第10話「魂の共鳴」



大時計が、予選開始から2時間の経過を告げる。


「結晶、二つ目だな」

ユウトが、新たに手に入れた結晶を確認する。

商店街の裏路地で、弱いチームから奪取したものだ。


「あと一つ」

空が呟く。

「でも、みんな疲れてきてるな」


連続する戦いで、三人とも息が上がっている。

特にアリアは、先ほどの力の解放で消耗が激しい。


「休憩するか」

ユウトが提案する。


その時。


「見つけたぞ!銀の鳥を使うチームだ!」


何人もの選手たちが、路地に殺到する。

アリアの新しい力を狙っているのは明らかだ。


「くそっ、目立ちすぎた!」

空が悔しげに唸る。


「囲まれたか」

ユウトが周囲を見渡す。

「五つのチーム、計15人」


「私のせいで……」

アリアが申し訳なさそうに呟く。


「違う」

空がアリアの肩に手を置く。

「お前の力は、俺たちの誇りだ」


「その通り」

ユウトも頷く。

「さあ、僕たちの物語を見せてやろう」


三人が背中合わせで陣形を組む。

取り囲む敵チームたちが、一斉にカードを掲げる。


炎の獣、氷の戦士、雷を纏う忍者、岩の巨人、風の精霊。

様々な物語が具現化する。


「来るぞ!」


激しい戦いが始まった。

空の戦士が剣を振るい、ユウトの詩人が機械仕掛けの防壁を展開する。


しかし、人数差は如何ともし難い。

徐々に押し込まれていく。


「このままじゃ……!」


その時、アリアの体が光り始めた。


「この感じ……!」

空が驚きの声を上げる。


銀の鳥が再び現れる。

だが今回は、その姿がより鮮明に。


「私にも、見える」

アリアの瞳が確かな光を宿す。

「この物語の、一部が」


記憶の断片が、映像となって広がる。


白い城の広間。

祝福を受ける銀髪の少女。

そして――


「力を、貸して!」


アリアの叫びと共に、銀の鳥が大きく羽ばたく。

その瞬間、空の戦士とユウトの詩人が呼応するように輝き始めた。


「これが、本当の共鳴!」


三つの物語が交わり、新たな力となる。

戦士の剣が聖なる光を帯び、詩人の歯車が銀の輝きを放つ。


「なんて力だ……!」

敵チームたちが、たじろぐ。


「皆の物語が、一つになる」

アリアの声が響く。

「これが、私たちの力!」


眩い光が、路地を包み込んだ。


戦いは、呆気なく終わった。

地面には、敵チームたちの結晶が転がっている。


「これで四つ目か」

ユウトが結晶を拾い上げる。

「予選突破、確実だな」


「アリア、大丈夫か?」

空が心配そうに訊ねる。


「うん」

アリアは小さく頷く。

「少しだけ、思い出せた。私が、あの城で」


その言葉の続きを、何かが遮った。

黒い影が、路地の入り口に立っている。


「クラウド!」


「記憶が戻り始めたようだな」

クラウドの声が、冷たく響く。

「だが、それは諸刃の剣。覚えておけ」


そう告げると、彼は闇に溶けるように消えていった。


「あいつは、いったい……」


空の言葉が、風に消される。

予選の終盤が、新たな謎を残して始まろうとしていた。

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