監視カメラを見続けるバイト・4
「ちょっとヤマさーん、急にどうしたんですか? 早く行きましょうよ」
先を行っていた同僚の
谷川も裏バイト業に長く携わっており、二人は知己の間柄だった。谷川は極度の怖がりだが、その分危機察知能力に長けており、気弱な性格と優男然とした見た目に反してこれまで数々の危険な仕事を潜り抜けてきた猛者である。
そんな山田と谷川はオフィスビルの夜間警備員の裏バイトで偶然顔を合わせた。就労に際して事前に提示された注意事項は『絶対に振り向かないこと』。そのため足を止めた山田も、山田に声をかけた谷川も互いに顔を合わせず、真っ直ぐ前を見据えたままだ。
「いや、いなくなったなと思って。聖くん気づいてた? 誰か後ろにいたの」
「そりゃもう! めっちゃ怖かったですよー! 電気も消えるし、ずーっと後ろにくっついてきて何かぶつぶつ言ってて、チビりそうでしたもん……って、あれ? そういやもう聞こえませんね」
「うん、だから何かあったのかなって思って」
山田も谷川も、背後に迫る何者かの気配に気づいていながら気づかないフリをしていた。裏バイト歴が長い彼らは知っていた。恐怖や好奇心に負けて禁忌を破れば、ロクな目に遭わないと。
「助かったー……もしかして、別の奴んとこ行ったのかな」
谷川が安堵と共に零した呟きに、山田は首を傾げた。
「別の奴? 警備員は僕達だけだよね。会社の人達は皆帰したし、他に誰かいた?」
「それなんですけど……ヤマさんはこの仕事受ける前、これが載ってる求人情報見ました?」
「いや、私は独自の伝手があるから」
「やっぱヤマさんクラスになると向こうから声かけてくるんですねえ……。実は実地の他にリモートの募集もあったんですよ、この仕事。ヤマさんと俺はこうして実際にこのビルを見て回ってるじゃないですか。そうじゃなくて、監視カメラの映像を家から監視するって内容でした。俺は一人が嫌だったし、現場に足を運びたかったからこっちを受けたんですけど」
「成程ね。じゃあ、リモートでも注意事項は同じって訳だ」
「たぶん。きっと、破った奴がいたんでしょう。どんな酷い目に遭ってんのか、考えるだけでも恐ろしいっす」
谷川は両腕を抱いて大袈裟に身震いしてみせた。
その後、背後に何者かが現れることはなかった。二人は朝まで何事もなく勤め上げ、十万円の日給を無事にゲットした。
また、同日午後、一軒の民家で家族三人の遺体が発見されたと報じられた。遺体の身元は家主の新戸
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