令和テレフォンクラブ
「声だけでつながる」という行為は、ふとテレクラの話を思い出させる。
燃え殻の『すべて忘れてしまうから』にクリスマスにテレクラにいった話がある。
声ともが偶然の塊なら、テレクラはもっと切実な場所だったのかもしれない。孤独や退屈、満たされない何かを埋めるために、誰かの声を求めていたのだろう。
でも、テレクラも声ともも、突き詰めれば同じことをしている。見えない相手と声を通じてつながる。ただそれだけの行為。だけど、その「ただそれだけ」が、人間にはどうしようもなく必要なんだと思う。
昔、ボクは大学にいきたかった。そのために勉強したし、そのために高校生活を犠牲にした。
けれど、コロナ禍になって気付いたのは、「人間、ひとと話さなきゃ死ぬ」とうことだ。
うさぎみたいな話だけど、わりと当時のボクは本気で死にかけていた。
3年かけて受かった大学に、半年も遅れて足を踏みいれると、そこには青春なんてかけらもない。あこがれのキャンパスライフなんてものは存在せず、学部では出会い厨事件で異性との交流は憚られた。
一丁前に大学デビューに憧れていたボクの出鼻はくじかれ、閑散とした教室を見つめる日々がつづく。
他のひとはすでに気持ちを切り替えて、空いた時間を遊びや趣味に使っていたけれど、ボクはそんな器用には生きられなくて。
仲間と夜まで語り合ったり、講義が終わったらサークル活動に打ち込んだりする日々なんて訪れず、画面越しに教授の話を聞き、課題を提出するだけの毎日。
誰とも深く関わらないまま日々だけが淡々と過ぎていった。
声ともは、そんな僕にとって案外、救いの場だったのかもしれない。
〈つづく〉
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