監視カメラを見続けるバイト・1
引きこもりに対する世間の風当たりは強い。
特に子供が引きこもりになった際、親は周囲の目を気にして羞恥を感じ、どうにか外に出そうとする。子供自身が外に出ることを望んでなどいないにも関わらず。子供のためなどと宣いながらその実、自分達の体面のために子供を家から引き摺り出そうとしているだけだ。身勝手極まりない。
俺こと
順風満帆と言えずとも平凡に過ぎていた人生に影が差したのは、小学六年の頃。クラス内のいじめのターゲットにされた。きっかけが何であったのか、なんて定かじゃない。少なくとも俺自身はいじめられるような理由に思い当たりはない。だが集団生活において、共通の敵を作り上げた方が秩序を保ちやすい。その共通の敵に選ばれたのが俺だった。それだけのことだったんだろう。
勿論、息子が引きこもりになって親はいい顔をしなかった。中学はちゃんと行けと無理矢理進学させられたが、その頃にはすっかりサボり癖と逃げ癖がついていた。中学校も結局数えるほどしか通わず、高校受験もせずに卒業。最終学歴が中卒となった瞬間だった。
二十歳を過ぎた頃。せめて手に職をつけろと言われて父親のコネで就職させられ、さほど大きくない会社の事務を訳もわからぬままにやらされたが、一ヶ月も経たずに辞めてしまった。元々やる気がなく、覚える気がない業務はミスが多く叱責ばかりされた。それに上司や同僚、先輩といった人間関係は煩雑で、引きこもり生活が長過ぎた俺にとって苦痛でしかなかった。すぐに限界を迎えた俺は会社に行かなくなり、そのまま引きこもり生活に戻ってしまった。
けれど、俺をそこらの引きこもりと一緒にされては困る。外出しないだけできちんと仕事はしているのだ。今の世の中、インターネット環境さえ整っていれば金を稼ぐ手段なんて幾らでもある。内職に限らずウェブライターだとか、在宅でもできる仕事をネットで見繕えば、家の外に出ずとも充分に暮らしていけるのだ。必要な買い物だって通販サイトを使えば自宅に届けてもらえるし、食事も配達サービスを使えばいい。インターネットは今の俺になくてはならない大切なものとなっていた。
そんな俺が最近見つけたのは、警備員のバイトだった。ビルに取りつけられた監視カメラの映像を自宅にいながらリモートで監視し、異常があればビルに常在する警備員に知らせる。シンプルかつ解りやすくて大変いいと応募した。
ネットスラングでは引きこもりのことを自宅警備員、などと揶揄したりもする。自宅にいながら他所の警備をするこの仕事は、自宅警備員の俺には誂え向きの仕事だと思った。むしろ、家以外の警備をするのだから、普通の自宅警備員よりもランクは間違いなく上だろう。
勤務開始は今日の深夜零時から。夜通しモニターを見続けないといけないため、なかなか根気のいる仕事だ。すっかり昼夜が逆転している俺は夜間の仕事に備えてぐっすりと昼寝をし、英気を養った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます