん、こんにちは」
「崎矢さん、この間はありがとうございました」
「いえいえ、あれくらいいつでも頼んでください」
並びながら二人で話して盛り上がっている。
歩夢と目を合わせ「いい感じ」と頷きあった。
「あ、俺、お腹が痛くなってきました」
「今日せっかく来ていただいたんですけど、帰ってもいいですか?」
「
「いいですよ、体調不良は仕方ない事ですから。また今度ということで」
「あ、俺も今日は予定があるんだった」
歩夢がイケメンモードでごめんと叶夢に手を合わせた。
叶夢は「あんた・・・!」とブチギレそうになるのを崎矢の前なので何とか収めて、「次からは気を付けるのよ」と言った。
「今晩のご飯予約しちゃったんで、今からだとキャンセル料かかりますし、2人で行ってきてください。姉を助けてくださったみたいですし、ご飯代は出すので」
「そんな悪いよ、次男君におごってもらうわけにはいかないよ。どうですか?工藤さん、僕が奢るので、一緒に行きませんか?」
崎矢に真っすぐ見つめられて、頬を少し赤らめながら、「喜んで」といつもより小さな声で叶夢は返事をした。
◇◆◇
「ねぇ、つーちゃん寒いんだけど」
「しょうがないでしょ、あの店人気で今から予約なんて無理だもの」
「じゃあ帰ろうよ」
「気にならないの?どうなるか」
「気になるけどぉ」
しばらく見守っていたが、レストランの中の二人はワインで乾杯をし、楽しそうに話しながら食事を楽しんでいる。
「いい雰囲気だね」
「うん、作戦成功かな」
「そうだね。これで雰囲気わかったし、もう風邪ひきそうだから、つーちゃん帰ろう」
歩夢に言われて、引きずられるようにして家に帰っていった。
その日は22時頃に叶夢は帰ってきて、今日のことを怒られるかと思ったら、何も言わず家のカギを指にひっかけてくるくる回しながら上機嫌で自室に入っていった。
「上手くいったぽいよね。つーちゃんの作戦成功だね」
「思った通りだよ」
どや顔で
そしてそれは現実になった。
「え・・・嘘でしょ?」
崎矢からメッセージが届き開いてみると、“しばらく海外で取材に出ることになりました。数か月か半年かまだわかりませんが、また帰る時は連絡します”と書いてある。
「海外って・・・海外だよね・・・」
そして叶夢もその日にそのことが原因なのか、珍しく外で飲んで酔っ払って帰ってきた。
「
その日の姉はゴリラじゃなく、失恋した女の子に見えて、なんだか断ることが出来ず、2人して朝まで付き合うことになった。
◇◆◇
捨てる神あれば拾う神あり。
そんな言葉があるが、そういうこともあるらしい。
「ねぇ、
神原に突然そう言われて、叶夢のいない日に来てもらったのだが、
そのうちに、叶夢が帰ってきて、神原がいることに一瞬眉間にしわが寄ったが、すぐに「ぜひ晩御飯食べて行って」と外面モードになった。
4人で晩御飯を食べている時に、ふいにお笑い番組をつけると、「ハハハ」「ハハハ、ウケる」と笑うポイントが二人とも同じだった。
そして食事の中の会話で、
「嘘でしょ?」
「マジですか!?」
神原の誕生日と血液型が、叶夢と同じであることがわかった。
Q1 運命だと思った理由は?
・旅行先で偶然出会った。
・誕生日、血液型が同じだった。
・好きな食べ物が同じで、笑いのツボも同じだった。
(実は運命の相手は、崎矢さんじゃなくて神原さん・・・?)
まだ姉を結婚させるチャンスはあるようだ。
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